男爵令嬢の記憶が交差する

まるねこ

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「今はブラジェク伯爵子息の婚約者なのか」

「ええ! 素敵な人を捕まえたでしょう? 今度こそ私は幸せになるんです。そのためにメルロワード国とブラジェク伯爵の結んだ契約の確認とエフィン公爵家の悪事を証明する書類をもらいに来たのです」

「そうか。ようやくか」

 エリオット陛下はそう呟くと、ぱっと表情が明るくなった。

「シャリア、君が居なくなったあと、大変だったんだぞ?」
「何を仰っておられるのやら。エリオット様、いえ、エリオット陛下は全て解決なさっているではありませんか。イェシュティア国にも素晴らしい王だと聞こえてきています」

「……内情は困難なものばかりだがな。ところで書類を出すのは良いが、そちらの国の方は大丈夫なのか?」

「ええ、父が国王をはじめ、エフィン公爵家以外の力のある家に働きかけをしています。私の持ち帰る書類があれば確実に公爵家は潰せるんです」
「そうかそうか。なら、こちらも協力しよう」

 エリオット陛下は笑顔で一つ頷いた。

「ところでブラジェク伯爵子息よ、シャリア妃は才女だった。フラン嬢もそうだろう。だが、その才能はいつも隠されている。彼女を輝かせることができるか?」

「僕は彼女の強さに惹かれ、彼女に似合う男になりたいと思っています。彼女の魅力を引き出すことができるように彼女を生涯支えていきたいと思っています」

「彼女は男に酷い目にあわされてばかりだったからな。ブラジェク伯爵の孫なら大丈夫だろう。彼女を幸せにしてやってくれ」

「エリオット陛下、それは違います。私が、彼を、幸せにするんです。間違ってはいけません」
「ははっ。そうか! そうだな。それでこそ君だ。話を戻すが、書類の準備が出来るまで王都に留まってもらうことになる。そうだな、大体一週間ほどかかるな」

「承知いたしました。書類が出来るまでのんびりと観光を楽しんでおきます」
「ああ。フラン嬢、カークス伯爵に会うのか?」
「そうですね。ジャロの実を持って帰りたいし……」

「だが、あの書類で公爵家が潰れるのなら今までの交易品をそのまま扱うことになるのではないか? ジャロの実がなくても問題ないだろう」

「エリオット陛下、それも違います。ジャロの実は確かに高級薬のベースとして用いられるものですし、交易品に一つとして扱いたいものではありますが、私があの時、植えた本当の目的は私が食べるためですからね」

 エリオット陛下は一瞬動きを止めた後、また笑い始めた。

「君はあの実を食べるために植えたのか。君がそうしてまで食べたい果実……。ククッ。君は本当に変わっていないな。ギリンには私からも伝えておこう」
「ありがとうございます」
「陛下、お時間でございます」

「ああ、すまない。フラン嬢の話をもっと聞きたいが相変わらず執務が立て込んでいるのでね。これで失礼する」
「エリオット陛下、お時間をいただきありがとうございました」

 私たちは短いながらも濃い時間を過ごすことができた。

 書類も準備してくれるそうだし、私は意気揚々と王宮を後にした。


 しばらく滞在するホテルに到着し、部屋に入ると、ようやくロイ様に笑顔が戻った。

「フラン嬢、君って人は凄いな」
「ロイ様、私は何も凄くないわ。過去が身分のある人物だっただけのことよ」
「一国の王と渡り合えるなんて凄いとしかいいようがない」

 ロイ様は興奮したように話をする。

「……ロイ様、国に戻ったらこのことは内密にね」
「もちろんだ。ばれたら僕たちは確実に命がなくなるね」

「表向きは交易品の開拓よ。私たちはエリオット陛下が用意してくれる書類や親書を持ってそのまま王宮へ向かうことになるわ」
「邪魔が入らなければいいな」
「そうね」

 私たちは食事をした後、それぞれの部屋でゆっくりと過ごした。
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