KAGUYA―月と時の交錯-

霧子ノア

文字の大きさ
3 / 36

第3話:交錯する出会い ― カナタ章 ―

しおりを挟む
朝日が薄く差し込む、廃墟の街。
翼竜の群れが迫る中、カナタは静かに息を整えた。
月神殿で選ばれし治癒者――月神子として、使命を胸に、現場へと急いでいく。

遠隔治療では間に合わない。
冷静に状況を見渡した。

瓦礫に囲まれた火地区の工場跡を抜け、風地区側の通信塔の影を駆け抜ける。
目の前の裂け目からは、かすかに淀んだ空気が漂っていた。

◇◇◇
通報のあった地区は、火地区と風地区の境界付近。

この世界では、かつて精霊信仰に基づいて分けられた四地区、火・土・風・水が小神殿を中心に統治されている。
月神殿は精神・身体の治療を、太陽神殿は政治・行政を担当していた。
月神暦げっしんれき2053年の大地震を境に、空間に裂け目が生じ、翼竜が初めて目撃された。

当初は秘匿されていたが、2065年以降、更に裂け目と被害は急増。
すでに“隠すことができない事態”へと変わっていた。
◇◇◇

現場に到着すると、すでに指揮を執る青年、服部が立っていた。
軍服に身を包み、若さに反して落ち着いた空気を放つ。

「月神子か。俺は前を固める。君は民間人の援護を頼む」

服部の視線は現場を見渡しつつ、鋭い視線で評価するように見つめた

「はい、援護します」

静かにそう答える。
そして、手に力を集めると光が放たれ、瓦礫に挟まれた怪我人が瞬時に癒されていく。

二人は自然と息を合わせる。
服部は防衛と指揮、カナタは援護と治療。
互いの役割が自然に連携していく。

任務が落ち着くと、少年らしい一面が顔をのぞかせる。
瓦礫の片隅で小さく息をつき、服部を見上げる。

「……思ったより、君は頼りになるんですね」

カナタの言葉に服部は一瞬驚いたように見つめたが、すぐに、にやりと口元を緩めて言った。

「指揮官だからな」

「……次はもっと早く助けに来てほしいものです」
と、カナタは少しふてくされるように答え、くすっと笑った。

その一瞬、冷静な月神子と少年らしい素直さが交差する。
カナタの顔には微かな笑みが浮かんでいた。

任務の後のわずかな時間、カナタは思い出す。

◆◆◆
薄明かりの中、霧子と広場で行った早朝訓練——

「カナタ、今日は少しだけ練習してみよっか」

微かに光が指先に集まる感覚。
必要以上に力を使わず、最小限の光で最大の効果を発揮する。

霧子は離れて記録を取りながら見守る。
必要なときだけ力を使えばいいと優しく告げた。
その言葉が、今の任務で冷静に力を扱うカナタの支えになっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...