魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ

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 しばらくすると、従者達が部屋にやってきて私の荷物を運び出しはじめた。

 どこに移動するのか聞いてみると、使用人達が休憩の時に使う部屋の隣で今は倉庫として使われている部屋に物を移動させるのだとか。

 従者達もどこか困惑し、気を使いながらベッドなどの移動を始めた。

「ソフィアお嬢様、申し訳ございません。旦那様にご報告しますので今しばらくここの部屋をお使いください」
「……気を使わせてごめんなさいね」

 物が置かれた部屋に詰め込まれるようにベッドや机が入れられた。
 倉庫として使われていた部屋は薄暗く、埃がうっすらと積もっている。

 とりあえず、部屋は綺麗にしておかないとラファルが汚れてしまうわ。

 私は泣きたい気持ちを抑えて清浄魔法を使い部屋を綺麗にする。

 ……これからどうなってしまうのかしら。


 夕食はお父様とおじい様、おばあ様、レオンお兄様とテオお兄様が先に席に着いていた。お兄様達の婚約者が席に着いて食事が始まろうとした時、

 エマ様とオフィーリア様は『オリヴェタン家の汚点となっているその女と犬と一緒の空間に居たくない、追い出せ』と詰め寄ってきた。

 二人はお祖父様に宥められて私を無視をする事に決めたようだ。

 ラファルは従者と、私の事は居ない者として食事が始まった。

 誰も私に声をかけないもの。



 その後、令嬢達は笑いながら私の部屋へ来て『これからは魔力以外取り柄のない養女は家族と違うのだから食堂で食べないで』と言ってきた。

 それから毎日、自室で一人食事を摂ることになった。

 侍女が付くわけでもないため、私は簡素なワンピースを着ていることが多くなった。

 最初は自分では何も出来ずに隣の部屋で休んでいる下女にお願いしてお茶の淹れ方や生活の仕方を教えてもらったの。

 いつも私にはサラがいて全てを用意してくれていた。何不自由なく生活をしていたのだと実感させられ涙が零れていく。

 私は一人では本当に何も出来ないのね。

 

 朝はラファルとギルドへ出かけ、夕食前に邸に帰る。誰とも会わない生活。ただこの部屋に寝に帰るだけ。

 サラとも何日も会っていない。

 サラにはもう会う事は無いのかも知れないわね。束の間の幸せに私は浮かれいたの。

 やはり、ここでも私は必要とされていなかった。場違いなのでしょう。

 きっと私はここに居てはいけないのよ。


 ある日、ラファルと散歩に出かけた帰り、レオンお兄様とテオお兄様と腕を組み歩いているエマ様とオフィーリア様と鉢合わせしてしまった。

「ごきげんよう」

 挨拶だけし、通り過ぎようとしていると、

「ごきげんようソフィアさん。良い天気ね。一緒に中庭でお茶でもどうかしら? 貴女には是非来て欲しいの」
「……分かりました。着替えてから向かいますね」

 ラファルと部屋へ入り、質素なワンピースに着替える。

 きっとラファルは私の代わりに皆に威嚇をしてしまうわね。ラファルを部屋に居るように伝え、私は一人中庭へ出た。

「待っていましたわ。あら? その服はどうしたのかしら? 髪も短いし、ね?」

 オフィーリア様と目配せをしてクスクスと笑っている。

「ごめんなさい。私には侍女がいないものですから一人で着られる服を着ました」
「あら? 私に付いているサラの事かしら? 彼女は優秀な侍女ね。私の侍女になるように手配したのよ? 養女の貴方は早く邸から出て行って欲しいわ。このオリヴェタン家には要らないもの。レオン様も何か仰って?」

「私は何も言う事はない」
「テオ様、こんな見窄らしい義妹がいるなんて私、恥ずかしいわ。いつまでも居続けるなんて侯爵家の恥となります。

 そうだわ、忘れていました。私、ソフィア様を受け入れてくれる方を探して参りましたの。

 デービッド・ウィスタリア男爵ですわ。良いでしょう? もう手続きもしているので来週には迎えにくるそうですわ。

 楽しみですわね、ソフィアさん。あの方はブラックローズ会の会長でもありますし、ソフィアさんの話をしたらとても喜んでいましたわ」

「オフィーリア、私の妹にそんな事をいわないでくれ」
「ふふっ。テオ様は優しいですわね」

 テオお兄様は自分に視線を向けるようオフィーリア嬢の手を取り、私に視線を合わせることは無かった。

 そんな中、青い顔をしたサラがお茶を出してくれる。だが、その手は震えており、お茶は私の方へと掛けられた。

「ソ、ソフィア様、す、すみませんっ。手が滑りました。今、拭くものをご用意致します」
「あはは。侍女にお茶を掛けられるなんて小汚い貴女にはお似合いね」 
「……ワンピースが汚れたことですし、途中で申し訳ありませんが、失礼します。お茶会に呼んでいただき、ありがとうございました」

 クスクスと笑わられるのを黙ったまま皆様に礼をし、部屋に戻る。

 ……もう、私は出ていくべきなのかもしれない。

 いつまでもオリヴェタン家にしがみついてはいけないということなのよね。
 貴族として、オリヴェタン家の娘として、頑張ってきたけれど、もう無理かも知れない。


 その日の夜、従者から夕食と共に封をしてある手紙を貰った。

 ……そう。

 私は開封した手紙と、父への手紙を書いてテーブルに置いた。

 そしてベッドに置いてある人形の胸元に付いている魔石へ私の魔力を込めると、私は自身とラファルに向けて原始魔法を唱える。

『空よ、我が魔力を使い、我を隠し、守り、移動させよウーラノス』

 ラファルとそっと窓から空へと飛ぶ。

 魔法使いであるオリヴェタン家の人達は私の魔力が込めてある人形を私だと気配を認識する。

 唱えた魔法は私とラファルの魔力を感知させないようにするもので 明日の朝、食事を従者が持ってくるまでの間は誰にも気付かないだろうから出ていく時間は稼げるわ。

 このまま飛びながら隣国へ向かおう。


 さよなら。



 翌朝、暗い髪で仮面を被り、犬を連れた女が西の検問所を抜けた。
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