【完結】どうやら時戻りをしました。

まるねこ

文字の大きさ
40 / 49

40

しおりを挟む
「久しぶりね、モア。お婆様の所ばかりで寂しくてきちゃったわ」

 母はそう言いながらサロンでお茶を飲んでいる。今日は侍女としてではなく、令嬢の格好で母と座っているの。祖母から母が来ると聞いて侍女長から令嬢の格好をするように言われていたのよね。

祖母を待つ間、一週間の我が家の出来事を話していた。お茶会の話や、新たな特産品になるであろう品物を見つけたらしくて母は上機嫌に話を聞かせてくれたの。そして私が前回の結婚した当時、丁度今位にラオワーダ国で流行っていた情報を元にこちらから先に流行らせて収益を挙げているのだとか。

きっとサルドア国に向かう前から同じように流行の一歩先を歩いて莫大な収益を掴んでいたのかもしれない。サルドアで私が保護される理由もその事に絡んでいるだろうし、深くは考えない事にするわ。

「待たせたわ。シーラ、久しぶりね」
「お母様、お久しぶりですわ」
「シーラがわざわざ離宮にくるなんて珍しいわね。今日はどうしたのかしら?」
「お母様ったら。分かり切っていますよね」

二人ともクスクスと笑い合いながらお茶を飲み始めた。

「モア、今日私が来た理由はわかっているわよね?」
「マティアス様との婚約の件でしょうか?」
「えぇ、そうよ。モアは本当に彼でいいのかしら?」
「そう、ですね。正直マティアス様はとても素敵でこれからも一緒に居たいと思っていますが、『時戻り』の記憶が拭えず不安で怖くて自分から飛び込めない部分もあります」
「大丈夫よ。彼は誠実だし、影のような仕事はしていないもの。彼の実力は折り紙付きで将来騎士団長も夢ではないわ。モアを虐めるような家は正攻法で叩き潰しそうよね」

母はクスクス笑っている。祖母も頷いている。

「……とはいえ、婚約は成立したわ。おめでとうモア」

母は嬉しそうに立ち上がり、私を抱きしめてくれた。

「本当ならずっと我が家で幸せに暮らして、学院に行って、恋愛を楽しんで、青春を謳歌できたはずなのに。お母様の所で保護されていたとはいえ離れて暮らすのは母として少し寂しく感じたわ。でもモアは頑張ったわ。ずっと努力してきたんだもの。もう大丈夫なの。モアは私達以上に幸せになってくれないとね」

 母の言葉に涙が出た。自分のせいで色んな人達に苦労を掛けてしまった。でも自分を好いてくれる人や私のために動いてくれた両親。親戚。色んな人達の顔を思い出して胸が詰まった。

「ふふっ。モア、私はモアと暮らせて嬉しかったわ。シーラが王女の頃には私も王妃として忙しく動いていたから子供も乳母に預ける事も多くて後悔ばかりしていたのよ?でもこうして孫育てが出来て、私を慕ってくれて、今もこうして側にいてくれる優しい孫は絶対に幸せにならないとね」
「……お婆様」

私は一頻り泣いた後、目を赤くしながらお茶を飲む。

「モアも落ち着いたわね。婚約の手続きを終えた報告としてここに来たのは間違いないのだけれど、兄様から気になる話を聞いたの。お母様にも招待状は来たかしら?」

話が変わると、母も祖母も急に真面目な顔になった。私は首を捻りながら祖母達の話に耳を傾ける。

「えぇ、勿論招待状は届いているわ。今回は私も出席するように、とエリアス国王様からのご命令なのよ」

祖母の言い回しから面倒だわと言いたげな様子。

「お婆様、王宮の舞踏会に招待されているのですか?」
「今度のエリアスの誕生祭よ。戴冠して二十年だから記念式典が催されるの。問題は各国からも使者が来ることね」
「各国からの使者は毎年外交などで来ているのではないのですか?」

外交は式典がなくても行われているので不思議に思っていると。

「今回のラオワーダ国の使者はクロティルド王太子殿下が来るのよ。そしてモアに会いたいと要望があったの」
「……私に会いたいと要望、ですか?」
「えぇ。今頃になってね。何があるのかよく分からないからモアは当日私の侍女として側にいるように手配しているわ。もちろん護衛にマティアスも付く事になっているのよ?」
「そうなのですね。何故今頃になって私に会いたいと言っているのか謎ですが、公式な場ですから断る事はできませんね」

 事前に使者の要望がある場合はある程度叶える手筈となるため要望を出したのだと思う。でもクロティルド王太子殿下は婚姻したはず。

夫婦で来るのかしら?

私には直接知らせは来ていないので陛下かお婆様が対応してくれているのだと思う。

 そこからは陛下の誕生祭の話になった。爵位のある者は全員出席が義務らしいけれど、夜は晩餐会があり、高位貴族だけの参加になるらしい。けれど唯一の例外は母。本来なら男爵位なので参加はしないのだけれど、我が家はサルドア国有数の富豪で元王女である母は特別枠の参加らしい。

母は参加を面倒だと嫌がっているけれど、エリアス国王様から直の命令なのだとか。妹可愛いは健在なのかもしれない。

 私はというと、爵位を持つわけでもないので本来なら全ての行事に参加しなくてもいい。けれど、要望があったので祖母の侍女として同行する事になっている。もちろんドレスを着るわけではないので一安心ね。

 そうしてある程度母とお婆様はお話をして一泊した後、母は忙しいのよとすぐに帰ってしまった。陛下の誕生祭は学院が始まる一週間前なので私は誕生祭が終わった後、そのまま自分の家に戻る事になっている。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<死のループから抜け出す為、今から貴方を攻略させて頂きます。> 全く気乗りがしないのに王子の婚約者候補として城に招かれた私。気づけば鐘の音色と共に、花畑の中で彼の『護衛騎士』に剣で胸を貫かれていた。薄れゆく意識の中・・これが12回目の死であることに気づきながら死んでいく私。けれど次の瞬間何故かベッドの中で目が覚めた。そして時間が戻っている事を知る。そこで今度は殺されない為に、私は彼を『攻略』することを心に決めた―。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

処理中です...