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―チリン―
「ソフィア?」
お父様が不思議そうにしていると、私の前に光がほわりと浮かび上がり、ヴィシュヌ様の姿が現れた。
「ヴィシュヌ様!」
「ソフィア、私を呼んだかな?」
彼は周りを見渡し、状況を理解したようで私の額に触れて記憶を読んだ。
「そうか。理解した」
そう言うと、私の隣に座った。
「貴方は?」
おじい様は突然現れたヴィシュヌ様に驚きながらも聞いた。
「私の名はヴィシュヌ・ロゼーヌ・フォン・シルヴィード・オリヴェタン。長いのでみなヴィシュヌと呼んでいる」
おじい様もお父様もその言葉に息をのんだ。
「……オリヴェタン」
私がそう呟くとヴィシュヌ様はいたずらがばれてしまったような感じで柔らかく微笑んだ。
「詳しく言えば、オリヴェタン家は弟の孫がこの国の要請でオリヴェタン家を興した。残念ながら私はアーテナーの街からあまり外に出ていないんだ」
「始祖の方がどうしてソフィアの呼びかけに応えてくれたんですか?」
「それは私がソフィアを気に入ったからだ」
ヴィシュヌ様の言葉に嬉しくなって口を開いた。
「ヴィシュヌ様、私、ヴィシュヌ様の側に居たいです」
「カイン殿、ソフィアはそう言っているが?」
ヴィシュヌ様は笑顔を崩すことなく話をしている。
「ソフィアの気持ちは理解していますが、大事な義娘です。それに残念ながら魔法使いを絶やさないように我が家は血を多く残さねばなりません」
「……まあ、そうだね。魔法使いを絶やしてはいけないと昔から言われているからね。ソフィア、君の考えはどうだい?」
「私は、ヴィシュヌ様と共にありたい、です。お兄様たちはとても優しいです。でも、どうしても、この家で起こった事を水に流せない自分がいるんです。
苦しくて、悲しくて、でも、誰も私に教えてくれなかったし、助けてもくれなかった。どうしても、まだ、自分の中で消化しきれていなくて……」
「私の考えとしては、ソフィアの記憶を読んだ。レオン、テオ、君達のソフィアを思う気持ちや苦しませてしまったという後悔は理解しているが、ソフィアの幸せを考えるのなら君達にソフィアを渡すことはできない。
ソフィアが望むのなら私がこの地に暫く留まり、私が伴侶となってソフィアを全ての害悪から守り抜こう」
ヴィシュヌ様は淀むことなくお父様達に話をする。
その姿に私は小さく心臓が跳ねた。
「ヴィシュヌ様、よろしいのですか? 村の方が大変になるのではないですか?」
私は心配になり聞いてみた。
ヴィシュヌ様がそう言ってくれるのは嬉しいけれど、街の長でもあるし、住むところや伴侶なんてそんなに簡単に引き受けてもいいのだろうかと。
「ソフィア、心配はいらない。カイン殿、私がこの地に留まっている間、君たちに魔法を教えてもいいと思っている」
ヴィシュヌ様がそう言うと、おじい様やテオお兄様の目が光った。
「本当ですか?」
「ああ、資金の上でも問題ない。ソフィア一人くらい養えるほどには蓄えているし、私も長年あの街に住んでいてたまにはこちらに住んでもいい」
「急に、現れてこちらとしても、何とも……」
お父様は困惑しながらも家のことを考えているようだ。
「今全てを決めてしまわなくても良いだろう。ヴィシュヌ様、ソフィアとの結婚については追々話を決めていってもいいでしょうか?」
「構わないよ」
「では、この辺にしておきましょうか」
レオンお兄様は話を切り上げるようにみんなに話をする。
「お父様、サモロンは如何致しますか」
「サモロンか。そのまま影として置いておき、たまに報告させると良い。王家の影が手に入った事は大きな収穫だ」
「分かりましたわ。サモロンはそのままにしておきます」
こうして話は終わった。
ヴィシュヌ様は準備をしてくると言って一旦街に戻っていった。準備ができ次第こちらに来るらしい。
家はどうするのかしら?
ヴィシュヌ様が私の伴侶になってくれると言っていたわ。
信じても、いいの?
またなかったことにされてしまうの?
不安が過る。信じてまた裏切られたらどしよう。またあの気持ちを味わいたくない。でも、今までのことを思えばきっと、大丈夫、よね?
翌日、お父様に呼ばれ、王宮へ向かった。謁見の間では第一王子と王子妃、陛下と王妃様、宰相がその場にいた。お父様と私は一礼をする。
「今回は父が迷惑をかけた。父がした事は許されない事だ。事態を重くみて、父には隠居してもらう。父と母には北部の薔薇の離宮に住んでもらう予定だ」
薔薇の離宮とは生涯幽閉の塔であり、一面薔薇に覆われているためその外見から呼ばれているが決して名前とは違い、厳しい場所である。第一王子はジッと私を見る。
「先日の会議でソフィア嬢と初めてあった時に光り輝き、癒しを与える様は女神が降臨したと思ったが、やはりソフィア嬢は女神の生まれ変わりではないだろうか。
イーライもエリオットも騒ぐ訳だな。教会からも聖女として欲しいに違いない。いや、教会に渡したら最後だな。そうするとやはり、王宮に女神が降臨したとして……」
見兼ねた王子妃が咳払いを一つ。
どうやら信奉者はこの人ではないだろか。第一王子の言葉や様子を見るからに王宮に私専用の教会でも建てる勢いだわ。
お父様は当然だと言わんばかりの表情だけれど。第一王子は王子妃の咳払いに我に返ったようで目を泳がせて話を変える。
「ソフィア?」
お父様が不思議そうにしていると、私の前に光がほわりと浮かび上がり、ヴィシュヌ様の姿が現れた。
「ヴィシュヌ様!」
「ソフィア、私を呼んだかな?」
彼は周りを見渡し、状況を理解したようで私の額に触れて記憶を読んだ。
「そうか。理解した」
そう言うと、私の隣に座った。
「貴方は?」
おじい様は突然現れたヴィシュヌ様に驚きながらも聞いた。
「私の名はヴィシュヌ・ロゼーヌ・フォン・シルヴィード・オリヴェタン。長いのでみなヴィシュヌと呼んでいる」
おじい様もお父様もその言葉に息をのんだ。
「……オリヴェタン」
私がそう呟くとヴィシュヌ様はいたずらがばれてしまったような感じで柔らかく微笑んだ。
「詳しく言えば、オリヴェタン家は弟の孫がこの国の要請でオリヴェタン家を興した。残念ながら私はアーテナーの街からあまり外に出ていないんだ」
「始祖の方がどうしてソフィアの呼びかけに応えてくれたんですか?」
「それは私がソフィアを気に入ったからだ」
ヴィシュヌ様の言葉に嬉しくなって口を開いた。
「ヴィシュヌ様、私、ヴィシュヌ様の側に居たいです」
「カイン殿、ソフィアはそう言っているが?」
ヴィシュヌ様は笑顔を崩すことなく話をしている。
「ソフィアの気持ちは理解していますが、大事な義娘です。それに残念ながら魔法使いを絶やさないように我が家は血を多く残さねばなりません」
「……まあ、そうだね。魔法使いを絶やしてはいけないと昔から言われているからね。ソフィア、君の考えはどうだい?」
「私は、ヴィシュヌ様と共にありたい、です。お兄様たちはとても優しいです。でも、どうしても、この家で起こった事を水に流せない自分がいるんです。
苦しくて、悲しくて、でも、誰も私に教えてくれなかったし、助けてもくれなかった。どうしても、まだ、自分の中で消化しきれていなくて……」
「私の考えとしては、ソフィアの記憶を読んだ。レオン、テオ、君達のソフィアを思う気持ちや苦しませてしまったという後悔は理解しているが、ソフィアの幸せを考えるのなら君達にソフィアを渡すことはできない。
ソフィアが望むのなら私がこの地に暫く留まり、私が伴侶となってソフィアを全ての害悪から守り抜こう」
ヴィシュヌ様は淀むことなくお父様達に話をする。
その姿に私は小さく心臓が跳ねた。
「ヴィシュヌ様、よろしいのですか? 村の方が大変になるのではないですか?」
私は心配になり聞いてみた。
ヴィシュヌ様がそう言ってくれるのは嬉しいけれど、街の長でもあるし、住むところや伴侶なんてそんなに簡単に引き受けてもいいのだろうかと。
「ソフィア、心配はいらない。カイン殿、私がこの地に留まっている間、君たちに魔法を教えてもいいと思っている」
ヴィシュヌ様がそう言うと、おじい様やテオお兄様の目が光った。
「本当ですか?」
「ああ、資金の上でも問題ない。ソフィア一人くらい養えるほどには蓄えているし、私も長年あの街に住んでいてたまにはこちらに住んでもいい」
「急に、現れてこちらとしても、何とも……」
お父様は困惑しながらも家のことを考えているようだ。
「今全てを決めてしまわなくても良いだろう。ヴィシュヌ様、ソフィアとの結婚については追々話を決めていってもいいでしょうか?」
「構わないよ」
「では、この辺にしておきましょうか」
レオンお兄様は話を切り上げるようにみんなに話をする。
「お父様、サモロンは如何致しますか」
「サモロンか。そのまま影として置いておき、たまに報告させると良い。王家の影が手に入った事は大きな収穫だ」
「分かりましたわ。サモロンはそのままにしておきます」
こうして話は終わった。
ヴィシュヌ様は準備をしてくると言って一旦街に戻っていった。準備ができ次第こちらに来るらしい。
家はどうするのかしら?
ヴィシュヌ様が私の伴侶になってくれると言っていたわ。
信じても、いいの?
またなかったことにされてしまうの?
不安が過る。信じてまた裏切られたらどしよう。またあの気持ちを味わいたくない。でも、今までのことを思えばきっと、大丈夫、よね?
翌日、お父様に呼ばれ、王宮へ向かった。謁見の間では第一王子と王子妃、陛下と王妃様、宰相がその場にいた。お父様と私は一礼をする。
「今回は父が迷惑をかけた。父がした事は許されない事だ。事態を重くみて、父には隠居してもらう。父と母には北部の薔薇の離宮に住んでもらう予定だ」
薔薇の離宮とは生涯幽閉の塔であり、一面薔薇に覆われているためその外見から呼ばれているが決して名前とは違い、厳しい場所である。第一王子はジッと私を見る。
「先日の会議でソフィア嬢と初めてあった時に光り輝き、癒しを与える様は女神が降臨したと思ったが、やはりソフィア嬢は女神の生まれ変わりではないだろうか。
イーライもエリオットも騒ぐ訳だな。教会からも聖女として欲しいに違いない。いや、教会に渡したら最後だな。そうするとやはり、王宮に女神が降臨したとして……」
見兼ねた王子妃が咳払いを一つ。
どうやら信奉者はこの人ではないだろか。第一王子の言葉や様子を見るからに王宮に私専用の教会でも建てる勢いだわ。
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