【完】隣国に売られるように渡った王女

まるねこ

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「リヴィア様、準備が整いました」
「……そう。今までありがとう」

 私は見送りに出ていた侍女や従者達に差し障りのない程度の最後の挨拶をする。
 私に良くしてくれていた侍女達は涙を浮かべていたわ。

 でも、今、不思議な気分なの。
 どこか他人事のように見えてしまっている。
 私は笑っているだろうか、涙を見せているだろうか、それとも無表情だろうか。
 自分の表情さえも取り繕えていないのかもしれない。

 当然ながら家族からの見送りはないようだ。騎士にエスコートされ、王宮の入り口で私が乗り込むのを今か今かと待っている馬車。



 王女といえど、荷物は少ない。馬車が四台で収まる程度。そのうちの一台はダリア家族が乗っているわ。

 ダリアたちは唯一カインディール国まで付いてきてくれる。私を乗せる馬車はカインディール国が用意した馬車なの。もちろん護衛騎士も、だ。
 平坦な感情は揺らぐことがないまま。

 私がゆっくりと馬車へ乗り込もうとした時。

「リヴィア王女殿下!」

 私を呼び止める声が響いた。

 振り向くとそこに息を切らし近づいてきたのはフェルディナンド・フリッジ次期子爵だった。

 ……どうしたのだろう。

 彼は私の前に立つと息を整えた後、口を開いた。

「リヴィア王女殿下、この度は、婚約、おめでとうございます。……」
「ありがとう」
「こんなに痩せて……本当にごめん。僕のせいで」
「……お子は生まれたのかしら。お二人の子供なら可愛いでしょうね」

 私の気持ちは凪いだままだ。なぜかしら? 彼は今にも泣きそうな顔をしている。

「……僕はラジーノ王子殿下に嵌められた。彼がロジーナを唆し、薬を渡さなければ君は売られる事はなかったんだ。
 子供は…僕の子じゃ無かったんだ。
 君の話をちゃんと聞いていれば良かったんだ。後悔しかない。今でも僕は君の事を大切に思っているんだ」

 フェルディナンド様は悔しそうに涙を浮かべながらそう話している。

「……そう。話はそれだけかしら」

 リヴィアはどこか他人事のような、夢うつつのような感じで話半分で聞き、話をしている。
 幼い頃から知っている従者たちは先ほどの挨拶といい、フェルディナンドへの対応を見てその違和感に気づいたようで声には出さないものの動揺したり、涙を見せている者もいる。

「リヴィア王女殿下……?」
「フリッジ次期子爵、何か?」
「……い、や、なんでもない」
「……そう」
「リヴィア様、出発の時間です。馬車へどうぞ」
「待たせてしまったわ。では、フリッジ次期子爵様、ごきげんよう」
「……リヴィ」

 リヴィアはその言葉に応えることなく軽く会釈をしてそのまま馬車に乗り込んだ。
『おいたわしや』
『リヴィアお嬢様!! いつでも戻ってきて下さい』
『王女殿下! いってらっしゃい』

 窓越しに従者たちから沢山の心配する声や別れの言葉が聞こえてくる。
 その中に一人ポツンと佇むフェルディナンド様がいた。

「出立!!」

 その言葉に馬車が動き始める。リヴィアは窓越しに軽く手を振りながら馬車は王宮を離れていった。
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