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第一話 婚約破棄
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私の婚約者のブルーノ伯爵家のご子息カストロ様は足を怪我して、一ヶ月ほど自宅で療養なさっていました。
療養の甲斐あって回復したので、この国の貴族子女が通う学園に今日から戻られたと聞いていましたが、ふたつ年上の彼とは学年と学科が違うのでまだお顔は拝見していません。
案じる私の教室にカストロ様のご友人のネメジ様が来て、昼休みにカストロ様が中庭で待っていると教えてくださいました。ネメジ様はカストロ様と同じ騎士科の方なのです。
「スザンナったら、そんな嬉しそうな顔しちゃって。相手はビアンキ伯爵家へ入り婿予定のくせに、下町の酒場女と浮気している莫迦男なのよ?」
いそいそと中庭へ向かおうとした私を心配したのか、親友のコスタ侯爵令嬢サーラ様がそんなことをおっしゃりながら同行してくださいました。
言われた通り、ブルーノ伯爵家次男のカストロ様はビアンキ伯爵家のひとり娘である私のところへ婿に入る予定です。
なのに私が学園に入学してしばらくしたころ、騎士科の方々と行った下町の酒場で働く女性デモネさんと恋に落ちたのです。
「あの女性と別れると言ってくださるのかもしれませんわ」
「どうかしらね。この一ヶ月、貴女の見舞いは拒んでいたんでしょう? 学園の階段から落ちて運ばれている途中で叫んでいたように、今も貴女に突き落とされたのだと思い込んでいるのかもしれなくてよ?」
カストロ様が足に怪我をしたのは、学園の階段から落ちたからです。
学園の制服を着た、私と同じ色の髪の女生徒に突き落とされたのだとおっしゃいました。
その時間の私はサーラ様と一緒にいました。
サーラ様に証言していただきましたので、もう誤解は解けていると思うのですけれど……彼を突き飛ばした女生徒は今も見つかっていないようです。
おそらく故意に突き飛ばしたのではなく、偶然ぶつかっただけだったのでしょう。
カストロ様が階段を落ちて足を怪我したと聞いて、恐ろしくて名乗り出られなくなったのではないでしょうか。
私とカストロ様の婚約は、ビアンキ伯爵家とブルーノ伯爵家が共同事業をおこなっていることから結ばれた政略的なものです。当主である父親同士が同世代で親友だったこともあります。
でもそんな事情とは関係なく、私はカストロ様に恋をしました。
あの日、花畑で私を守ってくださった彼は、どんな物語に出てくる騎士よりも凛々しく勇ましかったのです。
「スザンナ!」
中庭に着くと、中央の噴水のところにカストロ様がいらっしゃいました。
彼の隣には申し訳なさそうな顔をしたネメジ様もいます。
一ヶ月ぶりに名前を呼ばれて頬が緩んだ私に、カストロ様が宣言なさいます。
「俺は君との婚約を破棄する! 俺の心はデモネのものなんだ。それを理解せず、俺を殺して独占しようとするような恐ろしい女とは婚約していられない。政略結婚だと言われても無理だ!」
「……カストロ、様?」
療養の甲斐あって回復したので、この国の貴族子女が通う学園に今日から戻られたと聞いていましたが、ふたつ年上の彼とは学年と学科が違うのでまだお顔は拝見していません。
案じる私の教室にカストロ様のご友人のネメジ様が来て、昼休みにカストロ様が中庭で待っていると教えてくださいました。ネメジ様はカストロ様と同じ騎士科の方なのです。
「スザンナったら、そんな嬉しそうな顔しちゃって。相手はビアンキ伯爵家へ入り婿予定のくせに、下町の酒場女と浮気している莫迦男なのよ?」
いそいそと中庭へ向かおうとした私を心配したのか、親友のコスタ侯爵令嬢サーラ様がそんなことをおっしゃりながら同行してくださいました。
言われた通り、ブルーノ伯爵家次男のカストロ様はビアンキ伯爵家のひとり娘である私のところへ婿に入る予定です。
なのに私が学園に入学してしばらくしたころ、騎士科の方々と行った下町の酒場で働く女性デモネさんと恋に落ちたのです。
「あの女性と別れると言ってくださるのかもしれませんわ」
「どうかしらね。この一ヶ月、貴女の見舞いは拒んでいたんでしょう? 学園の階段から落ちて運ばれている途中で叫んでいたように、今も貴女に突き落とされたのだと思い込んでいるのかもしれなくてよ?」
カストロ様が足に怪我をしたのは、学園の階段から落ちたからです。
学園の制服を着た、私と同じ色の髪の女生徒に突き落とされたのだとおっしゃいました。
その時間の私はサーラ様と一緒にいました。
サーラ様に証言していただきましたので、もう誤解は解けていると思うのですけれど……彼を突き飛ばした女生徒は今も見つかっていないようです。
おそらく故意に突き飛ばしたのではなく、偶然ぶつかっただけだったのでしょう。
カストロ様が階段を落ちて足を怪我したと聞いて、恐ろしくて名乗り出られなくなったのではないでしょうか。
私とカストロ様の婚約は、ビアンキ伯爵家とブルーノ伯爵家が共同事業をおこなっていることから結ばれた政略的なものです。当主である父親同士が同世代で親友だったこともあります。
でもそんな事情とは関係なく、私はカストロ様に恋をしました。
あの日、花畑で私を守ってくださった彼は、どんな物語に出てくる騎士よりも凛々しく勇ましかったのです。
「スザンナ!」
中庭に着くと、中央の噴水のところにカストロ様がいらっしゃいました。
彼の隣には申し訳なさそうな顔をしたネメジ様もいます。
一ヶ月ぶりに名前を呼ばれて頬が緩んだ私に、カストロ様が宣言なさいます。
「俺は君との婚約を破棄する! 俺の心はデモネのものなんだ。それを理解せず、俺を殺して独占しようとするような恐ろしい女とは婚約していられない。政略結婚だと言われても無理だ!」
「……カストロ、様?」
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