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第10話:代償の光― 服部章 ―
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夜明け前の街は静まり返り、遠くで緊急サイレンが鳴り響く。服部は現場指揮に集中しながらも、カナタの動きを見逃さない。
――出力が高すぎる
昨日の裂け目対応での光の力、そして今、目の前で放たれる光の壁。確かに元々普通の月神子の動きではない。だが、今日は違う。すべてに違和感がある。
「もう限界だ、下がれ!」
自身の声が響く。だがカナタは、小さく大丈夫だと返事するだけだった。
光が裂け目を封じ、瓦礫を浮かせ、市民を守る。服部は援護射撃と周囲の安全確認を行いながら、カナタの手足や呼吸の微細な動きを見守る。体のバランスが乱れ続ける。
瞬間、膝から力が抜けたのを見逃さなかった。
――限界じゃないか
咄嗟に飛び込み、抱き留める。華奢な体が頼りなさを強く感じさせる。だがその中に、底知れない力を秘めている。腕の中でカナタの意識が薄れてゆく。
「大丈夫だ、カナタ。民間人たちは無事だ……もう十分だ」
少年は微笑み、わずかに安心した様子を見せる。服部の胸には単なる観察任務ではなく、守るべき存在としての覚悟が芽生えていた。
――上層部の命令は観察だけ……だが、現場で出会ってしまった以上、単なる観察対象じゃない。
その瞬間、緊急帰還命令が届き、タイミングの不自然さに眉をひそめる。普通の月神子ではありえない、監視しているかのようなこのタイミング。
単なる観察対象者というだけでは説明できない。
……やはり、この子はただの月神子じゃない
服部は疑念を胸に、医療区へと急いだ
医療区の明かりが視界に入り、すでに準備を整えた医療班がカナタを受け入れた。
服部は、呼吸が安定し始めたカナタを見つめ、安堵すると、頭にそっと手を置く。
――この子の力、そして存在そのものが、これからの戦局を左右する……
その時、通信端末が短く鳴る。画面に表示されるのは上層部の連絡。
「月神子の出力状況と任務遂行状況を直ちに報告せよ。必要に応じて、健康状態の評価も添付すること」
上層部の反応に、服部は更なる疑念が芽生えていた。
――なぜ、こんな報告が必要なんだ……
――何を隠しているんだ、上層部は……
ベッドの中で微かに動くカナタを見下ろし、服部の胸に怒りがわずかに湧く。守るべき少年のことを考えれば、命令に従うだけでは納得できない。
「……報告はする。だが、俺はこの子の傍にいる」
通信端末を握りしめ服部は怒りと共に声に出していた。
任務としての観察や報告に対する、上層部への疑念・怒り、そして少年を守る覚悟が入り混じる。
月の光が窓から優しく差し込み、静かにカナタを照らし出す。
その姿をまっすぐに見つめ決意を新たにした。
――俺が守る。街も、市民も、そして……カナタ、お前のことも。必ず。
――出力が高すぎる
昨日の裂け目対応での光の力、そして今、目の前で放たれる光の壁。確かに元々普通の月神子の動きではない。だが、今日は違う。すべてに違和感がある。
「もう限界だ、下がれ!」
自身の声が響く。だがカナタは、小さく大丈夫だと返事するだけだった。
光が裂け目を封じ、瓦礫を浮かせ、市民を守る。服部は援護射撃と周囲の安全確認を行いながら、カナタの手足や呼吸の微細な動きを見守る。体のバランスが乱れ続ける。
瞬間、膝から力が抜けたのを見逃さなかった。
――限界じゃないか
咄嗟に飛び込み、抱き留める。華奢な体が頼りなさを強く感じさせる。だがその中に、底知れない力を秘めている。腕の中でカナタの意識が薄れてゆく。
「大丈夫だ、カナタ。民間人たちは無事だ……もう十分だ」
少年は微笑み、わずかに安心した様子を見せる。服部の胸には単なる観察任務ではなく、守るべき存在としての覚悟が芽生えていた。
――上層部の命令は観察だけ……だが、現場で出会ってしまった以上、単なる観察対象じゃない。
その瞬間、緊急帰還命令が届き、タイミングの不自然さに眉をひそめる。普通の月神子ではありえない、監視しているかのようなこのタイミング。
単なる観察対象者というだけでは説明できない。
……やはり、この子はただの月神子じゃない
服部は疑念を胸に、医療区へと急いだ
医療区の明かりが視界に入り、すでに準備を整えた医療班がカナタを受け入れた。
服部は、呼吸が安定し始めたカナタを見つめ、安堵すると、頭にそっと手を置く。
――この子の力、そして存在そのものが、これからの戦局を左右する……
その時、通信端末が短く鳴る。画面に表示されるのは上層部の連絡。
「月神子の出力状況と任務遂行状況を直ちに報告せよ。必要に応じて、健康状態の評価も添付すること」
上層部の反応に、服部は更なる疑念が芽生えていた。
――なぜ、こんな報告が必要なんだ……
――何を隠しているんだ、上層部は……
ベッドの中で微かに動くカナタを見下ろし、服部の胸に怒りがわずかに湧く。守るべき少年のことを考えれば、命令に従うだけでは納得できない。
「……報告はする。だが、俺はこの子の傍にいる」
通信端末を握りしめ服部は怒りと共に声に出していた。
任務としての観察や報告に対する、上層部への疑念・怒り、そして少年を守る覚悟が入り混じる。
月の光が窓から優しく差し込み、静かにカナタを照らし出す。
その姿をまっすぐに見つめ決意を新たにした。
――俺が守る。街も、市民も、そして……カナタ、お前のことも。必ず。
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