【完】隣国に売られるように渡った王女

まるねこ

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8 フェルディナンドSide

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 僕の名はフェルディナンド・ベニーシェイク。

 リヴィア様の婚約者になったのは十歳の時。

 ある日、上機嫌の母に連れられて来たのが王宮。初めてリヴィア様を見た時はなんだか冷たくて怖そうだと思ったけれど、話をしていくうちにとても優しい女性だと分かった。


 リヴィア様と婚約が決まった時は父たちはとっても喜んでくれた。父や母はとても喜んでくれてはいたけれど、兄たちは反対していた。『王宮は魑魅魍魎が跋扈する世界だ。人の裏が読めないお前には無理なんじゃないか?』と。

 僕はリヴィア様と婚約できたことが素直に嬉しかったんだ。

 彼女の婚約者になってから親睦を深めるためのお茶会が開かれた。

 そこで気づいたのは、彼女はとても聡明で誰とでも仲良くなれそうなのに他の貴族との接点がほとんどない。

 王妃様がリヴィア様と付き合う人を選んでいると聞いたんだ。

 とても彼女思いの母親なんだろう。

 リヴィア様はアンバー妃やラジーノ王子やゼノ王子とは仲が良くないのは分かった。
 王宮の誰もが口にはしないけど、リヴィア様を避けている。

 一度、リヴィア様の話を母に聞いてみたけれど、母は『リヴィア様は可哀想な王女様なの。貴方が支えてあげなさい』と言うばかりであまり分からなかった。

 だから僕は王妃と側妃の仲が悪いことでリヴィア様が犠牲になっているんじゃないかとは考えていたんだ。

 彼女と結婚した後、国から公爵の地位を新たに賜り、彼女は女公爵、僕はその夫として過ごすものだと思っていたし、そう教えられていた。

 学院に入ってからも彼女は自ら前に出るわけではないけれど、素晴らしい女性には変わりなかった。僕が嫉妬してしまうくらいに。彼女はとにかく優秀なんだ。

 あまり感情を表に出すことはないけれど、ちょっとした拍子に微笑む姿が美しい。そして学院の二年生になった時、一人の令嬢が声を掛けてきた。

 彼女の名前はロジーナ・フリッジ子爵令嬢で僕の一つ下の学年だ。彼女は学院でいじめられているようで公爵子息の僕に庇護を求めてくるようになった。家族からも虐められていると言っていた。

 なんて可哀想なんだ。

 リヴィとは違って感情を素直に出してきて甘えてくる彼女の姿は可愛いといつも思う。

 毎日ロジーナは僕のクラスまで来て一緒にご飯を食べようと誘いに来る。
 リヴィは執務のため学院へ来ない日もよくあるんだ。そんな日は彼女と一緒に食事をする。

 僕のクラスメイトからもロジーナは良く思われていないようでロジーナと仲良くするなと注意を受けたことも何度かあったが、僕はそれを諫めたんだ。

 だってロジーナが可哀想だろう?

 彼女はクラス内でも仲間外れにされているらしい。家でも虐められていてクラスでも……僕しか守る者がいない。

 リヴィには申し訳ないけれど、ロジーナと過ごすことが多くなったのは言うまでもない。
 そうしているうちにだんだんとリヴィとの距離が広がっていることにも気づかず。



 ある日、僕は放課後に友人と図書室へ向かう途中に令嬢たちの騒ぐ声が聞こえ、その方向に向かった。

 向かった先は中庭があり、その中央には小さな噴水が設置されていて、どうやらそこで騒いでいるようだ。

 一人の令嬢が複数の令嬢達に囲まれている。

 ロジーナが囲まれている?

 ロジーナはずぶ濡れになって怒っている様子。どうやら噴水に落とされたようだ。

「君たち、何をしているんだ!? 一人の令嬢に寄ってたかってそれはないだろう」
「べ、ベニーシェイク公爵子息様!? お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

 令嬢達は僕を見て驚いていたがすぐにロジーナに視線を戻し、にらみつけている。
 ロジーナはというと、僕を見つけた途端、涙を流して駆け寄り抱きついてきた。

「フェルディナンド様~っ。私、私、うわ~んっ」
「大丈夫かい? 可哀想に……。君達、よくこんないじめができるもんだ」
「いじめだなんて。そこにいるロジーナ様がすべての原因ですわ!」
「うわ~ん。フェルディナンド様~!!」

 令嬢達の声をかき消すほど大泣きした彼女。困ったな、彼女をなだめるしか方法はなさそうだ。

「ロジーナ、もう大丈夫だ」

 優しく声を掛けた僕を見て令嬢達は憤慨している。

「もうっ、知りませんわ!! ベニーシェイク公爵子息様、それ以上彼女に近づかない方がいいですわよ? 私達は忠告しましたからね!! さあ、皆様気分も悪いですからお茶でもしに行きましょう?」
「「「そうですわね」」」

 どうやら嵐は去っていったらしい。

 その後、ロジーナに何故いじめられていたのか聞いても彼女は泣くばかりで困り果てたが、彼女は水に濡れていてとても困っていたので僕が馬車で彼女の家まで送ることにした。

 僕は彼女の両親に挨拶をして家に戻った。

 それから彼女は令嬢達が怖いといつにも増して僕と行動を共にする事が多くなった。
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