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11 いつの世も彼女のような人はいるのね
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「何よ、貴女! 私のロイ様に近づかないでちょうだい! 貴女、邪魔なのよ」
「ふふっ、面白いことを。ロイ様は私の婚約者です。私たちは愛し合っているんですよ。邪魔者はどちらかしら?」
私は敢えて彼女に視線を向けたあと、ロイ様の頬にキスをする。
唇から伝わる熱。
きっと彼は私の行動に困惑しているのだろう。そう思っていたのだが。
「フラン嬢、僕は嬉しい。君がこうして僕に好意を抱いてくれているなんて。僕も君に似合う男に一刻も早くならないといけないな」
「なによ! ずっと我が家が貴方の家を支援してきたでしょう? 私とロイ様が一緒になるべきだわ」
「エフィン公爵令嬢、可笑しいことを仰いますね。公爵家は家を潰さないためだけのお金を出しているだけではないですか。最低限のお金。ロイ様の服も用意してあげられないほど公爵家に財産がないのですか?」
「そんなことないわよ! 我が家は国一番の裕福な家なんだから。貴女目障りね。お父様に言いつけてやるわ。お父様に言えば貴女の家なんてすぐに取り潰しなんだからっ。気分が悪いわ、もう帰る」
「あら、もうお帰りですか。エフィン公爵令嬢、これからはちゃんと先ぶれを出してきてくださいね。いくら公爵令嬢でも失礼だと思いますわ」
「確かにそうだね。僕に婚約者もできたことだし、フラン嬢に疑われるようなことをしたくない。エフィン公爵令嬢、僕はもう大丈夫だから。もうここには来なくてもいいよ」
ロイ様がそう言うと、エフィン公爵令嬢は震えだし、怒りを露わにした。
「うるさい! うるさいっ! ロイ様は私のものなの! 彼に触らないでっ!」
テーブルの上の茶器をなぎ倒し、テーブルクロスを引き、テーブルまで倒そうとしている。
その様子を私は気にすることなくロイ様の頬を撫でた。そしてアーシャに視線を向けて指示を出す。
『排除せよ』と。
アーシャは小さく頷き、すぐさま暴れているエフィン公爵令嬢の腕をひねり後ろへ回った。
「そこの護衛、何をやっている。主人が他家で暴れているのなら止めるべきでしょう」
私の言葉に護衛たちは面倒そうにしながら謝罪してきた。公爵家だから許されると思っているのだろう。
「あら、残念だわ。我が家から持ってきた茶器の価値も分からないのね。この割れたカップは貴方の生涯の賃金よりも高いのよ? 後で公爵に抗議と賠償を請求しておくわ」
私が優しく微笑むと護衛達の顔色はなくなり、すぐに謝罪をする。
まあ、そんなことで許すわけはないけどね。
「エフィン公爵令嬢を早く連れて帰った方がいいわ。そしてブラジェク伯爵家に許可なく勝手に出入りしていたと公爵に話しておきなさい」
「……畏まりました。お嬢様、帰りますよ」
「いやよ! いや! ロイ様といるの!」
暴れる彼女を担いで護衛達はそそくさと伯爵家を後にした。
中庭は先ほどまでの騒ぎがなくなり、静かさを取り戻しはじめている。
伯爵家の従者が壊れたカップを片付けている。
「ロイ様、重いでしょう? おります」
私がそう言うと、彼は私をぎゅっと抱きしめてきた。
「ロ、ロイ様!?」
「フラン嬢、僕は本当に君に恋している。今日も君に守られてしまった。不甲斐なくてごめん。一日でも早く君を守れる男になるよう努力する」
「嬉しい。そう思ってくれることが嬉しい。私もロイ様と会ったあの日からロイ様のことが凄く気になり、いつもロイ様のことを考えてしまうの」
互いに見つめ合い、良い雰囲気になった時にアーシャが声を掛けてきた。
「フラン様、ロイ様、伯爵様がお見えになりました」
私たちは慌てて離れ、私は伯爵に礼を取った。
「君がフランさんだね。可愛いお嬢さんじゃないか」
「父上、身体は大丈夫なのですか?」
「ああ、ノール男爵のおかげで医者に診てもらえたからな。ところでフランさん、君はどこまで知っているのかな?」
伯爵は優しい顔で質問しているが、ノール男爵が伯爵家に目を付けたことの真意を問いたいのかもしれない。
「さあ、父の考えていることはわかりません。私は突然『いい婚約者を見つけてきた』と言われて契約書にサインをしただけですから。
でも私はロイ様のことを気に入っています。ロイ様には生涯苦労をさせないようにすることを誓います」
すると伯爵は声を出して笑いはじめた。
「ロイには勿体ないほどの強いお嬢さんだ。これからもロイのことをよろしくお願いします」
そう言って伯爵は私に頭を下げた。さすがにこれにはロイ様も私も驚くしかなかった。
「伯爵様、頭を下げてはいけません。私はしがない男爵令嬢でしかないもの」
「いや、ノール男爵にはとても感謝しているんだ。今までエフィン公爵家からの嫌がらせを終わらせられると思えば私の礼など軽いものだ」
「……父上」
伯爵はなにか知っている様子ね。伯爵からもそのうち話を聞かないといけないのかもしれない。
「ロイ様、今日は私も家に戻るわ。伯爵様、これからよろしくお願いします」
「ああ、フラン嬢。こちらこそよろしく頼む」
当初の目的を達成したし、ロイ様に会うことも叶った。
気分は浮かれてもいいと思うのにあの女が頭の片隅でうろついているのよね。
いつの世にもフローラのような女は存在するのね。
家に戻り、兄に報告すると案の定、兄には大爆笑された。
そして笑った後に、伯爵家の門番や警備する人を手配してくれた。
「ふふっ、面白いことを。ロイ様は私の婚約者です。私たちは愛し合っているんですよ。邪魔者はどちらかしら?」
私は敢えて彼女に視線を向けたあと、ロイ様の頬にキスをする。
唇から伝わる熱。
きっと彼は私の行動に困惑しているのだろう。そう思っていたのだが。
「フラン嬢、僕は嬉しい。君がこうして僕に好意を抱いてくれているなんて。僕も君に似合う男に一刻も早くならないといけないな」
「なによ! ずっと我が家が貴方の家を支援してきたでしょう? 私とロイ様が一緒になるべきだわ」
「エフィン公爵令嬢、可笑しいことを仰いますね。公爵家は家を潰さないためだけのお金を出しているだけではないですか。最低限のお金。ロイ様の服も用意してあげられないほど公爵家に財産がないのですか?」
「そんなことないわよ! 我が家は国一番の裕福な家なんだから。貴女目障りね。お父様に言いつけてやるわ。お父様に言えば貴女の家なんてすぐに取り潰しなんだからっ。気分が悪いわ、もう帰る」
「あら、もうお帰りですか。エフィン公爵令嬢、これからはちゃんと先ぶれを出してきてくださいね。いくら公爵令嬢でも失礼だと思いますわ」
「確かにそうだね。僕に婚約者もできたことだし、フラン嬢に疑われるようなことをしたくない。エフィン公爵令嬢、僕はもう大丈夫だから。もうここには来なくてもいいよ」
ロイ様がそう言うと、エフィン公爵令嬢は震えだし、怒りを露わにした。
「うるさい! うるさいっ! ロイ様は私のものなの! 彼に触らないでっ!」
テーブルの上の茶器をなぎ倒し、テーブルクロスを引き、テーブルまで倒そうとしている。
その様子を私は気にすることなくロイ様の頬を撫でた。そしてアーシャに視線を向けて指示を出す。
『排除せよ』と。
アーシャは小さく頷き、すぐさま暴れているエフィン公爵令嬢の腕をひねり後ろへ回った。
「そこの護衛、何をやっている。主人が他家で暴れているのなら止めるべきでしょう」
私の言葉に護衛たちは面倒そうにしながら謝罪してきた。公爵家だから許されると思っているのだろう。
「あら、残念だわ。我が家から持ってきた茶器の価値も分からないのね。この割れたカップは貴方の生涯の賃金よりも高いのよ? 後で公爵に抗議と賠償を請求しておくわ」
私が優しく微笑むと護衛達の顔色はなくなり、すぐに謝罪をする。
まあ、そんなことで許すわけはないけどね。
「エフィン公爵令嬢を早く連れて帰った方がいいわ。そしてブラジェク伯爵家に許可なく勝手に出入りしていたと公爵に話しておきなさい」
「……畏まりました。お嬢様、帰りますよ」
「いやよ! いや! ロイ様といるの!」
暴れる彼女を担いで護衛達はそそくさと伯爵家を後にした。
中庭は先ほどまでの騒ぎがなくなり、静かさを取り戻しはじめている。
伯爵家の従者が壊れたカップを片付けている。
「ロイ様、重いでしょう? おります」
私がそう言うと、彼は私をぎゅっと抱きしめてきた。
「ロ、ロイ様!?」
「フラン嬢、僕は本当に君に恋している。今日も君に守られてしまった。不甲斐なくてごめん。一日でも早く君を守れる男になるよう努力する」
「嬉しい。そう思ってくれることが嬉しい。私もロイ様と会ったあの日からロイ様のことが凄く気になり、いつもロイ様のことを考えてしまうの」
互いに見つめ合い、良い雰囲気になった時にアーシャが声を掛けてきた。
「フラン様、ロイ様、伯爵様がお見えになりました」
私たちは慌てて離れ、私は伯爵に礼を取った。
「君がフランさんだね。可愛いお嬢さんじゃないか」
「父上、身体は大丈夫なのですか?」
「ああ、ノール男爵のおかげで医者に診てもらえたからな。ところでフランさん、君はどこまで知っているのかな?」
伯爵は優しい顔で質問しているが、ノール男爵が伯爵家に目を付けたことの真意を問いたいのかもしれない。
「さあ、父の考えていることはわかりません。私は突然『いい婚約者を見つけてきた』と言われて契約書にサインをしただけですから。
でも私はロイ様のことを気に入っています。ロイ様には生涯苦労をさせないようにすることを誓います」
すると伯爵は声を出して笑いはじめた。
「ロイには勿体ないほどの強いお嬢さんだ。これからもロイのことをよろしくお願いします」
そう言って伯爵は私に頭を下げた。さすがにこれにはロイ様も私も驚くしかなかった。
「伯爵様、頭を下げてはいけません。私はしがない男爵令嬢でしかないもの」
「いや、ノール男爵にはとても感謝しているんだ。今までエフィン公爵家からの嫌がらせを終わらせられると思えば私の礼など軽いものだ」
「……父上」
伯爵はなにか知っている様子ね。伯爵からもそのうち話を聞かないといけないのかもしれない。
「ロイ様、今日は私も家に戻るわ。伯爵様、これからよろしくお願いします」
「ああ、フラン嬢。こちらこそよろしく頼む」
当初の目的を達成したし、ロイ様に会うことも叶った。
気分は浮かれてもいいと思うのにあの女が頭の片隅でうろついているのよね。
いつの世にもフローラのような女は存在するのね。
家に戻り、兄に報告すると案の定、兄には大爆笑された。
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