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「この国には、魔法を使える人間はほとんどいないんです。だから誰も彼女の呪いに気が付けなかった」
説明するクロードの言葉が聞こえる。
確かに、ヴァランタン王国は魔法とはほぼ無縁の生活をしている国だった。海を隔てた大陸の向こうでは魔法が当然のものとして存在しているらしいのだが、ここで魔法といえば、王家直属の魔法使いが二人いるのと、王宮で使っている魔法で灯されたランタンぐらいのものだろう。市民どころかリュシエルたち貴族の家ですら、魔法の品は置いていない。小さな半島に存在するヴァランタンは、魔法なしの至って原始的な生活を送っていた。
「王宮に魔法使いはいらっしゃらないの?」
「二人います」
「それでこの有様なら、耄碌したか、質が低いかのどちらかですわね。いずれにせよ、首にすることをお勧めしますわ」
苦々しく言いながら、彼女はリュシエルの顔を一通り撫でるように手を動かした。触れた箇所からくすぐったいような、暖かくなっていくような、不思議な感覚が広がっていく。
「……はい、これで大丈夫ですわ。しばらくは元に戻ろうとする反動で、寝込むことになると思うわ。わたくしの見立てだと、三日かしら」
切長の美しい目元が、優しげに微笑んでいる。
「あの、さっきから言っている呪いって……」
そこまで言いかけて、リュシエルの体がぐらりとかしいだ。クロードが慌てて抱き寄せる。
「詳しくは後で話す。今は無理せず、しばらく眠るんだ」
「クロード……様……私は一体……」
突然猛烈な眠気がリュシエルを襲っていた。それ以上何か言うこともできないまま、意識が暗闇にズブズブと沈んでいく。完全に眠りに落ちる前に「もう大丈夫だよ、リュシー」という優しい声を聞いた気がした。
説明するクロードの言葉が聞こえる。
確かに、ヴァランタン王国は魔法とはほぼ無縁の生活をしている国だった。海を隔てた大陸の向こうでは魔法が当然のものとして存在しているらしいのだが、ここで魔法といえば、王家直属の魔法使いが二人いるのと、王宮で使っている魔法で灯されたランタンぐらいのものだろう。市民どころかリュシエルたち貴族の家ですら、魔法の品は置いていない。小さな半島に存在するヴァランタンは、魔法なしの至って原始的な生活を送っていた。
「王宮に魔法使いはいらっしゃらないの?」
「二人います」
「それでこの有様なら、耄碌したか、質が低いかのどちらかですわね。いずれにせよ、首にすることをお勧めしますわ」
苦々しく言いながら、彼女はリュシエルの顔を一通り撫でるように手を動かした。触れた箇所からくすぐったいような、暖かくなっていくような、不思議な感覚が広がっていく。
「……はい、これで大丈夫ですわ。しばらくは元に戻ろうとする反動で、寝込むことになると思うわ。わたくしの見立てだと、三日かしら」
切長の美しい目元が、優しげに微笑んでいる。
「あの、さっきから言っている呪いって……」
そこまで言いかけて、リュシエルの体がぐらりとかしいだ。クロードが慌てて抱き寄せる。
「詳しくは後で話す。今は無理せず、しばらく眠るんだ」
「クロード……様……私は一体……」
突然猛烈な眠気がリュシエルを襲っていた。それ以上何か言うこともできないまま、意識が暗闇にズブズブと沈んでいく。完全に眠りに落ちる前に「もう大丈夫だよ、リュシー」という優しい声を聞いた気がした。
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