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「マティアス様、これは、何ですか?」
知らない物ばかりで少し不安になっていると、彼が微笑みながら一つ一つ説明してくれる。
「これはメニューと言ってこの表に書かれている物を頼むと厨房で調理して出てくるんですよ」
「選べるのですか?」
「えぇ。勿論です。どれにしますか?」
私は紙とにらめっこするけれど、よく分からない。
どうしよう。
「クッ。悩んでいる姿も美しい。最初は分からないかもしれませんね。私が頼みますね」
何か綺麗だというニュアンスが呟かれたような気もしたけれど、私はそのままマティアス様にお願いして注文してもらった。料理が出されるまでの間、入学式の話や明日からの勉強の話をしたの。
「お待たせいたしました」
そう言って店員は料理を運んできた。どうやら王都名物と呼ばれる物を選んでくれたみたい。邸のシェフが作ってくれる煮込み料理に似ているけれど、またちょっと違うみたい。
一口食べて私は目を見開いて驚いた。
「……美味しい。この鶏肉のスープはコクがあって香りも爽やかでとても食べやすいです。もしかして、この鶏肉はシャルン鳥なのですか?」
香草が使われているのかしら。
「口に合って良かった。よくわかりましたね。これはこの地方で獲れるシャルン鳥です。王都の近郊で穫れる香草との相性はとても良くて王都名物としても有名なんですよ」
「本で読んだ知識はあったのですが、実際口にしてみると考えていたものとは違う感じです。鳥の臭みもなくとても美味しいわ」
マティアス様の食べていた物は私の煮込み料理とは違って白身魚のソテーだった。聞いてみるとキャットフィッシュのような川で漁れる魚なのだとか。次はそれを食べてみてもいいかもしれない。
料理の美味しさについつい饒舌になってしまったけれど、マティアス様は頷いて聞いてくれている。
デザートにはペーシュのコンポートが出てきた。爽やかな香りと酸味が程よく広がり上品な甘さに仕上げられていてとても美味しい。
「ペーシュのコンポート、気に入りました。とても美味しいです。家に帰ったらシェフに作ってもらいたいわ」
「モア嬢のためならシェフも喜んで腕を振るうでしょうね。気に入ってもらえて良かった」
そうして満足の内に馬車に乗り込んだ。
「モア嬢、また食べにいきましょう。他にも良い物が沢山あってモア嬢に見せてあげたい」
「マティアス様、今日は有難うございました。また王都にいく事を楽しみにしていますね。ではまた明日」
紳士に接してくれている彼はとても素敵だなって思った。
翌日からマティアス様に送り迎えをしてもらい、クラスでは友達が出来たし、勉強も頑張りとても充実した毎日を過ごしている。偶に学院が午前中に終わった時に食事に行ったり、商店を見て回ったりしたわ。
私、本当に何も知らない子だった。
毎回街へ出る度に分からない事だらけでマティアス様がその都度説明してくれる。父やフルム兄様に話をしても『モアはお姫様だからいいんだよ』って全然話にならないの。
母は苦笑しながら自分の置かれた状況や平民の暮らしぶりを知ることは必要だと言ってくれている。私が何も出来なくてヤキモキしているのを家族が微笑んで見ている感じなのかしら?何だかそれはそれで守られているという安心感と子供扱いじゃないのかしら?ってぷりぷりしてしまう部分がある。
でもね、前回はそんな事を考える余裕も無かった。そう感じる幸せに涙が出そうになる。そうして試験も無事終わり、長期休暇に入った頃、祖母の元へいつものように向かったの。
知らない物ばかりで少し不安になっていると、彼が微笑みながら一つ一つ説明してくれる。
「これはメニューと言ってこの表に書かれている物を頼むと厨房で調理して出てくるんですよ」
「選べるのですか?」
「えぇ。勿論です。どれにしますか?」
私は紙とにらめっこするけれど、よく分からない。
どうしよう。
「クッ。悩んでいる姿も美しい。最初は分からないかもしれませんね。私が頼みますね」
何か綺麗だというニュアンスが呟かれたような気もしたけれど、私はそのままマティアス様にお願いして注文してもらった。料理が出されるまでの間、入学式の話や明日からの勉強の話をしたの。
「お待たせいたしました」
そう言って店員は料理を運んできた。どうやら王都名物と呼ばれる物を選んでくれたみたい。邸のシェフが作ってくれる煮込み料理に似ているけれど、またちょっと違うみたい。
一口食べて私は目を見開いて驚いた。
「……美味しい。この鶏肉のスープはコクがあって香りも爽やかでとても食べやすいです。もしかして、この鶏肉はシャルン鳥なのですか?」
香草が使われているのかしら。
「口に合って良かった。よくわかりましたね。これはこの地方で獲れるシャルン鳥です。王都の近郊で穫れる香草との相性はとても良くて王都名物としても有名なんですよ」
「本で読んだ知識はあったのですが、実際口にしてみると考えていたものとは違う感じです。鳥の臭みもなくとても美味しいわ」
マティアス様の食べていた物は私の煮込み料理とは違って白身魚のソテーだった。聞いてみるとキャットフィッシュのような川で漁れる魚なのだとか。次はそれを食べてみてもいいかもしれない。
料理の美味しさについつい饒舌になってしまったけれど、マティアス様は頷いて聞いてくれている。
デザートにはペーシュのコンポートが出てきた。爽やかな香りと酸味が程よく広がり上品な甘さに仕上げられていてとても美味しい。
「ペーシュのコンポート、気に入りました。とても美味しいです。家に帰ったらシェフに作ってもらいたいわ」
「モア嬢のためならシェフも喜んで腕を振るうでしょうね。気に入ってもらえて良かった」
そうして満足の内に馬車に乗り込んだ。
「モア嬢、また食べにいきましょう。他にも良い物が沢山あってモア嬢に見せてあげたい」
「マティアス様、今日は有難うございました。また王都にいく事を楽しみにしていますね。ではまた明日」
紳士に接してくれている彼はとても素敵だなって思った。
翌日からマティアス様に送り迎えをしてもらい、クラスでは友達が出来たし、勉強も頑張りとても充実した毎日を過ごしている。偶に学院が午前中に終わった時に食事に行ったり、商店を見て回ったりしたわ。
私、本当に何も知らない子だった。
毎回街へ出る度に分からない事だらけでマティアス様がその都度説明してくれる。父やフルム兄様に話をしても『モアはお姫様だからいいんだよ』って全然話にならないの。
母は苦笑しながら自分の置かれた状況や平民の暮らしぶりを知ることは必要だと言ってくれている。私が何も出来なくてヤキモキしているのを家族が微笑んで見ている感じなのかしら?何だかそれはそれで守られているという安心感と子供扱いじゃないのかしら?ってぷりぷりしてしまう部分がある。
でもね、前回はそんな事を考える余裕も無かった。そう感じる幸せに涙が出そうになる。そうして試験も無事終わり、長期休暇に入った頃、祖母の元へいつものように向かったの。
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