魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ

文字の大きさ
10 / 87

10

しおりを挟む
 侯爵家へ向かう馬車の中、サラと抱き合い喜びあった。サラは母が亡くなってからずっと私を心配してくれたり、泣いたり、怒ったりと一緒に過ごしてくれた。

 ミリア達が来てからは私の置かれた環境を憂え、少しでも良くしようと頑張ってくれていた本当に有難い存在。

「お帰り。ソフィア。疲れただろう?」

 侯爵家の玄関で和かに出迎えてくれたのはカインおじ様。

「カインおじさま。ただいま……です」

 はじめてのことで少し照れてしまう。

「もう、ソフィアは私の娘なのだからお父さんって呼んでおくれ」
「お、お父様。ただいま、戻りました」

 カインお父様は私をぎゅっと抱きしめたその腕はとても温かくて涙が出そうになった。

 カインお父様の息子で長男のレオン、次男のフィン、三男のテオの三人がいる。彼らはみんな王宮魔法使いとなっていて重要ポストに就いているらしく、普段は王宮に泊まりこんでいるという話だ。

「お父様、仕事は大丈夫なのですか? 筆頭ともなれば仕事がとても忙しいと聞くのですが」
「ああ、それは問題ないよ。息子たちが私の分まで動いてくれているからね」


 私も小さな時によく遊んで貰ったが、大きくなってからは会っていない。カインお父様はお兄様たちに仕事を任せて(押し付けて)きたのだとか。

 サラに荷物を任せると、私はサロンへ通され、カインお父様とお茶をする。

「ソフィア、この庭は昔と何もかわっていないだろう?」
「そうですね。おばさまが好きだった花も、お兄様たちと遊んだ木もあの頃のままですね」

 今までのことを忘れさせてくれるような、とても穏やかに時間が流れている。私がずっと、ずっと欲しくて堪らなかった時間がここにはあった。

 馬車から運び出された私の荷物は、カインお父様が用意してくれた私の部屋へと運ばれていく。

 私の部屋は日当たりが良く、天蓋付きのベッドが準備されていて、クローゼットには既にいくつかのドレスは用意されていたわ。運んでくれた従者たちはみんな荷物が少ないと心配してくれている。

 従者たちの反応になんだかこちらが申し訳ないと思ってしまうわ。

 私も、荷物を纏める時に感じたのよね。
 別に虐げられていた訳ではないの。
 ただ、父は私を物としか見ておらず、余計な物は与えなかっただけ。

 いつまでも感傷に浸っている場合ではないわ。明日からは学院へ登校しないといけない。

 カインお父様は学院をもう少し休んで良いと言ってくれていたけれど、短期休み明けのテストが迫っているし、登校しないとね。気を引き締めて頑張らないといけないわ。

 サラはというと、今日から一週間ほど、屋敷の事に慣れるため、一時的に私の侍女から離れる事になるが、朝や下校してから夕食までの間は侍女として私の世話に付くようだ。

 自分で制服に着替え、食堂に向かうと、

「ソフィア、おはよう」
「おはようございます。お父様」

 挨拶をして席に着き、一緒に朝食を摂る。

 何気ない会話をしながらも笑顔で摂る朝食。本当に何気ないけれど、朝からなんて幸せなのだろう。涙が出てしまう。

 その事に驚いたお父様は私から理由を聞いてとても怒っていた。

 私の説明が下手なせいで心配させてしまい、オロオロしながらも『私を気にかけてくれている』と温かくなった気持ちのまま登校した。

「おはようございます。モニカ様、リナ様。今日から私、ソフィア・オリヴェタン侯爵令嬢として宜しくね」
「「ソフィア様。改めて、こちらこそ宜しく」」

 私はそのままクラスの方々に名前が変わった事を伝えた。クラスのみんなはおめでとう、と祝福してくれたのはやはり、花畑の妖精である義妹の影響なのだろう。

 気を取り直して授業を受けているうちに気づいてしまった。

 今まで伯爵家を継ぐためだけに勉強してきたけれど、王宮魔法使いを目指すのなら全然知識が足りない。

 一、二年生で魔法の基礎理論は習ったけれど、それでは最低限の知識でしかないわ。

 ……もうすぐ三年生になってしまう。卒業までの残り時間は短い。

 私は焦りを感じて、昼食後と放課後は図書室で本を読んだり、借りて邸で読んだりすることにしたの。

 魔法使いの歴史は一年生の最初に習うのだけれど、大まかな部分しか習わないのよね。

 本には建国当初の魔法使い達はとてつもない程の魔力を持っていたと書かれている。

 オリヴェタン一族は歴代の魔法使いを輩出している家系だから元を辿っていけば本に書かれている魔法使いに行きつくのだ。

 先祖返りをした私はきっと祖先に近い魔力量や魔力の形も祖先に近いのではないかと漠然と考えている。

 初代の魔法使いが使う魔法は大地を潤し、雨を降らせ、花を咲かせ、木を成長させるような記述がある。天気を操るようなこともあったらしい。

 これらは原始の魔法と呼ばれていて今の魔法とは随分違うようだ。

 ただ、文献はそこまで多くないため、魔力の量だけで原始の魔法が使えるようになるのか、質が違うと使えないのかも定かではない。

 だけど魔力量の多い私は原始の魔法を使えるかもしれないと淡い期待を込めて更に様々な本を探す。

 きっと自然に則した魔法が多いようで使う魔力も半端な量では使うことが出来ないのだろう。先祖返りをしたと言われている私なら、使えるかもしれない。

 原始の魔法は覚えていても損はない。現在、魔力が豊富だと言われている王族でさえ使わない魔法なのだ。

 私だけが使えるとなればそれだけで凄い魔法使いの仲間入りよね。そう考えるだけで興奮してしまうわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように

ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』  運命の日。  ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。 (私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)  今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。  ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。  もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。  そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。  ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。  ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。  でも、帰ってきたのは護衛のみ。  その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。 《登場人物》  ☆ルキナ(16) 公爵令嬢。  ☆ジークレイン(24) ルキナの兄。  ☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。  ★ブリトニー(18) パン屋の娘。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

処理中です...