『アンダーワールド・続編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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続編 龍神

悪霊に挟まれて

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次の休憩所までは向井が運転し、

新田が助手席についた。

空が明るくなりはじめ、

天候も崩れることなく気持ちがいい。

後ろでは黒谷達が次の休憩所を確認しながら、

楽しそうな声が聞こえる。

向井は微笑むと、

先程の黒谷との会話を思い出していた。


休憩場所への移動中、

「黒谷君には負担になって申し訳ないですね。

車内も狭くなっちゃって」

「えっ? 」

向井の言葉に黒谷が驚いた声をあげた。

「最近は捨て地も祠を綺麗にされているので、

俺達も瞬間移動はできるようになってるんですよ」

「そうなの? 」

「はい。だから車移動でなくてもいいんですけど、

みんなミニ旅行を楽しみたいみたいで」

「なんだ。そんなこと」

黒谷がケラケラと笑った。

「別にいいよ。俺だって楽しいし。

こんな事でもなきゃ、旅行しないでしょ」

「そうですか? 」

「そうだよ。イベントついでに色んな所に立ち寄って、

のんびり地元のもの食べてさ。

こんな生活考えてもいなかったし。

生きててよかった。楽しいって感じるからね」

「それを聞いてホッとしました。

俺達も息抜き出来て、

みんな次は自分がって車の順番待ちなんですよ」

「そうなの? 」

「ほら、牧野君と安達君は指定席でしょ。

だから運転手が交代しながら、

残りが列に並んでます」

二人はそんな話をしながら笑った。


新田は黒地の方角を見ながら、

「この先はさっきと違って、

悪霊が土地全体を覆ってる感じだね」

向井も運転しながら見える黒地に眉をひそめた。

かなり濃い悪霊が渦を巻いている。

捨て地は明るい空が見え始めたというのに、

黒地はどんどんと黒くなっていく。

人が動き出したからだろう。

「これは牧野君の出番だよね」

新田が言いながら笑った。

「弥生ちゃんというスペシャリストがついているので、

思う存分暴れてもらわないと」

二人は後ろから聞こえる牧野のご機嫌な声に笑った。


休憩所に着くと、

二十四時間の温泉があり、

安達が嬉しそうに建物を見ていた。

横の施設ではいちご狩りができるらしい。

予約なしで入れるようで、

既に客が流れていく姿があった。

「俺もやってみたい! 」

のぼり旗を見て安達がいい、

黒谷もトリアと笑顔になった。

「ええ~俺もやりたい~」

牧野がむくれる姿に、

「とっとと終わらせれば出来るわよ。

バーガーも食べたいんでしょ」

弥生が言った。

「そうだよ~ここは牡蠣が美味いんだって。

絶対食べなきゃ」

「だったら四の五の言わずに片付けるよ」

弥生に引きずられ、牧野は黒地に向かった。

「弥生ちゃんは強いよね。

俺でも敵わないからなぁ~」

新田が二人の去る姿を見ながら言った。

「あんなに可愛いのに、戦う戦士なんてアニメの世界だよね」

黒谷がウルウルしながら見ていた。

「黒谷君は弥生ちゃん一筋だね」

キャトルもあきれ顔で笑うと、

「先にいちご狩りする? 」

と安達を見た。

「する~」

興奮している安達に皆は笑うと施設に移動した。


黒地に来た牧野と弥生はその毒の強さに顔を顰めた。

二人はポプリを振ると周囲を浄化させた。

下からも上からも悪霊が人を引きずりこもうと蠢いている。

「よく平気で歩いてるよな」

空中に浮かんだ状態で上から見下ろす。

これ以上飛ぶと悪霊の渦の中に巻き込まれるので、

ぎりぎりのラインで二人は悪霊に挟まれていた。

「これどうする? 」

弥生が状況を見つめながら口を開いた。

歩道も悪霊の手がいくつも動いているのに、

通常に移動している者もいれば、

足を取られ倒れ込む者もいる。

倒れ込んだものは地面から伸びる手に引きずられ、

魂が取り込まれていく。

「このままじゃ、みんな死ぬんじゃねぇ? 」

「………抜け殻は原因不明の心停止として、

死体処理されるでしょう? 」

恐怖に沈んで行く人間を見ながら、

「放っておくわけにもいかないし、

まずはあの一番の問題。

中央に穴を開けよう。

そこから溢れる悪霊を除去して。

出来るでしょ」

「………」

「悪霊が出てきたらこっちも動き出すから、

私はガードが出来なくなる」

そう言って悪霊が踊る空を見上げた。

「………」

「牧野君は強いわよ。そろそろ腹をくくらないとね」

弥生が笑顔で牧野の頭を軽く小突いた。
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