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5 母の予想は的中
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「素晴らしいじゃないか。すぐに彼をここへ呼ぼう。未来の婿殿か」
「で、ですが、お父様」
「なんだ、ジネット。何か問題があるのか?」
「彼自身伯爵家の嫡男ですし、王宮騎士団所属のためすぐに領地へ来られないと思います」
「そんなことか。全く問題ない」
父は喜びを隠さず、すぐに婚約できるようポートに指示を出している。
「お父様、お母様は魔獣狩りに出かけていらっしゃるのですか?」
「マルフィアは今、リザードマンのお産に立ち会っている。今年は卵が多いらしいので王宮魔獣騎士団も喜ぶだろう。ジネット、お前から見てレオ・バルベはどうなんだ?」
せっかく話を切り替えたのに、父はまた話を戻してくる。
親に彼のことを話すのはやはり恥ずかしい。
そう思う気持ちを実感し、私にも乙女心が残っていたのだと改めて痛感したわ。
父は私の気持ちなど全く気にかけていない。
「そう、ですね。彼は眉目秀麗で騎士として働いている点においては好ましいと思っております。
気になるのは彼が伯爵家の嫡男であることや、公爵家主催のお茶会の場で周囲を気にせず私に声を掛けたのは少し迂闊ではないかと感じています。まだ初対面ですのでまだ人となりを確定するには時期尚早です」
「ふむ。初対面なのか。とりあえず呼び寄せて、この地に相応しいか様子を見極める」
「わかりました」
父のことだから、権力を振りかざしてレオ様を呼び寄せるつもりね。
「あ、お父様、あと一つ」
「なんだ?」
「実は……」
私は王都で得た情報を漏らさずに伝えた。
「分かった。そっちの方はマルフィアに頼んでおく」
「わかりました」
私は一礼をして執務室を出た。
「ジネットお嬢様、この後どうされますか?」
「そうね、魔獣たちの様子を見に行くだけにするわ」
「畏まりました」
私は従者にそう告げ、ケイティを伴って魔獣達が住む区画まで歩いて向かった。
確か母は今、お産の立ち合いをしているんだっけ。
魔獣たちは気が立っているかもしれない。私はふうっと息を吐いて気を引き締めた後、魔獣の厩舎に入った。
ここの魔獣厩舎には一頭につき一室ずつ魔獣の部屋が用意されている。
小型のドラゴンやリザードマン、ヒポグリフなどを中心とした騎乗動物から小型のコカトリスなどの食料用の魔獣まで幅広く飼育されている。
ここでは魔獣と共生できるかどうかの研究も同時に行われているのだ。
「ジネットお嬢様、おかえりなさいませ」
魔獣飼育担当者と研究員達は私の姿を見ると口々に挨拶をした。
「ただいま。みんなの様子はどう?」
「お産中のポリーを除いて、皆静かに過ごしております」
「そう」
私はポリーの部屋の前までやってきた。
お産中は人々が部屋を出入りすることはよくないのでそっと窓から様子を覗いてみる。
窓越しに見ると、馬型の魔獣ヒッポカンポスのポリーが唸り声をあげつつ五つ目の卵を生み出そうと必死に踏ん張っているようだ。
母が傍に寄り添い、卵の殻を割る手伝いをしている。成獣はとても強いが、その分生み落とされる卵の殻も強固なのだ。
それを割って出てくる幼獣はごくわずかで人間が手伝うことで、生存率を大幅に上げている。
生まれたての魔獣に人間の存在を刷り込むことで人間に敵意を抱かずに従順に育つのだ。
「これが最後ね」
「グゥ」
「ポリーお疲れ様」
「グゥ」
母は笑顔で最後の卵を割り、ポリーに赤ちゃんを返していく。
ポリーも母が手伝ってくれることに感謝しているのか苛立っている様子はないようだ。
お産も終わり、研究員に後を任せて母は静かに部屋を出てきた。
「お母様、大丈夫でしたか?」
「あら、ジネット。おかえり。もう少し王都で遊んでくると思っていたわ」
「用事が終わり、その足ですぐに戻ってきました。王都よりも領地の方が楽ですから」
「そう。ジネットのことだからどこかの令息から声を掛けられて逃げ帰ってきたのかと思ったのに」
母は笑いながら冗談を言っているが、私は笑えなかった。だって図星だもの。
ケイティはその様子を見てくすくすと笑い、「奥様のその推察、間違ってはおりません」と話をしている。
「あらっ、やっぱり? 私の勘は当たるのよね」
「お母様の勘は異常ですから」
母の特技は魔力が関与しているのは分からないけれど、ほんの数十秒程度の僅かな時間だけ事前に察知できる能力がある。
そして恐ろしく勘がいい。
母はこの能力のお陰で魔獣からの襲撃でも怪我を負わずに済んでいるの。
「で、その方はどんな令息なのかしら」
母は従者からタオルを受け取り、濡れた手を拭いている。
「お父様に報告してあります。そのうちに相手側から連絡があると思います」
「そう、楽しみね」
私は母と一緒に他の部屋の魔獣の状態を見て回り、部屋に戻った。
レオ様から連絡があるとすれば明日か明後日になるだろうし、それまでは少しゆっくりしたいわ。
「ケイティ、明日以降の予定は何かあったかしら?」
「三日間は特に入っておりません。魔獣からの襲撃に備えておくくらいですね」
「分かったわ」
その後、レオ様の家から書類が届くまでの間はのんびりと過ごし、執務や魔獣退治といつものように日々を送っていた。
数日で書類が来ると思っていたけれど、やはりあちらの家としても嫡男が辺境の地に向かうことは抵抗があったようだ。
「で、ですが、お父様」
「なんだ、ジネット。何か問題があるのか?」
「彼自身伯爵家の嫡男ですし、王宮騎士団所属のためすぐに領地へ来られないと思います」
「そんなことか。全く問題ない」
父は喜びを隠さず、すぐに婚約できるようポートに指示を出している。
「お父様、お母様は魔獣狩りに出かけていらっしゃるのですか?」
「マルフィアは今、リザードマンのお産に立ち会っている。今年は卵が多いらしいので王宮魔獣騎士団も喜ぶだろう。ジネット、お前から見てレオ・バルベはどうなんだ?」
せっかく話を切り替えたのに、父はまた話を戻してくる。
親に彼のことを話すのはやはり恥ずかしい。
そう思う気持ちを実感し、私にも乙女心が残っていたのだと改めて痛感したわ。
父は私の気持ちなど全く気にかけていない。
「そう、ですね。彼は眉目秀麗で騎士として働いている点においては好ましいと思っております。
気になるのは彼が伯爵家の嫡男であることや、公爵家主催のお茶会の場で周囲を気にせず私に声を掛けたのは少し迂闊ではないかと感じています。まだ初対面ですのでまだ人となりを確定するには時期尚早です」
「ふむ。初対面なのか。とりあえず呼び寄せて、この地に相応しいか様子を見極める」
「わかりました」
父のことだから、権力を振りかざしてレオ様を呼び寄せるつもりね。
「あ、お父様、あと一つ」
「なんだ?」
「実は……」
私は王都で得た情報を漏らさずに伝えた。
「分かった。そっちの方はマルフィアに頼んでおく」
「わかりました」
私は一礼をして執務室を出た。
「ジネットお嬢様、この後どうされますか?」
「そうね、魔獣たちの様子を見に行くだけにするわ」
「畏まりました」
私は従者にそう告げ、ケイティを伴って魔獣達が住む区画まで歩いて向かった。
確か母は今、お産の立ち合いをしているんだっけ。
魔獣たちは気が立っているかもしれない。私はふうっと息を吐いて気を引き締めた後、魔獣の厩舎に入った。
ここの魔獣厩舎には一頭につき一室ずつ魔獣の部屋が用意されている。
小型のドラゴンやリザードマン、ヒポグリフなどを中心とした騎乗動物から小型のコカトリスなどの食料用の魔獣まで幅広く飼育されている。
ここでは魔獣と共生できるかどうかの研究も同時に行われているのだ。
「ジネットお嬢様、おかえりなさいませ」
魔獣飼育担当者と研究員達は私の姿を見ると口々に挨拶をした。
「ただいま。みんなの様子はどう?」
「お産中のポリーを除いて、皆静かに過ごしております」
「そう」
私はポリーの部屋の前までやってきた。
お産中は人々が部屋を出入りすることはよくないのでそっと窓から様子を覗いてみる。
窓越しに見ると、馬型の魔獣ヒッポカンポスのポリーが唸り声をあげつつ五つ目の卵を生み出そうと必死に踏ん張っているようだ。
母が傍に寄り添い、卵の殻を割る手伝いをしている。成獣はとても強いが、その分生み落とされる卵の殻も強固なのだ。
それを割って出てくる幼獣はごくわずかで人間が手伝うことで、生存率を大幅に上げている。
生まれたての魔獣に人間の存在を刷り込むことで人間に敵意を抱かずに従順に育つのだ。
「これが最後ね」
「グゥ」
「ポリーお疲れ様」
「グゥ」
母は笑顔で最後の卵を割り、ポリーに赤ちゃんを返していく。
ポリーも母が手伝ってくれることに感謝しているのか苛立っている様子はないようだ。
お産も終わり、研究員に後を任せて母は静かに部屋を出てきた。
「お母様、大丈夫でしたか?」
「あら、ジネット。おかえり。もう少し王都で遊んでくると思っていたわ」
「用事が終わり、その足ですぐに戻ってきました。王都よりも領地の方が楽ですから」
「そう。ジネットのことだからどこかの令息から声を掛けられて逃げ帰ってきたのかと思ったのに」
母は笑いながら冗談を言っているが、私は笑えなかった。だって図星だもの。
ケイティはその様子を見てくすくすと笑い、「奥様のその推察、間違ってはおりません」と話をしている。
「あらっ、やっぱり? 私の勘は当たるのよね」
「お母様の勘は異常ですから」
母の特技は魔力が関与しているのは分からないけれど、ほんの数十秒程度の僅かな時間だけ事前に察知できる能力がある。
そして恐ろしく勘がいい。
母はこの能力のお陰で魔獣からの襲撃でも怪我を負わずに済んでいるの。
「で、その方はどんな令息なのかしら」
母は従者からタオルを受け取り、濡れた手を拭いている。
「お父様に報告してあります。そのうちに相手側から連絡があると思います」
「そう、楽しみね」
私は母と一緒に他の部屋の魔獣の状態を見て回り、部屋に戻った。
レオ様から連絡があるとすれば明日か明後日になるだろうし、それまでは少しゆっくりしたいわ。
「ケイティ、明日以降の予定は何かあったかしら?」
「三日間は特に入っておりません。魔獣からの襲撃に備えておくくらいですね」
「分かったわ」
その後、レオ様の家から書類が届くまでの間はのんびりと過ごし、執務や魔獣退治といつものように日々を送っていた。
数日で書類が来ると思っていたけれど、やはりあちらの家としても嫡男が辺境の地に向かうことは抵抗があったようだ。
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