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「クロード。お前の王位継承権を剥奪する。そして王太子として、新たにクロードを指名する」
「父上!」
その場が一斉にざわめきたった。固唾を飲んで見守っていたリュシエルも、反射的にクロードを見上げると、彼はまるで最初から全て分かっていたかのように頷いてみせる。
「ハージェス、お前は今後、ただの王子として、国の外れにある離宮へと住まいを移せ。それから、今後はその宮のある領地から離れることは許さない。結婚はしても良いが、お前の子にもまた、王位継承権はないものとする」
それは、事実上の幽閉宣言だった。
(まさか陛下が、こんなにお怒りだったなんて……)
事件が起きてから婚約破棄に至るまで随分と時間がかかったとは思っていたが、どうやらリュシエルだけではなく、国王も裏で激怒していたらしい。あの空白の期間に、王はハージェスに対して完全に見切りをつけてしまったようだ。
「父上、どうか、父上!」
「ーー連れていけ。それから、モルガナ嬢も」
王の命令で騎士が動き出したのを見て焦ったのだろう。ハージェスはぐるりと向きを変えると、血走った目でリュシエルを捕らえ、それからーー
「リュシエル! いやリュシー! 頼むお前からも父上に行ってくれ! ちょっとした行き違いじゃないか? お前は俺に相応しい美人になったし、やり直そうじゃないか! なあ、頼むよ!」
到底正気とは思えない言葉を叫びながら近寄ってくるハージェスの前に、クロードが素早く立ち塞がった。
「やめろハージェス! 馴れ馴れしくリュシエルに近寄るな!」
「邪魔をするなクロード! リュシーと話をさせろ! そうすればきっと彼女はーー」
「……私は」
庇ってくれたクロードの腕をそっと押しやり、目で大丈夫だと合図をすると、リュシエルはハージェスを真っ直ぐ見据えた。その態度にハージェスが狼狽える。
「もし、ハージェス様が私のことをスナギツネと言ってくれなかったら、私は真実の愛に気づくことができませんでした。だから私は、スナギツネの私を愛してくれた、クロード様と幸せになりたいと思います。ハージェス様、今までありがとうございました。どうぞお幸せに」
そう言ってにっこりと笑ってみせた。それはリュシエルにできる、精一杯の仕返しだった。
「だ、そうだ。お引き取り願おうか兄上」
「な……! こ、この俺がせっかく……! リュシエル! スナギツネの癖に!」
なおも喚き続けるハージェスは、やってきた騎士達に半ば引きずられるようにして連れて行かれた。呆然としていたモルガナもいつの間にか退出しており、騒ぎの元凶が消えると、王はまた大きなため息をついた。
「……クロードよ」
「はっ」
「此度の働きに感謝する。それから、今後は王太子として、次期国王としてよく務めるのだ」
「かしこまりました」
「それから、リュシエル・ベクレル侯爵令嬢よ」
「は、はい!」
緊張で、思わず声がうわずってしまったが、王は優しく微笑んでくれた。その目元がクロードにそっくりで、不躾にもかかわらずついじっと見つめてしまう。
「長い間、そなたにも迷惑をかけた。親心ゆえに、そなたを無理にハージェスと添い遂げようとさせたこと、ハージェスの暴走を止められなかったこと、悪かったと思っている。……許してくれるか」
「もちろんでございます。私は陛下にお仕えする身ですから」
「そうか。……ならば、これからはクロードのことを支えてやってくれ。未来の王妃として」
「はい、喜んで」
リュシエルは恭しく頭を下げた。その姿に周りから、自然と拍手が溢れる。ーーこうしてリュシエルは、再び『王太子の婚約者』として、ヴァランタン王国に返り咲いたのだった。
「父上!」
その場が一斉にざわめきたった。固唾を飲んで見守っていたリュシエルも、反射的にクロードを見上げると、彼はまるで最初から全て分かっていたかのように頷いてみせる。
「ハージェス、お前は今後、ただの王子として、国の外れにある離宮へと住まいを移せ。それから、今後はその宮のある領地から離れることは許さない。結婚はしても良いが、お前の子にもまた、王位継承権はないものとする」
それは、事実上の幽閉宣言だった。
(まさか陛下が、こんなにお怒りだったなんて……)
事件が起きてから婚約破棄に至るまで随分と時間がかかったとは思っていたが、どうやらリュシエルだけではなく、国王も裏で激怒していたらしい。あの空白の期間に、王はハージェスに対して完全に見切りをつけてしまったようだ。
「父上、どうか、父上!」
「ーー連れていけ。それから、モルガナ嬢も」
王の命令で騎士が動き出したのを見て焦ったのだろう。ハージェスはぐるりと向きを変えると、血走った目でリュシエルを捕らえ、それからーー
「リュシエル! いやリュシー! 頼むお前からも父上に行ってくれ! ちょっとした行き違いじゃないか? お前は俺に相応しい美人になったし、やり直そうじゃないか! なあ、頼むよ!」
到底正気とは思えない言葉を叫びながら近寄ってくるハージェスの前に、クロードが素早く立ち塞がった。
「やめろハージェス! 馴れ馴れしくリュシエルに近寄るな!」
「邪魔をするなクロード! リュシーと話をさせろ! そうすればきっと彼女はーー」
「……私は」
庇ってくれたクロードの腕をそっと押しやり、目で大丈夫だと合図をすると、リュシエルはハージェスを真っ直ぐ見据えた。その態度にハージェスが狼狽える。
「もし、ハージェス様が私のことをスナギツネと言ってくれなかったら、私は真実の愛に気づくことができませんでした。だから私は、スナギツネの私を愛してくれた、クロード様と幸せになりたいと思います。ハージェス様、今までありがとうございました。どうぞお幸せに」
そう言ってにっこりと笑ってみせた。それはリュシエルにできる、精一杯の仕返しだった。
「だ、そうだ。お引き取り願おうか兄上」
「な……! こ、この俺がせっかく……! リュシエル! スナギツネの癖に!」
なおも喚き続けるハージェスは、やってきた騎士達に半ば引きずられるようにして連れて行かれた。呆然としていたモルガナもいつの間にか退出しており、騒ぎの元凶が消えると、王はまた大きなため息をついた。
「……クロードよ」
「はっ」
「此度の働きに感謝する。それから、今後は王太子として、次期国王としてよく務めるのだ」
「かしこまりました」
「それから、リュシエル・ベクレル侯爵令嬢よ」
「は、はい!」
緊張で、思わず声がうわずってしまったが、王は優しく微笑んでくれた。その目元がクロードにそっくりで、不躾にもかかわらずついじっと見つめてしまう。
「長い間、そなたにも迷惑をかけた。親心ゆえに、そなたを無理にハージェスと添い遂げようとさせたこと、ハージェスの暴走を止められなかったこと、悪かったと思っている。……許してくれるか」
「もちろんでございます。私は陛下にお仕えする身ですから」
「そうか。……ならば、これからはクロードのことを支えてやってくれ。未来の王妃として」
「はい、喜んで」
リュシエルは恭しく頭を下げた。その姿に周りから、自然と拍手が溢れる。ーーこうしてリュシエルは、再び『王太子の婚約者』として、ヴァランタン王国に返り咲いたのだった。
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