男爵令嬢の記憶が交差する

まるねこ

文字の大きさ
8 / 35

8 友人との会話

しおりを挟む
「フラン様、体調はもう大丈夫なの?」
「カーディア様、あの時はご心配をおかけしました。もうすっかり良くなったわ」
「みんな心配していたんですよ。フラン様が普段口にしないような言葉を言ったかと思えば、突然倒れてしまって」

 私は倒れた時の話を詳しく聞いて、違う意味で倒れそうになった。

 まさかそんな暴言を吐いていただなんて。穴が合ったら入りたい。

 カーディア様はその様子を見ながらクスクスと笑っている。

 今日はお礼も兼ねてカーディア様の家に遊びに来ている。彼女は幼い頃からの親友でとても仲がいい。

 彼女の家は特に裕福というわけでもない普通の子爵家なのだが、彼女が家を手伝うようになってから領地の農産物の収穫量が増え、品質も向上し、一大ブランドとして収益を上げ始めている。

「まさか元気が取り柄の貴女が倒れるなんて思ってもみなかったわ」
「ええ、私もよ。カーディア様が取り寄せてくれたお茶を飲んで『これだわ!』って雷が打たれたような衝撃を受けたの」

 私は倒れた時のことを思い出した。

 あの時、あのお茶を飲んで『このお茶を飲んだことがある』って記憶が揺さぶられたの。

「ふふっ。フラン様の好みそうな茶葉を取り寄せたのだけど、倒れてしまうくらい好きな味だったの?」
「ええ! 大好きな味よ。とても素晴らしいお茶だったわ。メルロワード国のアレン領で採れる茶葉だったのでしょう? 味も香りも申し分のない高品質な茶葉だったわ」
「そう言ってもらえると嬉しいのだけど。これからはフラン様が倒れないように気を付けるわ」

 カーディア様はくすくすと笑っている。よほど私のやらかしが面白かったみたい。

 彼女と話をしていると、どことなくアルティディア様のような芯の強さを感じさせる。アルティディア様とは全く違ってとても優しいけれどね!

「私こそごめんなさい」

 私たちは笑いながら会話をしていく。そしてカーディア様が思い出したように私に聞いてきた。

「ところでフラン様、婚約者が出来たと聞いたのですが、お相手がブラジェク伯爵子息だとか。大丈夫でしょうか?」
「お父様が突然決めてきたので何とも言えないです。問題は山積しているけど、なんとかするしかないですよね」

「ブラジェク伯爵領は特産品がないってことはこれから作ればいいのではないかしら? それか、メルロワード国と交易していたということは伝手も残っていそうだけど……」

「確かにそうですね。そこはしっかりと確認しなくちゃいけないわよね。借金を減らすためには手段を選べないですから」

 カーディア様の言葉を聞いて頷きながら考えている。

 確かに借金で相手国との取引はできなくなったけれど、我が家からの資金を借りて取引を再開させる手は残っているのかもしれない。ただそこまで持っていく道筋を考えれば遠い道のりね。

「また行き詰ったらいつでも手紙をちょうだい。相談だけならいつでも乗るわ」
「ありがとうございます! カーディア様の言葉で一筋の光が見えた気がします」

「それにしてもブラジェク伯爵子息って見目麗しいって噂よね。しっかりと捕まえておかないといけないわね」
「家のこともあるから狙われないような気もするけど……」

「あら、そんなことはないわ。愛人にしたいって人も出てくるだろうし、最近は貴族の夫人方がブラジェク伯爵子息に声を掛けていると聞きましたよ? フラン様、その辺もしっかりと情報を抑えておかないと足元を掬われますわ」

「確かに。その辺りもしっかりと抑えておかないといけないですね」

 友人というのはやはり大切なものだわ。こうして話をしていくうちに漠然とした不安もいつの間にかなくなっているもの。

 私たちはその後も心行くまで雑談をして楽しく過ごした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる
恋愛
 らすじ  フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。  このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。  フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。  そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。  だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。  その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。  追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。  そんな力を持って辺境に‥    明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。  まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

派手にしない工房は、今日もちゃんと続いている

ふわふわ
恋愛
名門でも、流行でもない。 選ばなかったからこそ、残った場所がある。 街の片隅で、小さな工房を営む職人シオンと、帳簿と現実を見つめ続けるリリカ。 派手な宣伝も、無理な拡大もせず、ただ「ちゃんと作る」ことを選び続けてきた二人の工房は、いつの間にか人々の日常の一部になっていた。 しかし、再開発と条件変更という現実が、その場所を静かに揺さぶる。 移るか、変えるか、終わらせるか―― 迫られる選択の中で、二人が選んだのは「何も変えない」という、最も難しい決断だった。 特別にならなくていい。 成功と呼ばれなくてもいい。 ただ、今日も続いていることに意味がある。 これは、成り上がらない。 ざまぁもしない。 けれど確かに「生き方」を選びきった人たちの物語。 終わらせなかったからこそ辿り着いた、 静かで、確かな完結。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

政略結婚の作法

夜宮
恋愛
悪女になる。 そして、全てをこの手に。 政略結婚のために身分違いの恋人のいる王太子の婚約者となった公爵令嬢は、妹の囁きを胸に悪女となることを決意した。 悪女と身分違いの恋人、悪女になるはずだった妹の物語。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

処理中です...