男爵令嬢の記憶が交差する

まるねこ

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7彼との出会い

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 はっ!?
 また中途半端なところで目が覚めた!!

 気になる。
 でも手掛かりは掴めた。

 イェシュティア国のエフィン公爵はこの国の公爵だ。それにブラジェク伯爵は私の婚約者になった人の家だ。

 つまりこの夢で見たことが現実であるのなら私の前世はメルロワード国の側妃だったことになる。

 くっそう。
 いらいらしちゃう!
 なんなの、あの者たち、あの仕事のしなさよ!

「お嬢様、目を覚ましましたか」
「アーシャ、あれ? 私の部屋だわ」
「枝が額に当たって倒れられたのです。お嬢様が元気なのは私たちも喜ばしい限りですが、少し控えた方がよろしいかと。婚約者のロイ様も心配しておりました」

 私の行動に見かねたアーシャは苦言を呈する。

 こうやって口煩い従者が出来上がっていく気がする。前世の時も結婚するまで口煩い侍女がいた気がするわ。

 少し懐かしい気持ちにもなったけれど、アーシャから聞き捨てならない言葉が聞こえた。

「アーシャ、今なんて? ロイ様が心配していた?」
「ええ、ロイ様は現在、旦那様と話をされていると思います」
「そう、会いにいくわ」

「お止めください。まだ目覚めたばかりですよ」
「大丈夫、大丈夫!」

 私がベッドから出ようとした時、ノック音と共に扉が開かれた。

「フラン、起きていたか」
「お父様!」

 私が振り向くと父が部屋に入ってきた。

 そしてその後ろに私と年齢の近い、明るい金髪の男の人が見え――

 突然開けていた窓から強い風が吹き込んだ。

 私は一目みた瞬間、彼の瞳に強く惹かれたの。

「お父様、後ろの方は?」
「ああ、突然すまんな。彼がロイ・バルナバーシュ・ブラジェク伯爵子息だ」

 父がそう言うと、彼は一歩前に出て挨拶をする。

「はじめましてシャリア嬢。僕の名前はロイ・ブラジェクです。婚約者になってくれてありがとう。これからよろしく」

 彼は確か私の一つ下だったわよね。

 なんというか、服装のせいか年より幼く見える。確かに父の言っていたように容姿端麗なのかもしれないが、貧相な体つきで顔色も悪い。

 覇気もなく、今にも倒れてしまいそうな感じだ。

 私はふとベッドから降り、彼の前まで歩いてロイ様の手を掴んだ。ロイ様は突然のことに驚いて動けないでいた。

「ロイ様、ダメだわ。こっちへ」

 私は手を掴んだまま部屋の外へ歩き出す。

「お、お嬢様!?」

 慌ててアーシャが後ろから付いてくる。父と目が合ったが、父は笑顔のまま口を出すことはないようだ。

「フラン嬢、どこへ?」
「私の婚約者となったのなら、私に釣り合うような男にならないといけないのよ」

 私は食堂の扉を開けて料理長を呼ぶ。

「イゴット、イゴットはいる?」
「はい! ここにおります」
「イゴット、彼がお腹いっぱいになるまで食事を出してちょうだい」

 料理長のイゴットは私が連れてきたロイ様をしげしげと見た後、一礼し、食事の準備に入った。

 私は彼を席に促し、聞いてみた。

「ロイ様、今朝は何を食べていたの?」
「パ、パンを食べた」

 私の勢いが強かったせいか、彼は少しおどおどしながらも答えた。

「昨日の夜は何を食べたの?」
「……パンを」
「他には?」
「食べていない」
「そうね、期待した私が悪かったわ」

 そうして話をしているうちにすぐに料理を運んできた。

「どうぞお食べ下さい」

 彼は目の前に出された食事にごくりと唾を飲み込んでいるけれど、手を出す様子はない。

「ロイ様、どうしたの?」
「いや、とても嬉しいが、両親は我慢しているのに僕だけ食べるのはよくないと思って」

「大丈夫よ。私が婚約者となった今、我が家が伯爵家にお金が入るので食事も安定して食べられるようになるわ。

 それに我が家で勉強してきた孤児たちも伯爵家に従者や執事として入るので日々の暮らしもよくなるはずよ。ロイ様は堂々と私に似合う男になればいいわ」

「……わかった。フラン嬢、ありがとう」

 彼はそう言って食事をはじめた。

 ゆっくりと食事をしているが、相当お腹が減っていたのだろう。気持ちいいくらいに食べてくれている。

 彼が食事をしている間、私は父の執務室へと向かい手続きを取る。

「お父様、ここで育った従者と優秀な執事、侍女を二人ほど彼に付けてあげて」
「フラン、頭はもういいのか?」
「ええ、お父様。枝がちょっとぶつかっただけだもの」

 父はクククッと笑いを堪えている。

 だってあれは仕方がなかったの! イライラが止まらなかったから。

「ブラジェク伯爵のところには既に手配してある。心配するな。優秀な者を送り込んでいる」
「お父様」
「どうした? 改まって」

 私の言葉に父は真剣な顔をしている。

「エフィン公爵家を調べているのですよね?」
「ああ、そうだが?」
「ザロア・エフィン公爵がメルロワード国に初めて行った時の記録も調べて下さい。王家とどのようなやりとりがあったのか」
「なぜだ?」

「ただ、なんとなく、です! 天啓が降りたのです!」
「はっ? 馬鹿々々しい。まあ、覚えていたらその辺りも調べておく」
「お願い!」

 父にお願いをした後、私は食堂へ戻った。ロイ様は食事を終え、幾分顔色が良くなったように見える。

「ロイ様、食事を終えましたか?」
「フラン嬢。ありがとう」
「顔色が良くなったわ。書類も準備できたようだし、伯爵家まで送るわ」

 私はロイ様の手を取り、玄関ホールまで歩いていく。

 彼は余裕が出てきたようで廊下を見回しながら歩いている。

「ふふっ、素晴らしいでしょう? どれも贅を尽くした一品なの」
「ああ、とても素晴らしい」

「私と結婚したらここまでとはいかないけれど、素晴らしい生活にしてみせるわ」
「フラン嬢がしてみせる? ノール男爵ではなく?」
「ええ、もちろん私が、貴方を幸せにしてみせる。私は貴方が気に入ったもの」

 ロイ様は私の言葉にふっと笑顔になった。

「未来の妻はなんて頼もしい女性んだ。僕もフラン嬢に似合う男になるように努力する」
「期待しているわ」

 こうして初体面ながらも私は彼と打ち解けることができたのではないかと思う。

 伯爵家の馬車はもちろんないため、我が家の家紋が入っていない馬車を伯爵家の家紋を入れ、馬と御者も父は準備していたようだ。

 彼は馬車に乗り込み、家へと戻っていった。

 今日は本当にいろいろなことがありすぎたわ。

 ありすぎてカーディア様の家にお詫びの手紙を書いていなかった。急いで書かないとね。

 私は部屋に戻り、カーディア様に手紙を書いて従者に届けさせた。

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