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<<009 明日から本気出す
しおりを挟むイケメン君の宣言に会場中の生徒は動揺している。
「なに、簡単な事だよ、皆で相応しいと思う者同士を恋人にしようじゃないか」
こんなの通るはずないだろ。
「もう既にこれは決められた事だよ」
教師陣が白紙の紙を全員に配っている。
俺の所にもその紙は配られて来て、周りでは泣き出す生徒もいる。
『やっと気持ちを伝えられるね』
『うん!』
殆どが女子の嬉し泣きだ。
今までキッカケすら掴めずに胸の内に秘めていたのだろう気持ちを言える機会か。
確かにそういう生徒も多いだろう。
「そして今から皆で理想のカップルを考えられる限り書いて貰って1番多い組み合わせの人達はカップルになる」
そういう事か、俺が嫌われる作戦も意味がないって事か。
この投票から俺とフミカが結ばれる事は絶対ない。
「言っておくけど、理想のカップルは学校生活中はずっとカップルで別れたら退学だよ」
何言ってるんだ、コイツ。
「だってそうだろ? 不純異性交友だって認める事になるじゃないか、でもだからこそ言おう!」
イケメン君はマイクを握りしめると。
『桜木文香さん! 僕は貴女がずっと好きでした』
これで集会を終わりますとイケメン君は言うとそそくさと舞台の端にフェードアウトして行った。
勉強も運動を出来るイケメン生徒会長。
勉強も運動も性格も顔もスタイルも全てが良いフミカ。
確かに相応しいよな、モブが入る余地が無いくらいに。
集会も終わり、教室に帰ると、すぐさま教室を後にする。
カバンを取りに帰った後は各自勝手に帰っていいんだ。
「約束したでしょ」
校門を出る所でフミカから声をかけられる俺。
俺みたいに早く帰る生徒はいない、周りに他の生徒は1人もいない。
フミカからは逃げられないと思い、放課後何をするかフミカに聞く。
「......何するんだ?」
「久しぶりに一緒に帰ろ」
恋愛投票の結果次第でフミカとは最後になるだろう。
最後くらいいいよな。
「いいぞ」
「ほんと!」
フミカは夕焼けの空に似合わない晴れやかな笑顔を俺に向けてきた。
たぶんフミカはイケメン君と付き合う事になる。
そしたらフミカは俺の事なんかすぐに忘れるだろ。
「ねぇ、りょうくん」
「なんだ?」
「りょうくんと帰るなんて久しぶりだし、今日だって挨拶も返してくれた......りょうくんは何時も私がそこにいないみたいに無視するから」
寂しそうに顔をそらすフミカ。
「俺の何処が良いんだよ、お前みたいに成績なんて上位じゃなく平均だし、運動だって」
『全部だよ、優しいし、人の事を考えられるし......』
一緒に帰り道を歩いてるフミカ。
「もういい、分かったから」
三十分ぐらいだろうか、ずっと俺の好きな所をあげられていく、どっからそんなに出てくんの?
「もういいの? まだまだあるよ! じゃあ次は私の質問、何でりょう君は手を抜くの?」
手を抜く?
「勉強だって運動だってりょう君は全部一番になれるのに」
「なれないぞ」
周りの目を気にして目立つ事がないように手を抜いてきた事がバレてるのか?
「私知ってるんだから」
俺ははぐらかすように違う質問をフミカにぶつける。
「お前、告白されてたよな」
「うん、告白されてたね~」
「他人事かよ」
「だってあの恋愛投票おかしいもん」
「何がだ?」
「付き合う人は好きな人がいいのに他人が決めるなんて可笑しいよ」
本当にフミカは子供だな。
「今は誰が好きなんだな?」
「私が好きな人はずっと変わってないよ」
俺の前にスタスタと走り出し、立ち止まるフミカ。
夕焼けのスポットライトをフミカが独占したような風景。
『りょうくんが私の初恋で最後の人だよ』
桜の花びらが風と共に吹き抜ける。
フミカの言葉は嬉しくて、だけど勇気が持てない。
フミカはそんな俺に近づいてくる。
『信じてるよ? 昔みたいに私の王子様でいてね』
耳元で囁いたフミカは俺を置いて家に帰っていった。
いつの間にかフミカの家の前まで来ていたようだ。
残された俺は思う。
どうしろっていうんだよ。
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