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29 襲撃 オルガ視点
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「オルガ、日記もあると言ったな。誰が持っている?」
陛下は指で机を叩きながら、少し苛立った声で尋ねた。
「あの場ではロルド・マケイン騎士が木箱と一緒に懐にしまっていました」
「……そうか」
「セレスティナ、何か言い訳はあるか?」
国王陛下の言葉に会場はまた静まり返り、皆の視線はセレスティナ王女へと注がれた。
「わっ、私っ、だって! だってみんなが悪いんだもん! みんなが私の傍にいたいって言うから。あの女はオルガを奪おうと企んだからっ! 私は悪くないわっ。ね、オルガ。そうでしょう? あの女に私のせいにしろって脅されているのよね?」
「私は脅されておりません。私の婚約者を悪く言わないでいただきたい」
俺がセレスティナ王女に視線を向けることはない。
今まで王女は好き勝手にしすぎた。
これまで王太子たちが揉み消した事件も多い。被害者も相当数いる。
俺はどうなってもいい。
ここで一矢でも報いることができれば、被害者たちも少しは救われるだろうか……。
重苦しい雰囲気となった会議室では王女の弁明だけが響いていたが、宰相が咳払いをすると国王陛下は渋い顔をして俺に『下がっていい』と話をする。
俺の行動でジネット嬢を守れただろうか。
このことがきっかけとなり破談になってしまったなら、それも仕方がない。
俺は会議室から出て通路を歩いていると、ステファンは向かいから歩いてきて肩がぶつかった。「おい」と声を掛けようとした時、カサリと手の中に滑り込んできた。
声を掛けようとするが、ステファンはゆっくりと瞬きをした後、無言のまま通り過ぎていく。
それはまるで何かを合図しているかのように。
俺は手を握りしめ、何事もなかったように執務室に戻った。
誰も居ないのを確認した後、手の中の物を確認すると小さく折りたたまれた紙だった。
先ほどの渡し方、会議室でのやり取りを思い出し、否応なく不安が襲ってくる。
俺はゆっくりと紙を開いた。
その紙には『狙われている。気をつけろ』と一言が書かれていた。
チッ。
相手は王妃か、あいつらか。
最悪の事態が頭をよぎる。このままここにいても安全ではないってことか。
俺はすぐに手紙を書いて魔法で直接飛ばす。魔力をだいぶ消費するが、緊急事態だ。
手段を選んでいられない。
時間が掛かればそれだけ相手が準備する時間を与えてしまう。
俺は帯剣し、執務室を出ようとした時。
―チリンチリン。
音が鳴り、手紙がふわりと現れた。
急いで開くと、『気を付けて。お待ちしております』と書かれていた。
胸ポケットに手紙を突っ込み、部屋を出てそのまま騎士団棟を横切る。
「オルガ副官、お出かけですか?」
「ああ、少し。数日の間休むと思うが、あとのことは頼んだ」
「? 急に休み、ですか? 分かりました」
声を掛けてきた騎士は不思議そうな顔をしていたが、俺は早足で馬車停まりまで歩いていく。周囲を警戒しながら、俺は公爵家の馬車に乗り込んだ。
「オルガ様、公爵家へお戻りですか?」
「いや、ベルジエ侯爵家に用事がある。そちらへ向かってくれ」
「畏まりました」
御者は馬車の扉を閉めた後、ゆっくりと動き始める。速くなる鼓動。
……大丈夫だ。
ここは王都の中でも一番人通りが多く安全だ。
それに何か起こるわけじゃない。
そう思いながらも柄に手を掛けてもしもの時に備える。
大きな通りを超えていけばあと少しだ。
俺は柄を持つ手に力が入り、汗ばんでいるのを感じる。
馬車は大通りを過ぎ、通りを外れた道に入るが、何事もなくカラカラと進んでいく。
目的地まであと少しのところで、馬車は大きな衝撃音と共に大きく傾いた。
「大丈夫か?」
「す、すみません。大きな石が突然。避けきれず……」
窓越しに御者に話しかけたその瞬間、反対側の窓を火球が叩き割った。
チッ。
あと少しというところで。
「おい、大丈夫か?」と声を掛けるが反応はない。いつのまにか御者の姿は居なくなっている。
……仕組まれたか。
座席に火が移り、勢いよく燃え始めた。
この炎の勢い。
やはり中も、か。
このままではまずい。だが、外にも暗殺者がいる。
俺は覚悟を決めて身体強化を行い、馬車の扉を勢いよく蹴破った。
「出てきたぞ!」
目の前にいたのは男が六人ほどだった。死角にいるかもしれない。
クソッ。
見知った顔もいる。
家族はあいつらと手を組み、俺を殺そうとしていたのか。
「ウオォォォ」
俺は覚悟を決め、大声を挙げて剣を引き抜き、目の前の男に切りかかった。
目の前の男は血しぶきを上げ、倒れた。その勢いで隣にいた男も切り捨てる。
敵は声を上げ、仲間を呼び始めると、かなりの人数が集まりはじめた。
……多勢に無勢だ。囲まれる前に逃げねば。
目の前の男の剣を弾き飛ばし、隙を作った俺は左手で高光度の光の玉を男たちの前に投げつけて身をひるがえし、ベルジエ侯爵邸まで走った。
「おい!! 逃げたぞ! 追いかけろっ」
全力で逃げる。
ようやく邸が見えてきた。
あと少し、あと少しで敷地に入る。
そう思った時、後ろから強い衝撃が走った。身体は興奮し、頭が追い付かず理解ができない。
「やったぞ!」
一人の男の声が耳に届いた。
ああ、俺はやられたのか。
上手く身体が制御出来ず、前に倒れこんだ。
逃げないと、そう思うが上手く身体が動かない。
周囲で怒号が飛び交っているような気がするが、振り向くこともできず、じわじわと視界が暗転していく。
陛下は指で机を叩きながら、少し苛立った声で尋ねた。
「あの場ではロルド・マケイン騎士が木箱と一緒に懐にしまっていました」
「……そうか」
「セレスティナ、何か言い訳はあるか?」
国王陛下の言葉に会場はまた静まり返り、皆の視線はセレスティナ王女へと注がれた。
「わっ、私っ、だって! だってみんなが悪いんだもん! みんなが私の傍にいたいって言うから。あの女はオルガを奪おうと企んだからっ! 私は悪くないわっ。ね、オルガ。そうでしょう? あの女に私のせいにしろって脅されているのよね?」
「私は脅されておりません。私の婚約者を悪く言わないでいただきたい」
俺がセレスティナ王女に視線を向けることはない。
今まで王女は好き勝手にしすぎた。
これまで王太子たちが揉み消した事件も多い。被害者も相当数いる。
俺はどうなってもいい。
ここで一矢でも報いることができれば、被害者たちも少しは救われるだろうか……。
重苦しい雰囲気となった会議室では王女の弁明だけが響いていたが、宰相が咳払いをすると国王陛下は渋い顔をして俺に『下がっていい』と話をする。
俺の行動でジネット嬢を守れただろうか。
このことがきっかけとなり破談になってしまったなら、それも仕方がない。
俺は会議室から出て通路を歩いていると、ステファンは向かいから歩いてきて肩がぶつかった。「おい」と声を掛けようとした時、カサリと手の中に滑り込んできた。
声を掛けようとするが、ステファンはゆっくりと瞬きをした後、無言のまま通り過ぎていく。
それはまるで何かを合図しているかのように。
俺は手を握りしめ、何事もなかったように執務室に戻った。
誰も居ないのを確認した後、手の中の物を確認すると小さく折りたたまれた紙だった。
先ほどの渡し方、会議室でのやり取りを思い出し、否応なく不安が襲ってくる。
俺はゆっくりと紙を開いた。
その紙には『狙われている。気をつけろ』と一言が書かれていた。
チッ。
相手は王妃か、あいつらか。
最悪の事態が頭をよぎる。このままここにいても安全ではないってことか。
俺はすぐに手紙を書いて魔法で直接飛ばす。魔力をだいぶ消費するが、緊急事態だ。
手段を選んでいられない。
時間が掛かればそれだけ相手が準備する時間を与えてしまう。
俺は帯剣し、執務室を出ようとした時。
―チリンチリン。
音が鳴り、手紙がふわりと現れた。
急いで開くと、『気を付けて。お待ちしております』と書かれていた。
胸ポケットに手紙を突っ込み、部屋を出てそのまま騎士団棟を横切る。
「オルガ副官、お出かけですか?」
「ああ、少し。数日の間休むと思うが、あとのことは頼んだ」
「? 急に休み、ですか? 分かりました」
声を掛けてきた騎士は不思議そうな顔をしていたが、俺は早足で馬車停まりまで歩いていく。周囲を警戒しながら、俺は公爵家の馬車に乗り込んだ。
「オルガ様、公爵家へお戻りですか?」
「いや、ベルジエ侯爵家に用事がある。そちらへ向かってくれ」
「畏まりました」
御者は馬車の扉を閉めた後、ゆっくりと動き始める。速くなる鼓動。
……大丈夫だ。
ここは王都の中でも一番人通りが多く安全だ。
それに何か起こるわけじゃない。
そう思いながらも柄に手を掛けてもしもの時に備える。
大きな通りを超えていけばあと少しだ。
俺は柄を持つ手に力が入り、汗ばんでいるのを感じる。
馬車は大通りを過ぎ、通りを外れた道に入るが、何事もなくカラカラと進んでいく。
目的地まであと少しのところで、馬車は大きな衝撃音と共に大きく傾いた。
「大丈夫か?」
「す、すみません。大きな石が突然。避けきれず……」
窓越しに御者に話しかけたその瞬間、反対側の窓を火球が叩き割った。
チッ。
あと少しというところで。
「おい、大丈夫か?」と声を掛けるが反応はない。いつのまにか御者の姿は居なくなっている。
……仕組まれたか。
座席に火が移り、勢いよく燃え始めた。
この炎の勢い。
やはり中も、か。
このままではまずい。だが、外にも暗殺者がいる。
俺は覚悟を決めて身体強化を行い、馬車の扉を勢いよく蹴破った。
「出てきたぞ!」
目の前にいたのは男が六人ほどだった。死角にいるかもしれない。
クソッ。
見知った顔もいる。
家族はあいつらと手を組み、俺を殺そうとしていたのか。
「ウオォォォ」
俺は覚悟を決め、大声を挙げて剣を引き抜き、目の前の男に切りかかった。
目の前の男は血しぶきを上げ、倒れた。その勢いで隣にいた男も切り捨てる。
敵は声を上げ、仲間を呼び始めると、かなりの人数が集まりはじめた。
……多勢に無勢だ。囲まれる前に逃げねば。
目の前の男の剣を弾き飛ばし、隙を作った俺は左手で高光度の光の玉を男たちの前に投げつけて身をひるがえし、ベルジエ侯爵邸まで走った。
「おい!! 逃げたぞ! 追いかけろっ」
全力で逃げる。
ようやく邸が見えてきた。
あと少し、あと少しで敷地に入る。
そう思った時、後ろから強い衝撃が走った。身体は興奮し、頭が追い付かず理解ができない。
「やったぞ!」
一人の男の声が耳に届いた。
ああ、俺はやられたのか。
上手く身体が制御出来ず、前に倒れこんだ。
逃げないと、そう思うが上手く身体が動かない。
周囲で怒号が飛び交っているような気がするが、振り向くこともできず、じわじわと視界が暗転していく。
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