13 / 35
13 彼への気持ち
しおりを挟む
「レオ、様?」
「あ、ああ。ジネット嬢。どうしたんだ?」
「いえ……」
「ジネット嬢、私達もそろそろ戻ろうか」
「……はい」
ああ、そういうことなのね。
その思いはストンと腑に落ちた。
それと同時に私の気持ちも切り替わる。
自分でもおかしいくらいに。
今までの自分ってなんであんなにウジウジしていたのだろう。
ほんの少し前の自分を殴れるものなら殴りたいほどだわ。
ため息が出そうになるのを堪えていると、後ろから声が掛けられた。
「ジネット様、おひさしぶりですわね」
「マリーズ様! おひさしぶりですわ」
振り向くとそこにはマリーズ様と婚約者のエリク様が仲睦まじげに立っていた。マリーズ様は私を見て目が笑っている。
きっと彼の行動を見ていたのだろう。
「レオ・バルベ伯爵子息様、ジネット様をお借りしても?」
「ええ、構いません」
「今回の主役であるミラ嬢がダンスのお相手を探していたようですし、声をかけてあげて欲しいわ」
「わかりました。ジネット嬢、すぐ戻ってくるから」
「はい」
レオ様は私の手の甲にそっとキスを落とし、彼は意気揚々とこの場を足早に去っていった。
「あらあら。彼はどうするのかしら? 先ほどミラ嬢の紹介の時、彼はジネット様に声を掛けた時と同じように見つめていたけれど、ねえ?」
「そうですね。彼はミラ嬢と新たに婚約されるかもしれませんね」
「あら、折角できた婚約者なのに手放してもよろしいの?」
「彼を一ヶ月の間、見ていましたが、領地で生き抜くのは難しいですね。彼のことを考えるなら私から解放してあげたほうがいいと思います」
「あらあら。相変わらずジネット様は優しいこと」
マリーズ様は面白そうに扇を仰ぎながら話をしているとエリク様も話しかけてきた。
「ジネット嬢、私から見ても彼は不誠実だと思う。早めに切り替えて新たな婚約者を探したほうがいい。ジネット嬢のお眼鏡に叶う男か……。魔獣騎士団のオルガ・サラフィス副官はどうだろうか。彼はまだ独身だし、剣の腕も素晴らしい」
レオ様は満面の笑みを浮かべながらミラ嬢にダンスを誘っている。
ミラ嬢はやや俯き加減で顔を真っ赤にしながら承諾したようだ。レオ様のエスコートでホールの中央まで行き、二人は踊り始めた。
私たちはその様子を横目で見ながら会話を続ける。
「あら。でも彼はセレスティナ王女のお気に入りよ? 王女が手放すとは思えないわ」
「王女は彼と結婚を望んでいるが、彼の出生問題や跡取りではない彼に嫁ぎ先としては相応しくないと陛下から別の婚約者を宛がうような動きが出ているらしいんだ。オルガ副官は狙い目だと思う」
確かオルガ・サラフィス副官は公爵家の出だけれど、公爵の愛妾の子だったはずだ。既に公爵家には男児が三人いて後を継ぐわけではない。
それに彼は本妻からも跡取りからも嫌われているという話だ。
公爵が彼に持っている爵位の内の一つを渡したところで公爵家の後ろ盾はもらえない。それどころか攻撃される恐れもある。
それであれば魔獣騎士団の副官としてこのままでいる方が安定しているのかもしれない。
内情を調べなければもっとも詳しいことはいえないが。
「まぁ、オルガ副官は実直な方だと聞いているけれど、セレスティナ王女のお気に入りなら早々手を出すわけにはいかないわ。陛下も王女には甘いし、様子見ね」
私はマリーズ様の言葉を聞いてついフッと笑みを溢した。
「ジネット様、何か変なことでも言ったかしら?」
「いえ、ここへ来るまでの間、ずっと考えていたんです。私なりにレオ様のことを好きになっていたのだと。
だから王都に戻ってからの彼の行動も嘘だと信じたい。足りないところは私が支えなくてはいけないと不安を抱えながらどうすればいいのか悩んでいました。
でも……。
今の彼の行動を見て、ミラ嬢を見る彼を目の当たりにして、何か自分の中でスッと割り切れたというかなんというか。
マリーズ様達と一緒に次の婚約者について考えている自分がいて、こうも自分の中であっさり割り切れたと思うと自分に笑えてしまったんです」
私の言葉を聞いたマリーズ様は満面の笑みを浮かべる。
「あら、よかったじゃない。いつものジネット様に戻ったのだと思うもの。ジネット様でも恋する気持ちがあって良かったとは思いますが、ゴミを掴むくらいならいくらでも目を覚まさせてあげるわ」
「ふふっ、ありがとうございます。恋って難しいですね。気づかない間に周りが見えなくなっていました。いい経験をさせてもらいました。オルガ副官のことは父に話をしておきます」
「ええ、そうした方がいいわ。今度こそ上手くいくといいわね」
「マリーズ、そろそろ私達も踊りに行こうか」
「エリク様、行きましょうか。踊った後に挨拶周りが待っていると思うと面倒だけど、お伝えしないといけないこともできたし、楽しみだわ。ふふっ。ではジネット様、ごきげんよう」
マリーズ様は何か思いついたらしく、いたずらっ子のような笑みを浮かべた後、二人はお互い見つめ合い、笑顔で去っていく。
マリーズ様も公爵家の跡取りとして色々苦労している方なので良き伴侶に恵まれたことが私も自分のことのように嬉しい。
それと同時に二人の仲睦まじい姿を見て、私も夫となる人とああなりたいな、と羨ましく思う。
「あ、ああ。ジネット嬢。どうしたんだ?」
「いえ……」
「ジネット嬢、私達もそろそろ戻ろうか」
「……はい」
ああ、そういうことなのね。
その思いはストンと腑に落ちた。
それと同時に私の気持ちも切り替わる。
自分でもおかしいくらいに。
今までの自分ってなんであんなにウジウジしていたのだろう。
ほんの少し前の自分を殴れるものなら殴りたいほどだわ。
ため息が出そうになるのを堪えていると、後ろから声が掛けられた。
「ジネット様、おひさしぶりですわね」
「マリーズ様! おひさしぶりですわ」
振り向くとそこにはマリーズ様と婚約者のエリク様が仲睦まじげに立っていた。マリーズ様は私を見て目が笑っている。
きっと彼の行動を見ていたのだろう。
「レオ・バルベ伯爵子息様、ジネット様をお借りしても?」
「ええ、構いません」
「今回の主役であるミラ嬢がダンスのお相手を探していたようですし、声をかけてあげて欲しいわ」
「わかりました。ジネット嬢、すぐ戻ってくるから」
「はい」
レオ様は私の手の甲にそっとキスを落とし、彼は意気揚々とこの場を足早に去っていった。
「あらあら。彼はどうするのかしら? 先ほどミラ嬢の紹介の時、彼はジネット様に声を掛けた時と同じように見つめていたけれど、ねえ?」
「そうですね。彼はミラ嬢と新たに婚約されるかもしれませんね」
「あら、折角できた婚約者なのに手放してもよろしいの?」
「彼を一ヶ月の間、見ていましたが、領地で生き抜くのは難しいですね。彼のことを考えるなら私から解放してあげたほうがいいと思います」
「あらあら。相変わらずジネット様は優しいこと」
マリーズ様は面白そうに扇を仰ぎながら話をしているとエリク様も話しかけてきた。
「ジネット嬢、私から見ても彼は不誠実だと思う。早めに切り替えて新たな婚約者を探したほうがいい。ジネット嬢のお眼鏡に叶う男か……。魔獣騎士団のオルガ・サラフィス副官はどうだろうか。彼はまだ独身だし、剣の腕も素晴らしい」
レオ様は満面の笑みを浮かべながらミラ嬢にダンスを誘っている。
ミラ嬢はやや俯き加減で顔を真っ赤にしながら承諾したようだ。レオ様のエスコートでホールの中央まで行き、二人は踊り始めた。
私たちはその様子を横目で見ながら会話を続ける。
「あら。でも彼はセレスティナ王女のお気に入りよ? 王女が手放すとは思えないわ」
「王女は彼と結婚を望んでいるが、彼の出生問題や跡取りではない彼に嫁ぎ先としては相応しくないと陛下から別の婚約者を宛がうような動きが出ているらしいんだ。オルガ副官は狙い目だと思う」
確かオルガ・サラフィス副官は公爵家の出だけれど、公爵の愛妾の子だったはずだ。既に公爵家には男児が三人いて後を継ぐわけではない。
それに彼は本妻からも跡取りからも嫌われているという話だ。
公爵が彼に持っている爵位の内の一つを渡したところで公爵家の後ろ盾はもらえない。それどころか攻撃される恐れもある。
それであれば魔獣騎士団の副官としてこのままでいる方が安定しているのかもしれない。
内情を調べなければもっとも詳しいことはいえないが。
「まぁ、オルガ副官は実直な方だと聞いているけれど、セレスティナ王女のお気に入りなら早々手を出すわけにはいかないわ。陛下も王女には甘いし、様子見ね」
私はマリーズ様の言葉を聞いてついフッと笑みを溢した。
「ジネット様、何か変なことでも言ったかしら?」
「いえ、ここへ来るまでの間、ずっと考えていたんです。私なりにレオ様のことを好きになっていたのだと。
だから王都に戻ってからの彼の行動も嘘だと信じたい。足りないところは私が支えなくてはいけないと不安を抱えながらどうすればいいのか悩んでいました。
でも……。
今の彼の行動を見て、ミラ嬢を見る彼を目の当たりにして、何か自分の中でスッと割り切れたというかなんというか。
マリーズ様達と一緒に次の婚約者について考えている自分がいて、こうも自分の中であっさり割り切れたと思うと自分に笑えてしまったんです」
私の言葉を聞いたマリーズ様は満面の笑みを浮かべる。
「あら、よかったじゃない。いつものジネット様に戻ったのだと思うもの。ジネット様でも恋する気持ちがあって良かったとは思いますが、ゴミを掴むくらいならいくらでも目を覚まさせてあげるわ」
「ふふっ、ありがとうございます。恋って難しいですね。気づかない間に周りが見えなくなっていました。いい経験をさせてもらいました。オルガ副官のことは父に話をしておきます」
「ええ、そうした方がいいわ。今度こそ上手くいくといいわね」
「マリーズ、そろそろ私達も踊りに行こうか」
「エリク様、行きましょうか。踊った後に挨拶周りが待っていると思うと面倒だけど、お伝えしないといけないこともできたし、楽しみだわ。ふふっ。ではジネット様、ごきげんよう」
マリーズ様は何か思いついたらしく、いたずらっ子のような笑みを浮かべた後、二人はお互い見つめ合い、笑顔で去っていく。
マリーズ様も公爵家の跡取りとして色々苦労している方なので良き伴侶に恵まれたことが私も自分のことのように嬉しい。
それと同時に二人の仲睦まじい姿を見て、私も夫となる人とああなりたいな、と羨ましく思う。
421
あなたにおすすめの小説
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
要らないと思ったのに人に取られると欲しくなるのはわからなくもないけれど。
しゃーりん
恋愛
フェルナンドは侯爵家の三男で騎士をしている。
同僚のアルベールが親に見合いしろと強要されたと愚痴を言い、その相手が先日、婚約が破棄になった令嬢だということを知った。
その令嬢、ミュリエルは学園での成績も首席で才媛と言われ、一部では名高い令嬢であった。
アルベールはミュリエルの顔を知らないらしく、婚約破棄されるくらいだから頭の固い不細工な女だと思い込んでいたが、ミュリエルは美人である。
ならば、アルベールが見合いをする前に、自分と見合いができないかとフェルナンドは考えた。
フェルナンドは騎士を辞めて実家の領地で働くために、妻を必要としていたからである。
フェルナンドとミュリエルの結婚を知ったアルベールは、ミュリエルを見て『返せ』と言い出す、というお話です。
従姉の子を義母から守るために婚約しました。
しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。
しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。
再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。
シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。
ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。
当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって…
歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。
存在しないことにされていた管理ギフトの少女、王宮で真の家族に出会う 〜冷遇された日々は、王宮での溺愛で上書きします〜
小豆缶
恋愛
「願った結果を、ほんの少しだけ変えてしまう力」
私に与えられたギフトは、才能というにはあまりにも残酷な自分も人の運命も狂わせるギフトだった。
そのあまりの危うさと国からの管理を逃れるために、リリアーナは、生まれたことそのものが秘匿され、軟禁され、育てられる。
しかし、純粋な心が願うギフトは、ある出来事をきっかけに発動され、運命が動き出す。
二度とそのギフトを使わないと決めて生きてきたのよ
だが、自分にせまる命の危機ーー
逃げていた力と再び向き合わなければならない状況は、ある日、突然訪れる。
残酷なギフトは、リリアーナを取り巻く人たちの、過去、未来に影響し、更には王宮の過去の闇も暴いていく。
私の愛する人がどうか幸せになりますように...
そう、リリアーナが願ったギフトは、どう愛する人に届くのか?
孤独だったリリアーナのギフトが今、王宮で本当の幸せを見つけるために動き始める
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!
藤野ひま
ファンタジー
わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。
初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!
夫や、かの女性は王城でお元気かしら?
わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!
〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる