魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ

文字の大きさ
9 / 87

9 ノア視点

しおりを挟む
 伯爵家を継ぐために結ばれた婚約だった。しかし、俺はソフィア嬢を見て雷に打たれたような衝撃を感じた。一目で恋に落ちたんだ。

 アルマ様に手を引かれたソフィアは恥ずかしそうにしながらも、大きな瞳でこちらを見る姿に俺は囚われた。アルマ様は傾国の美女と謳われる程の綺麗な人だった。

 ソフィア嬢もとても可愛くて将来美人となるだろうことは幼い俺でもわかった。

 ソフィア嬢と会う事が出来る週一度のお茶会は毎回楽しくて、もっと会いたいと父にせがんだほどだ。


 アルマ様が亡くなると、すぐにミリアはハンナと共に伯爵家にやってきた。ミリアは人懐っこくて可愛いが、教養は全くなかった。勉強している様子も見られない。

 伯爵家の養女となってからすぐに母親に連れられて舞踏会へ参加したそうだが、親娘共に評判は悪く、母親の方はすっかり公の場に出ることは無くなった。

 しかし、ミリアは全く気にしていなかった。むしろ着飾った貴族たちを見て自分も仲間に加わったのだと大喜びだった。煌びやかな世界に心を奪われていて厳しい世界だということに全く気づいていない。

 ミリアは舞踏会の余波のせいか学院へ入学してから令嬢たちとは行動を共にせず、子息達と一緒にいる姿を見かけるようになった。

 令嬢や令息の婚約者達はミリアに直接注意をしていたようだが、一向に気にしないミリアに嫌悪し、なんとかしてもらおうと令嬢達はソフィアに注意するように詰め寄る姿もあった。

 ソフィアは度々ミリアを注意していた。普通は注意されれば、注意を聞き従うか、反発してソフィアに近づく事はしないと思うのだが、ミリアはソフィアに近づくばかりだった。

 芯が強いのか何も考えていないだけなのか。

 そして俺とソフィアとのお茶会にも必ず参加してくる。注意をしても気にも止めていない。潤んだ目で俺を見る姿は小犬のようだ。

 ソフィアとのお茶会に無理矢理参加するようになったミリアは、何かと俺に話しかけてくる。ソフィアの義妹だし、邪険にはできないと思った。

 日が経つうちにソフィアを好きな自分がいるのに俺に全身で好意を向けてくるミリアを少しずつだが可愛いと思い始めている自分にも気づいた。


 そんなある日、ソフィアにプレゼントを渡そうと持っていたのだが、ミリアは目敏く見つけ、ミリアは喜んで開けてしまった。

 目を輝かせて喜ぶ姿を見て俺は何も言えなくなった。その後もソフィアにプレゼントを渡そうとするが、ミリアが泣いたり、頬を膨らませて怒ったりして渡す機会がない。

 ソフィアはミリアの行動に嫌気がさしたようで早々に退席してしまう事が増えていき、上手くいかない。

 そんな事が続くと段々にソフィアと俺の距離が開いていくような気はしていた。

 けれど、学院を卒業後すぐに俺達は結婚するのだからと特段気にする事はなく、婚約者のいないミリアの話し相手となり、学院や伯爵家でミリアと会う事が増えていく。


 ミリアがソフィアと一緒に街へ出かけるから一緒に行こうと誘いが来た。

 ソフィアと街へ出かけられる喜びに俺はもちろんすぐに返事をした。

 翌日、俺はソフィアに確認を取りに急いで魔法科へ向かった。中庭で久々に二人きりの昼食で嬉しくてドキドキしていたんだ。



「義妹の名を呼ぶほど、仲が良いのですね。妬けてしまいますね。ノア様の婚約者は、私、なのに。仲の良い二人の間に入るように私が行ってどうしろと言うの? このまま二人の仲を取り持って欲しいとでも?」

「あ、いやっ、違うんだ。ミリアから三人で行こうと誘ってきたんだ」
「私を通さずに連絡を取り合うほどの仲の良さ……。私は必要ですか?」

 ソフィア嬢に言われて俺はハッとした。

 ずっと彼女を傷つけていたんだ。何も言わないソフィア嬢に俺は甘えていた。

「……ソフィア嬢、すまない」
「何の謝罪かは分かりませんが。でも……言うとすれば、もう、いいのです。ノア様にとっての私はそれだけの存在でしか無いのでしょう」

 何もかも諦めたような、俺を避けているようなソフィア嬢の様子を見て胸が苦しくなった。

「そんなっ、そんなことはない!」

 俺はソフィア嬢しかいないんだ。

「いつも婚約者をそっちのけで義妹に贈り物をし、お茶を飲み、語り合っているわ。

 今度は私に義妹との逢い引きの手伝いをさせようとしているのね。……二人して私を馬鹿にしているのかしら。私は、もう、構いません。どうぞ、ミリアと好きなだけ過ごせばいいわ」

 そう言い残し、目も合わせる事なくソフィア嬢は去っていった。


 その後、ソフィア嬢の事を考えミリアと街へ行く事を取りやめにしたが、ミリアからソフィアにプレゼントを買いたいと父に相談した所、俺と一緒に行くようにと言われた、と魔法郵便で手紙が来た。

 仕方がないと街へ一緒に出かける事になったが、出かけてみると、ただのデートではないか。俺は憤りを感じ、途中でミリアを屋敷へ帰した。

 が、既に遅かった。

 外堀はいつの間にか埋められており、婚約者がミリアとなった。

 ミリアなんか放っておいてもっとソフィアとの二人の時間を大事にしておけばよかったんだ。

 俺は結婚するからと胡坐をかきすぎていた。ソフィアを傷つけることばかりしていた。

 後悔しかない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように

ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』  運命の日。  ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。 (私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)  今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。  ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。  もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。  そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。  ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。  ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。  でも、帰ってきたのは護衛のみ。  その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。 《登場人物》  ☆ルキナ(16) 公爵令嬢。  ☆ジークレイン(24) ルキナの兄。  ☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。  ★ブリトニー(18) パン屋の娘。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

処理中です...