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第四話 王太子エウスタティオス
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「クリサフィスは本当に王位継承権を放棄して、この国から出て行ったのですか? こんなときに?」
エウスタティオスは目を丸くして、父である国王に尋ねた。
国王は重々しく頷く。
「そうだ。お前の叔父、大公から正式に絶縁届も出されている」
「……そんな。カシアとの婚約破棄に怒ることは最初から予想していたので国外に追いやったが、最終的にはいつものように私に味方してくれるものだと思っていたのに」
エウスタティオスは肩を落とした。
フォトプロス侯爵令嬢カシアと婚約を破棄して早数ヶ月。
彼の真実の愛の相手フィズィの実家であるペルサキス伯爵家は、運営している商会の活躍によって王国に繁栄をもたらしたとして侯爵に陞爵されていた。そして先日、目出度くエウスタティオスとフィズィの婚約が正式に結ばれたのだが──
「フィズィが亡くなった今、私はだれを支えに生きていけば良いのでしょう」
エウスタティオスの新しい婚約者は婚約を公表した翌日に冷たくなっていた。
フィズィは健康だった。カシアのように顔色が悪いことも手足が棒のようにやつれ果てていることもなかった。
王太子の婚約者という立場に対する妬みややっかみを受けて心を病んだとしても早過ぎる。それに、王太子を狙う恋敵になりかねない学園の同世代はみな彼女を祝福していた。
「父上。やはりカシアの呪いなのではないでしょうか。フィズィの死の後でヴァトラフォス大神官が自害なさったのも、あの女がなにかを……」
国王は溜息をついて、首を横に振った。
「エウスタティオスよ。ヴァトラフォス大神官がいなくなったために神聖アゲロス教国の聖王猊下にお願いした、ペルサキス侯爵令嬢の死因についての調査結果が届いている」
「本当ですか! 聖王はなんと?」
聖王や大神官は女神の加護を受け、邪悪を察して浄化する力を持っていると言われていた。
今はまだ最愛のひとり息子に、国王は答える。
「ペルサキス侯爵令嬢を呪い殺したのはペルサキス侯爵令嬢だ」
思ってもいなかった返答に、エウスタティオスは言葉に窮した。
エウスタティオスは目を丸くして、父である国王に尋ねた。
国王は重々しく頷く。
「そうだ。お前の叔父、大公から正式に絶縁届も出されている」
「……そんな。カシアとの婚約破棄に怒ることは最初から予想していたので国外に追いやったが、最終的にはいつものように私に味方してくれるものだと思っていたのに」
エウスタティオスは肩を落とした。
フォトプロス侯爵令嬢カシアと婚約を破棄して早数ヶ月。
彼の真実の愛の相手フィズィの実家であるペルサキス伯爵家は、運営している商会の活躍によって王国に繁栄をもたらしたとして侯爵に陞爵されていた。そして先日、目出度くエウスタティオスとフィズィの婚約が正式に結ばれたのだが──
「フィズィが亡くなった今、私はだれを支えに生きていけば良いのでしょう」
エウスタティオスの新しい婚約者は婚約を公表した翌日に冷たくなっていた。
フィズィは健康だった。カシアのように顔色が悪いことも手足が棒のようにやつれ果てていることもなかった。
王太子の婚約者という立場に対する妬みややっかみを受けて心を病んだとしても早過ぎる。それに、王太子を狙う恋敵になりかねない学園の同世代はみな彼女を祝福していた。
「父上。やはりカシアの呪いなのではないでしょうか。フィズィの死の後でヴァトラフォス大神官が自害なさったのも、あの女がなにかを……」
国王は溜息をついて、首を横に振った。
「エウスタティオスよ。ヴァトラフォス大神官がいなくなったために神聖アゲロス教国の聖王猊下にお願いした、ペルサキス侯爵令嬢の死因についての調査結果が届いている」
「本当ですか! 聖王はなんと?」
聖王や大神官は女神の加護を受け、邪悪を察して浄化する力を持っていると言われていた。
今はまだ最愛のひとり息子に、国王は答える。
「ペルサキス侯爵令嬢を呪い殺したのはペルサキス侯爵令嬢だ」
思ってもいなかった返答に、エウスタティオスは言葉に窮した。
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