傲慢令嬢にはなにも出来ませんわ!

豆狸

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第六話 貧弱な坊やとの再会

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 私、少しやり過ぎたのかもしれませんわ。
 ヤベェのを潰したり従えたりしたときに手伝ってくれていた護衛騎士の美女が、仄暗い笑みを浮かべて呟いているのを聞いてしまったんですの。
 彼女はこう言っていましたわ。

「……ふふふっ。むさ苦しい大男が涙目で哀願して来るのを見るのって、なんて楽しいのかしら」

 ヤベェ性癖を目覚めさせてしまったのでしょうか。
 ま、まあバルデス辺境伯家の騎士団員も魔獣の大暴走スタンピードのときに呼び集める傭兵達もむさ苦しい大男ばかりですし、きっとだれかが彼女の性癖を満たしてくれますわよね!
 旦那様には褒められこそすれ引かれてはいなかったので良いのですわ!

 悪徳商人達に攫われた子ども達も少しずつ見つけて親元へ帰しています。
 残念ながら、私の治癒魔法で治せるのは身体の傷だけです。心の傷も癒せたら良かったのですけれど……
 まあ、とりあえずは二度と奴隷商人達を入り込ませないことからですわね!

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 辺境の女王として活躍する私のもとへフラカソ王太子殿下がいらっしゃいました。
 いいえ、今はもう王太子の座を退かれてただの王子殿下となられています。新しい王太子殿下はフラカソ殿下の年の離れた弟君で、先日私のお兄様の娘と婚約いたしましたわ。
 そもそも王太子殿下のままなら、危険な辺境伯領になどお越しになれませんものね。

「なんのご用ですの、フラカソ殿下」
「……まずは謝罪させてもらいたい」
「婚約破棄への謝罪なら、王家から正式にガルシア侯爵家へいただきましたわ」
「それではない。……君が以前ドロルに言った、平民の身で王太子殿下の寵愛を受けていたら危険な目に遭うかもしれないという言葉は、脅しではなく忠告だったのだな。誤解していた、すまない」

 一度の人生と同じように、ドロルさんの実家の食堂が襲撃されて火を点けられたそうですの。
 やっぱり同じ平民の仕業だったようですわ。
 ドロルさんには殿下の加護の魔法がかけられているから、実行犯は平民だと思っていましたのよ。

 とはいえ貴族は平民を雇えますけれどね。
 実行犯は同じ平民のドロルさんご一家だけが幸せになるのが許せなかった平民の仕業でも、裏には貴族がいて、私が雇った自警団の見回り時間を平民達に教えて犯行を煽ったのではないかしら。
 自分達の理想の王太子を失った怒りに燃える国王派貴族辺りが怪しい気がしますわ。

「それと礼を言わせてくれ。下町の自警団を雇ってドロルと彼女の家族を守っていてくれてありがとう」
「彼女になにかあったときに、私が疑われるのが嫌だっただけですわ」
「君を疑うなんて……いや、そうだな。私は愚かだから……」

 愚かな上に貧弱な坊やですものね、殿下は。

「それで……こんな願いを言える義理ではないとわかってはいるのだが、襲撃犯に両腕を粉々にされたドロルの父君に治癒魔法をかけてやってもらえないだろうか。もちろん無償で働けなどと言う気はない。報酬は私の個人資産から払う」
「……傲慢令嬢の私にはなにも出来ませんんわ」
「それはっ! 本当に私が愚かだったのだ。バルデス辺境伯領に嫁いで数ヶ月でこの地を平定した君に、なにも出来ないなんてことはない。どうかガルシア侯爵家一だと言われる治癒魔法の力でドロルの父君を救ってやって欲しい」

 ドロルさんの幼馴染のイバンという青年が自警団を辞めて料理人修業を始めたそうなのですけれど、父親が虚ろな瞳でぼんやりしているだけで、少しも教えを授けてくれないのですって。

「片腕だけでも良いんだ! 私が、君という婚約者がいながらドロルに心を移したりしなければ、あの一家は幸せに暮らせていたはずなんだ! 私のためではない。どうか彼らのために慈悲を……」
「無理ですわ」

 殿下は真っ青な顔になって俯きましたわ。
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