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第3話:交錯する出会い ― 服部章 ―
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建物の奥から、助けを求める人々の泣き叫ぶ声が途切れ途切れに響く。
服部は部隊へ指示を飛ばしつつ、崩れた市街地の状況を見極めていた。
胸元の軍端末が微かに震え、上層部からの連絡要請が届いた。
(こんな時に限って……)
任務は三つ
——救助、殲滅、そして
——月神子カナタの力を随時観察し、必要なら記録を提出せよ。
その指令を思い返し、服部は小さく舌打ちした。
裂け目付近では濁った空気が渦を巻き、翼竜の群れが再び高度を取りながら旋回している。
指令と任務の重圧が息を詰まらせる。
背後で淡い光が揺らいだ。
振り向くと、カナタが崩れた梁を押さえ、民間人を外へ誘導していた。
力を使うたびに、その周囲だけ空気が澄んで見えた。
……だが、それは他の月神子とはどこか違っていた。
(上層部は、他の月神子にはない、この光の正体を知りたがっている……)
その時、翼竜がカナタめがけて急降下した。
「下がれ、月神子!」
服部は即座に走り出し、爪がカナタを捉える直前、刃を滑らせて軌道を逸らした。
衝撃で肩に痛みが走るが、踏みとどまった。
背後で、カナタの放つ淡い光が揺らめき、服部の肩を優しく包む。
「だから言ったんです、無理しないでください……服部」
カナタの声はわずかに震えていた。
服部は息を整えつつ、短く返す。
「助かった」
カナタはほっと表情を緩める。
「私の方こそ助かりました」
「まったく、お前も気をつけろよ」
無事なカナタを、ほっと見つめ返した。
(こんな優しい少年を、“観察対象”って……どういうことだ)
建物の奥から再び悲鳴が上がった。
二人は目を合わせ、すぐに駆けだす。
夜の静けさが戻り、街にはもう翼竜の影は消えていた。
二人の間に、確かな信頼が生まれつつある時だった。
だが服部の中では、別の疑問が湧いていた。
(確かにあの力は普通の月神子とは違う……
あの光の揺れ方、ただの治癒の範疇じゃない)
(……君の中に、一体何がある?)
視線を遠くに移すと、裂け目が淀んだ空気とともに、心臓のように脈打っていた。
服部は軍端末を握りしめ、一つの報告を胸の中に押しとどめる。
(……今は、まだその時期じゃない)
服部は部隊へ指示を飛ばしつつ、崩れた市街地の状況を見極めていた。
胸元の軍端末が微かに震え、上層部からの連絡要請が届いた。
(こんな時に限って……)
任務は三つ
——救助、殲滅、そして
——月神子カナタの力を随時観察し、必要なら記録を提出せよ。
その指令を思い返し、服部は小さく舌打ちした。
裂け目付近では濁った空気が渦を巻き、翼竜の群れが再び高度を取りながら旋回している。
指令と任務の重圧が息を詰まらせる。
背後で淡い光が揺らいだ。
振り向くと、カナタが崩れた梁を押さえ、民間人を外へ誘導していた。
力を使うたびに、その周囲だけ空気が澄んで見えた。
……だが、それは他の月神子とはどこか違っていた。
(上層部は、他の月神子にはない、この光の正体を知りたがっている……)
その時、翼竜がカナタめがけて急降下した。
「下がれ、月神子!」
服部は即座に走り出し、爪がカナタを捉える直前、刃を滑らせて軌道を逸らした。
衝撃で肩に痛みが走るが、踏みとどまった。
背後で、カナタの放つ淡い光が揺らめき、服部の肩を優しく包む。
「だから言ったんです、無理しないでください……服部」
カナタの声はわずかに震えていた。
服部は息を整えつつ、短く返す。
「助かった」
カナタはほっと表情を緩める。
「私の方こそ助かりました」
「まったく、お前も気をつけろよ」
無事なカナタを、ほっと見つめ返した。
(こんな優しい少年を、“観察対象”って……どういうことだ)
建物の奥から再び悲鳴が上がった。
二人は目を合わせ、すぐに駆けだす。
夜の静けさが戻り、街にはもう翼竜の影は消えていた。
二人の間に、確かな信頼が生まれつつある時だった。
だが服部の中では、別の疑問が湧いていた。
(確かにあの力は普通の月神子とは違う……
あの光の揺れ方、ただの治癒の範疇じゃない)
(……君の中に、一体何がある?)
視線を遠くに移すと、裂け目が淀んだ空気とともに、心臓のように脈打っていた。
服部は軍端末を握りしめ、一つの報告を胸の中に押しとどめる。
(……今は、まだその時期じゃない)
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