ファムファタール

仏白目

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激情

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その日はミシェルは朝から、そわそわしていた、

この5年の間、公爵家から出た事は無いし、舞踏会に出れるなんて ダンスもセインが手ほどきしてくれて上達できた、その練習でセインとも寄り添えるようになった・・・気がする
体では無く、気持ちが近づく感じ? 

ミシェルは幸せを感じていた



ドレスはセインと合わせて用意した
お互いの髪や瞳の色を取り込んで、宝石もそれに合わせて選んだ

ミシェルからセインに近づいた事で、 最近のセインの執着や独占欲は穏やかになってきていた



王城に早めに向かい、国王と謁見の時間を設けてもらった

「おお、セイン来たか?待っておったぞ、堅苦しい挨拶は無しだ、こっちへ来なさい」

国王とセインは幼い頃から兄弟仲が良く、それは今も変わらない、

「兄上、紹介します 妻のミシェルです」

「ミシェルでございます、ご挨拶が遅くなり申し訳ありませんでした」

「ようやく紹介してくれたな?待っていたぞ?我が弟が惚れこむほどだ、流石に美しい女性だな」

この日王城には1人の魔女が呼ばれていた
今この部屋に魔女は姿を消して存在している 

弟がミシェルに見せる異常なまでの執着を魔法で操られているのでは?と魅了されているのでは無いかと疑っていた。


「そして、息子のセシルです」

「はじめまして、セシルです」ペコリと頭を下げて見せた

「おお、可愛い息子だ、セインの子供の頃にそっくりだな、舞踏会の間は客室の方で遊ぶといい、末の姫と歳も近いから呼んでおこう」

「ありがとうございます、セシル?仲良くあそぶのですよ?」

「はい」

「ふふ、いい子ね」


その後、国王とセインは談笑したあと、舞踏会で会おうと、部屋を後にした


セイン達が退出すると、国王の前に魔女は姿を表して、開口1番に言った


魔法じゃないよ、あの娘に魔力は感じられない」

「そうか・・・」

「ああ、もっとシンプルで、凄いものさ」

「なんだ、それは?」

「国王あんたも感じただろう?」

「いや?」

「まあ、そう言っていられるのもどれくらいか、見ものだね ヒヒっ」

そう言って魔女はスーッと姿を消した





舞踏会が始まり、セインとミシェルはダンスを二曲続けて踊り楽しんでいた、 

「ミシェル 楽しいかい?」

「ええ、子供の頃に憧れた王子様とのダンスみたいだわ」

「何?憧れた王子様?それは兄上か?私か?」

「ふふふ、ちがうわ?絵本の中の王子様よ?」

「なんだ・・」


「ねえ、少し休みましょう?喉が渇いたわ」

二曲目の音楽が終わり、踊りの場から離れると、壁よりの所でミシェルを待たせ、セインは近くにある飲み物を取りに行く、果実水を手に取りミシェルの方に振り向いた時には、ミシェルの側に男性がいて ダンスを誘っているようだった

「まったく、少し離れたらこれだ、油断も隙もない」

ムッとしながらミシェルの側へ戻ろうと歩き出した時だった

ドンッと背中に体当たりされ、鈍く熱い痛みが走り、手に持っていたグラスを床に落とした

「グッぅ!」

「あれは!私の女だ!返して貰うぞ!」

男の大きな声とグラスの割れる音にミシェルや周りの人も気がつく、

そこには床に倒れたセインと血のついたナイフを両手で握りしめ呆然と立つ男がいた

「セイン!セイン!いやよ、しっかりして」

気が付いた者達の悲鳴と、取り押さえろと叫ぶ声が入り混じり会場は騒然としていた

ミシェルは泣きながら、セインの流れ出す血を止めようとドレスの布を押し当て傷口を押さえていた

衛兵が駆けつけ 捉えられた男は何か喚き散らしていたが、ミシェルの耳には入って来なかった 

「セイン、いやよ死なないで」

城の医師達のもとへセインは運ばれて行った

その後の記憶は 倒れてしまったミシェルには無い







ミシェルは気がつくと、ベッドに寝かされていた

血だらけだった ドレスは着替えさせてくれたのだろう、締め付けのない楽な簡素なワンピースを着ている

ベッドから降りて人を探す ドアを開けて見れば兵士が1人

「セインは?セインは何処にいるの?」

兵士と目があい、そう尋ねる

その声を聞きつけた メイドが駆けつけてきてミシェルを部屋に戻した
メイドはガウンをミシェルに羽織らせ話し出す


「ミシェル様 公爵様は今 医師達が懸命に治療しております」

「セインの側に行きたいの」

「はい、勿論でございます ですが、ミシェル様が気がつきましたら国王陛下が話を聞きたいと申しております」

「国王様が・・」

「はい、国王陛下もセイン様の治療されている部屋の側に待機されていますので、まずはそちらに参りましょう」

「ええ」



廊下を歩き たどり着いたそこには、青白い顔をした国王様がソファに腰を下ろしていた

向かい側のソファには 老婆が座っている

何が話している最中だった様子


「国王陛下、ミシェル様をお連れいたしました 」

「ああ、大丈夫かいミシェル?」

「はい、私は大丈夫です、セインは、セインの怪我はどうなんですか?」

「・・・ 傷が深く今夜が山だそうだ」

「そんな、ああセイン・・・」

「君に聞きたい事があったんだ、セインを刺した男だが・・・」

あの時血のついたナイフを両手で握り締める男が、先に目に入り その男の足元にセインが倒れていた 

俯いていた顔をあげて、国王をみると悲痛な顔でミシェルをみていた

「国王様?・・」

「・・ミシェルよ セインを刺したのは、
エリック.ロザリンド侯爵だ、ミシェルを返せと犯行の後も取り調べの最中もその事を主張しているようだ」

ミシェルは信じられなかった、あの血のついたナイフを握っていた男が、ロザリンド侯爵だったというのか?
ショックな出来事でナイフに意識がいき、男の顔は少ししか見ていないが、薄汚れた顔に窪んだ目、身なりは貴族の服装だったが、あれが侯爵様? 

「・・・侯爵様が何故?アナベラ様の事で私を恨んでいたのですか?だから私を返せと・・・」

「ミシェルを返せ、あれは俺の女だ!と何度も繰り返し言っているようだ」

「俺の女?侯爵様がですか? 愛妻家で家庭を大切にされている侯爵様で、私も娘の様に優しくしていただきました でも、そんな俺の女なんて、そんな扱いされていません」

「ああ、そうだろう・・私の中でも侯爵に対する認識はその通りの男だ 優しく真面目で家族を大切にしていた  
それを壊したのは、おかしくしてしまったのは・・セインのアナベラ嬢に対する仕打ちなのかもしれないな・・・」

「・・ああ・・・」

「ただ、きっかけはそれでも・・君に、ミシェルに拘り続けているのは、気味が悪くてな、気が触れているのかも知れないが、

君は養子に入った訳でもなく、セインと一緒になる前の戸籍もコールズ子爵家だ、そこまで、ロザリンド侯爵家が返せというのもおかしな話しで・・・」


「そりゃあ、自分の女として見ているのさ」

ここに来て突然話し出した老婆はさらに、語り出す

「そりゃあ、凄いドロドロとした物だったよ、ちょいとあの男の腹の中を覗いてみたのさ、愛妻家?とんでもないすけべだよ 
14歳のミシェルを見たときに、自分で囲ってその体を好きにもて遊ぶことを考えていたんだ、それを実行する前に攫われちまったもんだから、ありゃ下半身の怨念の塊さ、ひゃっひゃっひゃっ」

老婆のあけすけな言い草に、国王とミシェルは呆気に取られる

「魔女よ、そなた そんな事もできるのか?」

「ああ、私を誰だと思っているんだい?まあ、今回は興味があったから見てやったけど、普通なら別料金上乗せだよ? 」

「後、お前さん面白い魂を持っているね それはそれは面白い だけどそれを持つお前さんが分不相応なんだ、勿体無い!」


「それは、どうゆう事でしょうか?」

「甘いねえ、それをタダで教えろと?」

ミシェルは魔女とのやり取りに戸惑う、

「お金ですか?」

「ひひひ、そんなものじゃ釣り合わないよ
そうさねぇ、ミシェルお前さん私についてくるかい?」

「えっ?」

「無理だろう?無理な事との対価じゃなきゃ、釣り合わないんだよ そーゆー事だ」


そう言って、今そこにいた老婆はふっと、姿を消した


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