ファムファタール

仏白目

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「お父様!私の侍女からミシェルを外してください!いいえ!この家から追い出してください!」

 ここは侯爵家ロザリンド家の当主執務室

 エリック.ロザリンド侯爵は仕事がひと段落したところで、お茶を用意させて寛いでいる所だった

 そこへ、長女のアナベラが令嬢らしからぬ態度と声を荒げて執務室に訪れた

「一体どうしたんだ!アナベラ!」

 エリックには3人の子供がいる 18歳の長女のアナベラ 16歳の次女のキャサリン 14歳の長男のシルベスタ 

 長女であるアナベラはしっかり者で、侯爵家の自慢の娘だ 美しく教養もあり落ち着いている、そんな自慢の娘が声を荒げている姿など今まで一度も見た事が無かった

「ミ、ミシェルが、誘惑したんです!きっとそうよ、でなければあんな事 あ、あんな事セイン様が言うはずないわ!」

「アナベラ少し落ち着きなさい、何があったのか説明してくれないと、わからないよ?ほら そこに座ってお茶を飲んで」

 執事が手際よく、アナベラの前に紅茶を用意する

 深呼吸をした後、紅茶を一口飲んで、アナベラは話しだした

「今日はセイン様とのお茶会でしたの」

 アナベラの婚約者セイン.ランバード公爵は現国王の王弟である 24歳とアナベラと歳は離れているが、子供のころからのアナベラの憧れの君であった

「ああ、聞いているよ、朝食の時に公爵家に今日はミシェルを侍女として連れて行くと言っていたよね?あの娘が何かしたのかい?」

「セイン様とはいつものように、来月に挙げる結婚式の話から新婚旅行の話までとても楽しく話していたんです、彼方のメイドが一杯目のお茶を淹れてくれたので、私はミシェルの淹れてくれるお茶も美味しいのですよと勧めてみたんです」

「ああ、確かにミシェルの淹れてくれるお茶は美味しいな」

「ええ、我が家で家族みんなが美味しいと言うお茶を是非と、勧めたんです」

 うっ、うっ、とアナベラは啜り泣きだした

「・・・それで? しっかりしなさいアナベラ!」


「うっ、うっ、うっ、 う、うぁーん 」


「・・話しにならんな、ジュリアを呼んでくれ ! それとアリアにも急いでここに来るよう伝えてくれ!」

 ジュリアはアナベラ専属の侍女で嫁ぎ先にも行く事になっている、ロザリンド侯爵家に長年使えている侍女だ、

 ミシェルはアリア.ロザリンド侯爵夫人の遠縁にあたる子爵家の娘で、関係は夫人の妹の嫁ぎ先のアーマンディ伯爵の弟のコールズ子爵の娘で・・・

 要するに血の繋がりはない遠い親戚にあたる 

 子爵家はミシェルの兄が継ぐ、そう裕福では無い子爵家の足元をみてミシェルにくる釣書は後家や好ましくない男性が目につき、気の毒に思った妹から侯爵夫人にお願いされた経由がある

「高位貴族家で侍女をして行儀見習いを学び、高位貴族家で仕事が出来れば良縁に恵まれるかもしれないわ、いい娘なのよ、お姉様お願い」

 ミシェルに会って見れば小柄な大人しい真面目な子だった、2年前の14歳の時に親元を離れこのロザリンド侯爵家に行儀見習いとしてやってきた、 最低限のマナーは出来ていたが、高位貴族のマナーはこの家に来てから身につけた、ミシェルは控えめだが朗らかな性格で3人の子供達とも仲良くやっていた、とくにアナベラはミシェルの事を気に入ってよく侍女のジュリアと一緒に連れて行動をしていた






「あなた、どうされたの?」

 怪訝な表情で妻のアリアは執務室に入ってくるなり、泣きじゃくるアナベラを見て驚く

「アナベラ? これは一体どうしたのです?」

「ああ、私にもよく分からないんだ、これから何があったのかジュリアに聞こうと思う」

「ああ、こんなに泣いて可哀想に・・」

 アリアは慰めるように、アナベラの横に座り背中をさすった



「失礼します、旦那様ジュリアです お呼びでしょうか?」

「ああ、ジュリアすまないね、アナベラがあの調子でね」

(ソファに突っ伏し泣いているアナベラを指さす)

「お、お嬢様?」 

 ジュリアは急いで駆け寄ろうとするが、

「ああ、そのままにして置いていいから、こちらに来なさい、今日のセイン公爵との交流には君もその場に?」

 ジュリアは侯爵の前に来ると、

「はい、ミシェルと共に少し離れて待機しておりました」

「アナベラとミシェルの間に何があったか
 話してくれないか?」

「は、はい・・・私が見たことを話しますが・・」

 ジュリアはアナベラの方を見て戸惑っている

「ああ、それでいい 気にしないで話しなさい」

「はい・・・ セイン公爵様とアナベラ様が公爵家のガーデンテラスでお茶をご一緒に楽しんでおられました、一杯目のお茶を飲み終わる頃アナベラ様がセイン公爵様にミシェルの淹れたお茶は美味しいのですよ、と言われてミシェルが2杯目のお茶を入れる事になりました。」

「それで?」

「はい、そしてミシェルがお茶を淹れて お二人にお出しして、それを飲んだ公爵様が これは素晴らしいとミシェルを褒めておりました」

「ほう?それで?」

「えっと・・公爵様がミシェルを呼んで 
 手に・・口づけを落として・・見つめた後にアナベラ様に・・彼女を娶りたいと・・これは運命だと申しておりました 」

「なっ!なんだと?どういう事なんだ?」

「アナベラ様も、一体どうしたのですと、公爵様に問いましたが、相手にされませんでした、ミシェルを愛おしげに見つめる公爵様を見て 怒ったアナベラ様はミシェルの頬を打ちました・・そ、それで公爵様は激しく怒り、君とは結婚は出来ない そんな乱暴者を妻にする気はない!と叫ばれました」


「一体なぜそんなことに,・・・それで
 ミシェルは今どこに?」

「そ、それは・・」

「言いなさい!」

「お、おそらく まだ、公爵邸にいるのではないかと・・・」

「まさか、置いて帰って来たのか?」

「・・はい、とにかくお嬢様を追いかけて私も馬車に乗り込み すぐに出発したので一緒に連れて帰ってこれませんでした」

「直ぐに迎えをだしなさい!」

「はい、それは侯爵家に着いて直ぐに執事に話して迎えに行く手配はしましたので、
 もうしばらくしたら帰ってくると思います」

「・・・そうか、ミシェルには可哀想な事を・・」


「うっ、うっ、お,お父様はミシェルの・・うっ、心配をして‼︎私の事はあああ、はぁ、はぁ、ひ、ひどいわぁー」 


「アナベラ!そうでは無いだろう?
 何があったのか、泣いていないで話しなさい」


「う、う、ミ,ミシェルが!セイン様に何が囁いたのです!お茶を淹れた時、彼に何か話しかけたのを私は見たわ!
それからよ、セイン様が、セ、セイン様が
あ,あんな事を言いだして、あ,あんな目でミシェルを見つめてぇ、う、う、う、」


「何を言ったんだミシェルは?」

「きっと、セ,セイン様を誘惑したに違いないわ!許さない!絶対許さないんだからぁぁぁ」


アナベラの変貌ぶりにそこにいる者たちは戸惑うばかり、

娘の言うようにミシェルがセインを誘惑したとして、16歳の子娘が24歳の公爵相手に囁く程度の短い言葉で相手を誘惑できるとは到底信じられない


「ジュリアはその時ミシェルの言った言葉は聞こえていたのか?」


皆んなの視線をジュリアは集めて、緊張してしまう

ゴホンッと咳払いをして、ジュリアは話しだした

「・・はい、ミシェルの直ぐそばでお茶の準備の手伝いをしていたので 聞こえていました。」


「ほ、ほら!やっぱり何か誘惑したのよ!」

「あ、いえ・・・ミシェルは、と、と、言っていました・・・」


「・・・・そんな?うそよー」
アナベラは認めないわ!とまた突っ伏して泣きだした


もう、どう言ったらいいのかわからずに、
ロザリンド侯爵、夫人、ジュリアは3人で顔を見合わせたのだった
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