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15 王宮の一室。父ジョセフ視点
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「さて、陛下。少々お伺いしたいことがありますの」
「う、うむ」
妻のマルフィアの言葉に陛下は少し居心地が悪そうにブランデーを飲んでいた。
「我が家にあんな屑を押し付けようとした理由は、ミラ嬢のせいでしょう?」
マルフィアが扇で口を隠しながら早速切りこんだ。陛下の仕草は変わらないように見えるが、一瞬、目は泳いでいた。
「なんのことだ? 私は知らない」
「レオ・バルベ伯爵子息は、残念ながら我が家ではすぐに命を落とすでしょうな」
私も率直にそう言った。
「……そんなにか?」
「ええ、残念ながら。貴族のたしなみ程度の実力でしかない。娘が彼を気に入っていたから大めにみていたが、さすがの娘も見限ったようだ」
私がそう口にすると、さすがの陛下も髭に手をやり、困ったような振りをした。
じじいめ。
「陛下の愛娘であるミラ嬢は何処へ嫁ぐのでしょうか。勉強は苦手だし、貴族になったばかりで教養もない。同年代で婚約者がいない人を探すのは大変ではないでしょうか? 彼のところ以外の上位貴族に嫁ぐことが出来るとよろしいのですが……」
マルフィアは陛下に遠慮なく話をしている。
こちらにミラ嬢の情報を掴まれ、陛下には分が悪い話だろう。
陛下も、レオ・バルベ伯爵子息の能力では将来に不安が残ると思ったからこそ、彼をけしかけたのだろう。
領地を治める方はまだいいが、戦闘については彼の実力では生き抜くことはできない。彼に特技があれば違っていたのだろうが。
さすがにこちらとしても娘を虚仮にされて黙ってはいない。
「ま、愛娘ではない。あれは弟のジョールの娘だ」
「ああ、そうでしたね。手引きしていたクレマンティーヌ夫人も既に亡くなっておりますしね」
陛下は無意識にブランデーグラスを回す手が早くなっている。平常心を保とうとしているようだが、バレバレだ。
揺さぶるのはこれくらいにしておくか。
「こちらとしても屑を押し付けられても迷惑だ。屑のせいで魔獣が溢れかえり、王都に魔獣が向かったとしても、致し方ないですからなあ。ミラ嬢では伯爵位の彼でも高望みの部類でしょうな。どう頑張っても男爵相当だ」
「そんなに、か」
「ええ、残念ながら。上位貴族を望み、陛下の力でねじ込むのならバルベ伯爵に引き取ってもらうほかありません」
「……分かった。二人の婚約解消を認めよう。で、望みは?」
「娘の婿候補は残念ながら見つからないと思っていたんですが、つい先ほど良い話を耳にしましてな。オルガ・サラフィスという人物は実力があり、実直だという話だ。セレスティナ王女は彼を気に入っているようですが、公爵家の事情を考えると降嫁できないのではないですかな?」
「オルガ、か。オルガに爵位と領地を持たせても公爵夫人や息子たちは考えなしに邪魔をしてくるだろう。それに自由奔放に育ったセレスティナでは領地を潰してしまう。優秀な執事を付けたところで現状維持というところだ。王妃が頷けばすぐにでもオルガをくれてやる。あれは自分と生き写しのようなセレスティナに甘いからな」
フェリメイア王妃陛下はとても気がきつく、独善的な傾向があり、国王陛下は王妃に嫌気がさし、彼女に隠れて数人の愛妾を作っている。
秘匿されていた愛妾の娘がミラ嬢なのだが、クレマンティーヌ男爵が公に彼女をひっぱり出してきたため、慌てて対処したのが今回の話だ。
もちろん王妃もミラ嬢のことは耳に入っているはずだ。
「あら、王女と副官。相思相愛なら例え貧しくとも、邪魔をされようとも二人でなんとかするのではないでしょうか?」
マルフィアは反応をみるように言葉を口にする。
「いや、好いておるのはセレスティナだけだ。オルガはなんとも思っておらんだろうな。忠実な騎士だ」
「では陛下、オルガ副官を我が家で貰い受けてもよろしいでしょうか?」
「儂としては許可したいが、王妃が口煩い。それにセレスティナが手放さぬだろう」
「なるほど。状況は理解しました。ジネットにはオルガ副官を婿に迎えるよう話をしておきます。陛下の方でも抑えていただけると助かります」
「……うむ」
「それはそうと、こちらが陛下の望まれていた品物です。あと、貴族の動向もここに」
私が頷くと、後ろで控えていた従者は小瓶と書類を陛下の前に持ってきた。
小瓶の中身は我が領に住むドラゴンから採れたごくわずかな涙だ。陛下はこれが一番なのだとか。
書類を読み、思案した後、その場で書類を燃やした。
「ふむ。さすが侯爵、としか言いようがないな」
「最近はジネット自身の能力も成長とともに飛躍的に伸びており、私やマルフィアを超える日もそう遠くありません」
「将来が楽しみだ。辺境伯なのが嬉しくもあり、悲しくもある、な」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
陛下はフッと笑みを浮かべ、ブランデーを飲み干した。
「う、うむ」
妻のマルフィアの言葉に陛下は少し居心地が悪そうにブランデーを飲んでいた。
「我が家にあんな屑を押し付けようとした理由は、ミラ嬢のせいでしょう?」
マルフィアが扇で口を隠しながら早速切りこんだ。陛下の仕草は変わらないように見えるが、一瞬、目は泳いでいた。
「なんのことだ? 私は知らない」
「レオ・バルベ伯爵子息は、残念ながら我が家ではすぐに命を落とすでしょうな」
私も率直にそう言った。
「……そんなにか?」
「ええ、残念ながら。貴族のたしなみ程度の実力でしかない。娘が彼を気に入っていたから大めにみていたが、さすがの娘も見限ったようだ」
私がそう口にすると、さすがの陛下も髭に手をやり、困ったような振りをした。
じじいめ。
「陛下の愛娘であるミラ嬢は何処へ嫁ぐのでしょうか。勉強は苦手だし、貴族になったばかりで教養もない。同年代で婚約者がいない人を探すのは大変ではないでしょうか? 彼のところ以外の上位貴族に嫁ぐことが出来るとよろしいのですが……」
マルフィアは陛下に遠慮なく話をしている。
こちらにミラ嬢の情報を掴まれ、陛下には分が悪い話だろう。
陛下も、レオ・バルベ伯爵子息の能力では将来に不安が残ると思ったからこそ、彼をけしかけたのだろう。
領地を治める方はまだいいが、戦闘については彼の実力では生き抜くことはできない。彼に特技があれば違っていたのだろうが。
さすがにこちらとしても娘を虚仮にされて黙ってはいない。
「ま、愛娘ではない。あれは弟のジョールの娘だ」
「ああ、そうでしたね。手引きしていたクレマンティーヌ夫人も既に亡くなっておりますしね」
陛下は無意識にブランデーグラスを回す手が早くなっている。平常心を保とうとしているようだが、バレバレだ。
揺さぶるのはこれくらいにしておくか。
「こちらとしても屑を押し付けられても迷惑だ。屑のせいで魔獣が溢れかえり、王都に魔獣が向かったとしても、致し方ないですからなあ。ミラ嬢では伯爵位の彼でも高望みの部類でしょうな。どう頑張っても男爵相当だ」
「そんなに、か」
「ええ、残念ながら。上位貴族を望み、陛下の力でねじ込むのならバルベ伯爵に引き取ってもらうほかありません」
「……分かった。二人の婚約解消を認めよう。で、望みは?」
「娘の婿候補は残念ながら見つからないと思っていたんですが、つい先ほど良い話を耳にしましてな。オルガ・サラフィスという人物は実力があり、実直だという話だ。セレスティナ王女は彼を気に入っているようですが、公爵家の事情を考えると降嫁できないのではないですかな?」
「オルガ、か。オルガに爵位と領地を持たせても公爵夫人や息子たちは考えなしに邪魔をしてくるだろう。それに自由奔放に育ったセレスティナでは領地を潰してしまう。優秀な執事を付けたところで現状維持というところだ。王妃が頷けばすぐにでもオルガをくれてやる。あれは自分と生き写しのようなセレスティナに甘いからな」
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秘匿されていた愛妾の娘がミラ嬢なのだが、クレマンティーヌ男爵が公に彼女をひっぱり出してきたため、慌てて対処したのが今回の話だ。
もちろん王妃もミラ嬢のことは耳に入っているはずだ。
「あら、王女と副官。相思相愛なら例え貧しくとも、邪魔をされようとも二人でなんとかするのではないでしょうか?」
マルフィアは反応をみるように言葉を口にする。
「いや、好いておるのはセレスティナだけだ。オルガはなんとも思っておらんだろうな。忠実な騎士だ」
「では陛下、オルガ副官を我が家で貰い受けてもよろしいでしょうか?」
「儂としては許可したいが、王妃が口煩い。それにセレスティナが手放さぬだろう」
「なるほど。状況は理解しました。ジネットにはオルガ副官を婿に迎えるよう話をしておきます。陛下の方でも抑えていただけると助かります」
「……うむ」
「それはそうと、こちらが陛下の望まれていた品物です。あと、貴族の動向もここに」
私が頷くと、後ろで控えていた従者は小瓶と書類を陛下の前に持ってきた。
小瓶の中身は我が領に住むドラゴンから採れたごくわずかな涙だ。陛下はこれが一番なのだとか。
書類を読み、思案した後、その場で書類を燃やした。
「ふむ。さすが侯爵、としか言いようがないな」
「最近はジネット自身の能力も成長とともに飛躍的に伸びており、私やマルフィアを超える日もそう遠くありません」
「将来が楽しみだ。辺境伯なのが嬉しくもあり、悲しくもある、な」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
陛下はフッと笑みを浮かべ、ブランデーを飲み干した。
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