【完】隣国に売られるように渡った王女

まるねこ

文字の大きさ
32 / 35

32

しおりを挟む
ケルノッティに帰るのだとは思うけれど、情勢を考えると、このまま落ち着くまではシューンエイゼットにいることになるかもしれないわ。

アレンは私を救い出してくれた。
私にとってアレンは絵本にあった王子様のように。

お姫様は王子様と末永く一緒に暮らしましたと物語ではなるけれど、現実は厳しい。

王子ともなれば婚約者はいるだろうし、私は敗戦国の従属国の王女。

王女とはいえ、捕虜扱いをされてもおかしくはない。アレンと仲睦まじく過ごす姿を見せたら、シューンゼット国内の貴族たちが憤慨するかもしれない。

アレンの美貌を考えれば国中の令嬢も敵に回しそうだ。そんなことを考えつつ、クスリと笑う。

旅装を解き、シンプルなワンピースを着て一息を吐く。王宮侍女が部屋に食事を運んできた。

王宮は、アレンが帰ってきたことで慌ただしく動いているようだ。

私はシューンエイゼット語は問題なく話せるが、執事のティポーは簡単な日常の言葉だけ。モニカも同じくらいなの。

二人が覚えた理由は、アレンがきっかけだったみたい。王宮とは違い、離宮にいると自分たちが直接商人と交渉する場面が出てくる。

商人は様々な国を渡り歩いていて、ケルノッティの言葉を話せない場合もあり、交渉する上で覚えた方がいいと言われていたらしい。

彼は静養中に、少しずつティポーとモニカに教えていたようだ。言ってくれれば良かったのに。二人は話せることが私にバレて、気恥ずかしいと言っていたわ。

実際、カインディール国の離宮で情報を得るために街に来る様々な商人と会話し、交渉や情報を得ていたのでアレンには本当に感謝しかない。

「リヴィア様、アレン様がおいでですが、お会いになりますか?」

夕食を終え、寝るまでの間の時間をゆったりとくつろいでいるとモニカが聞いてきた。

「ええ、お会いするわ」

返事をしたと同時に扉が開き、アレンが入ってきた。アレンの従者はアレンに苦言を呈しているが、笑って気にしていないようだ。

「リヴィア、遅くなった。少しはゆっくり出来たかな?」
「アレン様、おかげさまで食事も美味しく頂きましたわ」
「良かった。戦勝報告までは忙しくて君と会う時間が取れるかどうかわからない。だが、リヴィアには俺を信じてくれ。俺が妻に迎えたいのはリヴィアだけだ」
「アレン様のこと、信じております」

アレンがそう言うということは、やはり私を陥れようとしている人が城に存在するのだろう。どこの国も同じね。

私はアレンと少し話をした後、彼は打合せがあるようで、またすぐに戻っていった。
私は疲れていたので、ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。

翌日は少し遅めの朝食を摂り、窓際でお茶を飲みながらゆったりとしていると、ティポーから報告を受けた。『リヴィア様にお会いしたい』という人がいるらしい。

私はアレンと一緒にこの国へ来たけれど、私の存在はまだ公にされていない。にも拘わらず会いたい、ねえ。

私に面会したいと言ってきたのはエステル・メロード・セイン侯爵令嬢。

どんな人なのかしら?

「ティポー、分かったわ。王妃様に報告を。開いているサロンを貸してもらって。あと、侍女を数人手配してもらえるかしら?」
「畏まりました」

ティポーはそのまま報告をしに部屋を出ていった。

「モニカ、どう思う?」
「リヴィア様が憎くて仕方がないのではないでしょうか?」
「どうなのかしらね」
「リヴィア様、ただいま戻りました。王妃様から『明日の午後、第三サロンを開けておくわ』ということです」
「セイン侯爵令嬢の話を他の従者から聞いたのですが、従者からは庇護欲を掻き立てられるほど可愛いという評判です。ですが、侍女たちからはあざといという評判でした」
「まあ、よくある令嬢ね?」

モニカに同意を求めると、彼女もうんうんと頷いている。この国に来て早々に対峙することになるのね。憂鬱になるわ。

王妃様はすぐに侍女を手配してくれた。

この国に滞在している間の私専属侍女。私の意図を理解してくれたようで嬉しい限りね。元々彼女たちは王族専用の侍女。

侍女として身の回りの世話はもちろん、戦闘にも長けているし、諜報も出来そうだ。この国にいる間、私自身を守る術がない。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか

れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。 婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。 両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。 バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。 *今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m

【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。 友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。 仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。 書きながらなので、亀更新です。 どうにか完結に持って行きたい。 ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。

旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!

恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。 誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、 三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。 「キャ...ス...といっしょ?」 キャス……? その名を知るはずのない我が子が、どうして? 胸騒ぎはやがて確信へと変わる。 夫が隠し続けていた“女の影”が、 じわりと家族の中に染み出していた。 だがそれは、いま目の前の裏切りではない。 学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。 その一夜の結果は、静かに、確実に、 フローレンスの家族を壊しはじめていた。 愛しているのに疑ってしまう。 信じたいのに、信じられない。 夫は嘘をつき続け、女は影のように フローレンスの生活に忍び寄る。 ──私は、この結婚を守れるの? ──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの? 秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。 真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処理中です...