男爵令嬢の記憶が交差する

まるねこ

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12 兄の指示

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「ただいま。兄様、戻ったわ」
「フラン、おかえり。伯爵家はどうだった?」

 私は帰宅後すぐにラルド兄様の仕事部屋を訪れた。

「ラルド兄様が気前よく人を寄越すということは伯爵家の借金が無くなるということですか?」
「さあな? 場合によってはかなりの財を築けるかもしれないな」

「やっぱりエフィン公爵家と前ブラジェク伯爵との関係なの?」
「なんだ、お前知っていたのか?」

 ラルド兄様は椅子に身体を投げるように座り直し、従者にお茶を淹れるように指示をしている。

「いいえ、全く知らないわ。ただ、なんとなく、夢で見ただけよ」

「はっ? お前、頭を打ったんだっけ? いや、フランの頭がおかしいのは今更だが……。夢ってなんだ? そういえば親父にもそんなことを言ってたような気がしたが」

 兄は不審者を見る目で私を見つめてきたので、私も腕を組み言葉を返す。

「失礼ね。夢は夢よ。ただ、あまりに現実的で、多分なんだけど、私は前世の夢だったんじゃないかって思ってる」
「で、どんな夢だったんだ?」

「まだ全部思い出したわけじゃないんだけど、私はメルロワード国のシャリア・カークス伯爵令嬢だったわ。その後、第一側妃になったのよね。

 キルディッド陛下がフローラ・ボーダー男爵令嬢にうつつを抜かして、キルディッド陛下がイシュティア国のブラジェク伯爵を斬ったというのを聞いた。その時の折衝として国に来たのが前エフィン公爵だったという話よ」

「……フラン。お前、そのことを誰かに話をしたか?」

 兄は急に真剣な顔で聞いてきた。

「誰にもしていないわ」
「なら黙っておけ。絶対にしゃべるな。例え夢の中の出来事であっても、だ。お前、殺されるぞ」
「……やっぱり。もちろん黙っているわ」
「ならいい。他に何か思い出したことがあれば教えてくれ」
「わかったわ」

 私の語ったことに兄はひっかかる部分があったのかもしれない。
 夢だとしてもね。

 ただの夢であっても殺される可能性があるということはそれだけ闇が深いのだろう。



 私は兄と話を終えた後、自室に戻るために廊下を歩いていると、窓の外は突風が吹き荒れている。

 窓枠がガタガタと鳴り、窓が勢いよく開いた。

「危ない」

 護衛が私を庇うように前に立った。突風と共に枯れ葉や小さな木の実のような物が廊下に入ってきた。

「大丈夫よ。それにしても風が強いわね。もうすぐ雨が降りそう」

 そう言いながら護衛に庇われて歩いていたはずなのに……。

「お嬢様!?」

 頭に痛みを覚えたと思ったらアーシャの声が遠くで聞こえてきたのを最後に私の意識は途絶えた。クソッ。
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