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31 裁判
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「オルガ様、大丈夫ですかっ」
私は扉を開けてベッドの方に駆け寄った。
「ジネット嬢、気をつけていたんだが、すまない」
「よかったっ。オルガ様が生きていただけで私は十分です」
「君のおかげで俺は助かった。すぐに治療できたおかげでこの通り、すっかり元どおりだ」
「無理はしないようにしてください」
「ありがとう。ところでジネット嬢、これからどこかへ出かけるのか?」
「ええ。オルガ様に怪我を負わせた者たちに罪を償わせてきます」
「大丈夫だろうか。俺を狙ったのは侯爵夫人の手の者と王太子の指示で動いた者だったが……」
オルガ様は背後にいる者が公爵夫人や王家が、我が家に圧力を掛けてくるのを心配しているのかもしれない。
「大丈夫です。我が家は伊達に辺境伯と名乗っていませんから。今から王宮に向かいます」
「俺も一緒に行こうか」
彼の言葉に一瞬どうしようかと思った。
これからの事を考えればオルガ様も立ち会った方がいいのかもしれない。
「セレスティナ王女や公爵夫人がどうなっても動揺しませんか?」
「全く問題ない」
「……わかりました。オルガ様、王宮内では私の傍から離れないでくださいね」
「もちろんだ」
「では出かける準備を」
私はオルガ様に付いていた従者に指示を出す。
私は自室へ戻り、次期辺境伯として侮られないようなドレスを着て準備をする。
「オルガ様、お待たせ致しました。では向かいましょう」
「ああ。ジネット嬢、美しい」
「ふふっ。オルガ様も素敵です」
私はオルガ様のエスコートで馬車に乗り込み、王宮へと向かった。
王宮の入り口では多くの人たちが行き交っていたが、誰もが口を開かず忙しそうに動いている。
王女の件がすでに伝わっているのだろうか。
私は父たちがいる裁判室へと向かった。
この裁判室というのは陛下が裁判官となり、貴族の争いや罪人を裁くための部屋で普段は使用されていない。
一階の中央部分に罪人たちが入り、周りを囲むように二階部分に陛下や傍聴席が設けられている。
私たちが二階部分へと足を踏み入れると、そこには大臣や宰相、各騎士団の団長など国の重鎮たちが傍聴席に座っていた。一般の貴族は呼ばれておらず、我が家と罪人たちの家族が呼ばれているようだ。
「ジネット、遅かったな」
「お父様、遅くなりました」
「ちょうどこれから罪人たちが呼ばれるところだ」
父がそう言った時、後ろ手に繋がれた罪人たちが入ってきた。
ほとんどが我が家で捕まえた襲撃者のようだ。そしてオルガ様の見知った騎士たちの姿もあるようだ。
最後にセレスティナ王女も入ってきた。
彼女は貴賓牢に入れられていたのだろうか。髪の毛はぼさぼさで、ドレスにも皺が寄っている。
「これよりベルジエ侯爵令嬢冤罪事件とサラフィス公爵子息襲撃事件についての裁判を行う。本来ならこの二件は別々のものとして扱うべきだが、セレスティナ王女が関わっているため一緒に行うことになった」
セレスティナ王女がオルガ様に恋慕し、婚約者の私を殺そうとしたこと。
オルガ様が自分の物にならないならオルガ様も殺そうとしたことを進行役の文官が説明する。
するとセレスティナ王女が会場にいたオルガ様を見つけて突然騒ぎ始めた。
「オルガ! 私は何も悪くないわっ。オルガに近づく女はみんな死ねばいいと思っていたけど、オルガを襲うようになんて指示していないの! 誰かがそう指示しただけなの。助けてっ」
「セレスティナ王女、静粛に」
セレスティナ王女はそう叫んだ。
私を殺そうとしたことは認めるのね。
本来なら殺人未遂で重罪だけど、セレスティナ王女は王族であるため、残念ながら事情次第では罪が軽くなる可能性がある。
オルガ様を殺そうとしていたのはセレスティナ王女ではないが、彼らは全て王女に罪を着せて逃げる気なのだ。
文官が罪状を全て述べた後に陛下が立ち上がった。
「これより判決を言い渡す。セレスティナ・シュリア・ヴァフェッド・ザールは最果ての修道院に入り、生涯修道女として過ごすこととする。そのため王籍から除籍する。これよりただのセレスティナとなる」
本来なら罪状を言い渡す理由もしっかり述べるのだが、今回はないようだ。
色々と後ろ暗い部分が多いからなのだろう。
セレスティナ王女の被害にあった人たちには納得がいかないものではあると思う。
王家に敵意を向けてもおかしくはない。ぎりぎりのところで踏みとどまっている貴族がほとんどかもしれない。
でも、私は許さない。
セレスティナ王女は修道院入りだが、後ろの襲撃や毒の手配をした者たちは全て処刑となった。
私たちは傍聴席で彼らを見つめながら話をする。
「ふむ。三日後の朝、セレスティナは護送されるようだ。面会をしたい貴族は大勢いるだろうな」
「お父様、王妃様や王太子様はどうなるのでしょうか」
「王太子はとりあえずこのままらしいが、王妃は病に伏すようだ。だが、王太子もセレスティナの罪を王妃と共にもみ消してきたため、多くの者に恨まれていてもおかしくない。どうなるかは……」
視察で行方不明になるかもしれないのね。第二王子は側妃様のお子で国民や貴族たちからの信頼も厚い。
「オルガ様はこの後セレスティナ様とお会いになりますか?」
「いや、俺は会う必要はない。それより家の方が忙しくなる。サラフィス家の者が罪人として立っているしな」
「そうですね。一旦家に戻りますか? 私はオルガ様を行かせたくないです……」
「ジネット嬢。そう思ってくれるだけで俺は嬉しい。大丈夫だ。しっかりとけじめを付けてくる」
「わかりました。無理はしないでくださいね」
「ああ」
私は扉を開けてベッドの方に駆け寄った。
「ジネット嬢、気をつけていたんだが、すまない」
「よかったっ。オルガ様が生きていただけで私は十分です」
「君のおかげで俺は助かった。すぐに治療できたおかげでこの通り、すっかり元どおりだ」
「無理はしないようにしてください」
「ありがとう。ところでジネット嬢、これからどこかへ出かけるのか?」
「ええ。オルガ様に怪我を負わせた者たちに罪を償わせてきます」
「大丈夫だろうか。俺を狙ったのは侯爵夫人の手の者と王太子の指示で動いた者だったが……」
オルガ様は背後にいる者が公爵夫人や王家が、我が家に圧力を掛けてくるのを心配しているのかもしれない。
「大丈夫です。我が家は伊達に辺境伯と名乗っていませんから。今から王宮に向かいます」
「俺も一緒に行こうか」
彼の言葉に一瞬どうしようかと思った。
これからの事を考えればオルガ様も立ち会った方がいいのかもしれない。
「セレスティナ王女や公爵夫人がどうなっても動揺しませんか?」
「全く問題ない」
「……わかりました。オルガ様、王宮内では私の傍から離れないでくださいね」
「もちろんだ」
「では出かける準備を」
私はオルガ様に付いていた従者に指示を出す。
私は自室へ戻り、次期辺境伯として侮られないようなドレスを着て準備をする。
「オルガ様、お待たせ致しました。では向かいましょう」
「ああ。ジネット嬢、美しい」
「ふふっ。オルガ様も素敵です」
私はオルガ様のエスコートで馬車に乗り込み、王宮へと向かった。
王宮の入り口では多くの人たちが行き交っていたが、誰もが口を開かず忙しそうに動いている。
王女の件がすでに伝わっているのだろうか。
私は父たちがいる裁判室へと向かった。
この裁判室というのは陛下が裁判官となり、貴族の争いや罪人を裁くための部屋で普段は使用されていない。
一階の中央部分に罪人たちが入り、周りを囲むように二階部分に陛下や傍聴席が設けられている。
私たちが二階部分へと足を踏み入れると、そこには大臣や宰相、各騎士団の団長など国の重鎮たちが傍聴席に座っていた。一般の貴族は呼ばれておらず、我が家と罪人たちの家族が呼ばれているようだ。
「ジネット、遅かったな」
「お父様、遅くなりました」
「ちょうどこれから罪人たちが呼ばれるところだ」
父がそう言った時、後ろ手に繋がれた罪人たちが入ってきた。
ほとんどが我が家で捕まえた襲撃者のようだ。そしてオルガ様の見知った騎士たちの姿もあるようだ。
最後にセレスティナ王女も入ってきた。
彼女は貴賓牢に入れられていたのだろうか。髪の毛はぼさぼさで、ドレスにも皺が寄っている。
「これよりベルジエ侯爵令嬢冤罪事件とサラフィス公爵子息襲撃事件についての裁判を行う。本来ならこの二件は別々のものとして扱うべきだが、セレスティナ王女が関わっているため一緒に行うことになった」
セレスティナ王女がオルガ様に恋慕し、婚約者の私を殺そうとしたこと。
オルガ様が自分の物にならないならオルガ様も殺そうとしたことを進行役の文官が説明する。
するとセレスティナ王女が会場にいたオルガ様を見つけて突然騒ぎ始めた。
「オルガ! 私は何も悪くないわっ。オルガに近づく女はみんな死ねばいいと思っていたけど、オルガを襲うようになんて指示していないの! 誰かがそう指示しただけなの。助けてっ」
「セレスティナ王女、静粛に」
セレスティナ王女はそう叫んだ。
私を殺そうとしたことは認めるのね。
本来なら殺人未遂で重罪だけど、セレスティナ王女は王族であるため、残念ながら事情次第では罪が軽くなる可能性がある。
オルガ様を殺そうとしていたのはセレスティナ王女ではないが、彼らは全て王女に罪を着せて逃げる気なのだ。
文官が罪状を全て述べた後に陛下が立ち上がった。
「これより判決を言い渡す。セレスティナ・シュリア・ヴァフェッド・ザールは最果ての修道院に入り、生涯修道女として過ごすこととする。そのため王籍から除籍する。これよりただのセレスティナとなる」
本来なら罪状を言い渡す理由もしっかり述べるのだが、今回はないようだ。
色々と後ろ暗い部分が多いからなのだろう。
セレスティナ王女の被害にあった人たちには納得がいかないものではあると思う。
王家に敵意を向けてもおかしくはない。ぎりぎりのところで踏みとどまっている貴族がほとんどかもしれない。
でも、私は許さない。
セレスティナ王女は修道院入りだが、後ろの襲撃や毒の手配をした者たちは全て処刑となった。
私たちは傍聴席で彼らを見つめながら話をする。
「ふむ。三日後の朝、セレスティナは護送されるようだ。面会をしたい貴族は大勢いるだろうな」
「お父様、王妃様や王太子様はどうなるのでしょうか」
「王太子はとりあえずこのままらしいが、王妃は病に伏すようだ。だが、王太子もセレスティナの罪を王妃と共にもみ消してきたため、多くの者に恨まれていてもおかしくない。どうなるかは……」
視察で行方不明になるかもしれないのね。第二王子は側妃様のお子で国民や貴族たちからの信頼も厚い。
「オルガ様はこの後セレスティナ様とお会いになりますか?」
「いや、俺は会う必要はない。それより家の方が忙しくなる。サラフィス家の者が罪人として立っているしな」
「そうですね。一旦家に戻りますか? 私はオルガ様を行かせたくないです……」
「ジネット嬢。そう思ってくれるだけで俺は嬉しい。大丈夫だ。しっかりとけじめを付けてくる」
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「ああ」
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