【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。

まるねこ

文字の大きさ
18 / 26

18

しおりを挟む
 今日も人が沢山並んでいるわ。

「ここで治療してもらえるのか」

「ここにどうぞ。どうされましたか」

私はそう言って馬車前に用意した椅子を差し出すと、聞いてきた恰幅の良いおじさんはドスンと椅子に座る。

「左足が痛くてな」

「少し触れますよ」

 膝に少し魔力を纏わせる。膝ではないわ。纏わせる箇所をずらしながら探ってゆく。大腿部の裏側の筋ね。そっと手を翳して治療していく。

「終わりましたよ。はい、1000ルーです」

「おお。治ってる。これでこの金額は安い。有難うな」

おじさんを治すと、次は親子連れ。2人とも青白い顔をしているわ。

「どうされましたか」

「ここ2、3日前から熱と咳が酷くて……」

「分かりました。診てみましょう」

まず女の子から。うーん。体の各処を見るけど、少しの炎症があるわ。本来、治療魔法は怪我を治すのであって病は対象外なのよね。

お母さんの方も診てみるとやはり同じね。2人に喉や心臓に向けて治療魔法を使う。

「これで少しは熱も下がっていると思うわ。ちょっと待ってね」

私は馬車から干してある薬草を粉にし、小瓶に詰める。

「これを薄くスプーン半分の量を食後に飲んで下さい。病は治った訳ではないので数日は安静にして下さいね。では2人で2000ルーです」

 そうして私はいつものように治療をこなしていく。そろそろ人も途切れてきたし、店じまいね。私は片付けをしてから商店へ向かう。

まだ夕方前なのでお店もやっている。

「今日のご飯は何にしよう」

 商店には王都とはまた違った野菜が売られている。私はそのお店で野菜を買ったり、パンを買った。久々にお魚が食べたいわ。次の街は南に下って海に出るのもいいわね。

今日、使用した分の小瓶を買うと荷物も手一杯だわ。こっそり風魔法で荷物を浮かせるかな。鼻歌交じりで馬車に帰ると汚れた服の2人が帰って来ていた。

2人の服も買っておけば良かったわ。清浄魔法で2人の汚れを落とす。

「ゾエ、お土産。オークキングの肉」

「ルイ。ありがとう。ルイは強いのね」

 肉の半分は燻製肉にしようかな。半分は今日ステーキにしようかな。鍋に今日買った野菜を煮込み始める。いい香り。

シチューも美味しそうよね。あ、でもステーキにシチューって豪華すぎないかな。そんな事を考えていると、

「ゾエ。お願いがあるんだ」

「ルイ、どうしたの」

「ギルド依頼を受けたんだけど、明日治療師としてパーティーに入って欲しいんだ」

「別にいいけど私、ギルドカード持っていないわよ?」

「ありがとう。ギルドカードは明日、ギルドに行けば発行してもらえるから大丈夫だよ」

「受けた依頼は何の依頼なの?」

「おばけ茸なんだよね。どうやらイービルプラントと一緒に森で大繁殖したらしくて僕達だけだと心許ないんだよね」

 おばけ茸は衝撃を与えると幻惑の粉を吐くきのこの一種。イービルプラントは毒を吐き、動けなくなった所を蔓を使って敵をパクリと食べちゃう植物魔物。どちらも移動する事は無いけど、物理攻撃は毒と幻惑が厄介なのよね。

「ルイは魔法を同時に使える?」

「同時には使った事は無い。使えるのか?」

私は鍋の火加減を見ながら地面に10センチ程の水の壁を出す。

「ルイ、こうやってウォーターウォールを出すの。カーブを描くように敵を囲って、ファイアボールで敵を焼いいけばいいわ。これなら被害は最小限に出来るわ」

指先から火の粒を水の壁に当てる。

「ゾエは器用だ。寝るまで練習してみるよ」

「ルイ、言っておくけど、こうやって小さな魔法で見せたけど、私にはそんなに大きく作り出す事は出来ないと思うの。私は攻撃魔法は得意では無いから。器用では有るけれどね。練習頑張ってね」

「凄いな。僕は出来ない事ばかりだ」

「そんな事は無いわ。私は学校に行かずにずっと魔法の本ばかり読んでいただけだもの。本の中の知識しか無いわ。(前世の知識もフル活用してるけどね。)」

 野菜スープも煮込めたのでフライパンでステーキを焼いていく。美味しそう。上質な脂の香りがするわ。ルイとオスカーさんに分厚いお肉を渡す。もちろん私もお肉に齧り付く。

「美味しい。ところでルイ達はいつお城に戻るの?」

「まだ武者修行のむの字もしてないよ。ゾエはどうするの。このまま治療師を続けていくの?」

「私は続けていくわよ。帰る所もないし」

「ゾエ。それなら僕の所に来ない?」

「えー。それってどういう意味で?滞在するといいって事かな?」

「ゾエが僕のお嫁さんになるんだよ」

「王子妃なんて面倒だし嫌だわ。私は好きに生きて行きたいの」

「僕は臣下に降る予定だよ。僕の奥さんになれば領地でゆっくり過ごせるし、今のように治療師として周る事も出来るよ。良いと思うよ」

「考えておくわ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

追放悪役令嬢のスローライフは止まらない!~辺境で野菜を育てていたら、いつの間にか国家運営する羽目になりました~

緋村ルナ
ファンタジー
「計画通り!」――王太子からの婚約破棄は、窮屈な妃教育から逃れ、自由な農業ライフを手に入れるための完璧な計画だった! 前世が農家の娘だった公爵令嬢セレスティーナは、追放先の辺境で、前世の知識と魔法を組み合わせた「魔法農業」をスタートさせる。彼女が作る奇跡の野菜と心温まる料理は、痩せた土地と人々の心を豊かにし、やがて小さな村に起こした奇跡は、国全体を巻き込む大きなうねりとなっていく。 これは、自分の居場所を自分の手で作り出した、一人の令嬢の痛快サクセスストーリー! 悪役の仮面を脱ぎ捨てた彼女が、個人の幸せの先に掴んだものとは――。

『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi
ファンタジー
前世では病弱で、病室の窓から空を見上げることしかできなかった私。 そんな私が転生したのは、魔法と剣があるファンタジーの世界。 ……とはいえ、勇者でも聖女でもなく、物語に出てこない“モブキャラ”でした。 貴族の家に生まれるも馴染めず、破門されて放り出された私は、街の片隅―― 「しろくま通り」で、小さなお菓子屋さんを開くことにしました。 相棒は、拾ったまんまるのペンギンの魔物“ピノ”。 季節の果物を使って、前世の記憶を頼りに焼いたお菓子は、 気づけばちょっぴり評判に。 できれば平和に暮らしたいのに、 なぜか最近よく現れるやさしげな騎士さん―― ……って、もしかして勇者パーティーの人なんじゃ?! 静かに暮らしたい元病弱転生モブと、 彼女の焼き菓子に癒される人々の、ちょっと甘くて、ほんのり騒がしい日々の物語。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

処理中です...