『アンダーワールド・続編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
304 / 659
続編 国の誤算

保護される神

しおりを挟む
「そういや、黒地から逃げてきた人が、

まともな神経じゃ黒地に住めないって言ってたよ。

区役所も移住希望者で忙しいみたい」

黒谷がハマグリの酒蒸しを食べながら言った。

「貧民街や下区から飛ばされた人で、

一時中区もパニックで暴動が起こってたけど、

それも落ち着いてきたから、

捨て地に移れる人が慌てて移住したんだと思うよ。

国の監視が怖くて我慢してた人も多かったみたいだから、

今が逃げるチャンスだったんだろうね」

ディッセが店の冷蔵庫からビールを持ってくると、

「皆も飲むでしょ」

「飲む~」

それぞれに缶を渡した。

「今は上区と特別区の方が大騒ぎしてるよ。

危ない連中で溢れてるからね。

特別区だけ財前に無理やり結界を通させたんで、

悪人は上区と中区で足止めされて、

特に中区は一気に犯罪都市になってる。

大企業の所得隠しも冥界が取り上げちゃったし、

裏金も消えて、大企業と議員の関係も、

ぎくしゃくしてんだよ」

「それって中央だけ? 」

新田がビールを飲んで寿司をつまんだ。

「いや。西も北も同じ状況。

おかげで捨て地は人口がちょびっと増えてるけど、

捨て地スパイも未だにいるから、

黒地に飛ばされてるんだよね」

「真紀子さんじゃないけど、

人間の欲にはキリがないから、

捨て地で幸せなはずなんだけど、

もっともっとと欲深い人間は弾かれちゃうんだよ」

アートンがオリオンリングを皿に取った。

「だから人口が増えないのか………」

「そういう事」

黒谷のため息にシェデムが言った。

「今日毘沙門天様から言われたんですけど、

この前一緒に黒地を見ながら帰って来たじゃないですか。

その時に消えかかる神のオーラを見て、

助けるために黄金の繭で包み込んだんだそうです」

「えっ? あんな中で神様が生き残ってるの? 」

ディッセが驚きの声をあげた。

「土地に縛られて動けない神でも、

運よく人の負から己を守っているものがいるそうなんです。

毘沙門天様がそれを知って天上界で調べられたんですが、

悪霊が層になって見えないという事で、

冥界で確認したんです」

向井が説明した。

「明日、俺がその場所を見て回るつもりなんですけど、

牧野君がいるので坂下さんは無理だし、

新田君お願いできますか? 」

「いいよ」

ビールを飲みながら返事をした。

「一応、私とアートンも行くから」

トリアが言う。

「そうそう。牧野君はさ。

向井さんと坂下さんと弥生ちゃんは、

自分と一緒じゃなきゃダメだって言うんだよね」

「なんでさ」

ディッセの話にアートンが不思議そうに聞いた。

「今も悪霊が層になってるって言ってただろ。

毒が増してるから、優秀なガードがそばにいないと、

力が発揮できないみたいでさ」

ディッセが苦笑いした。

「うちの勇者は情けないわね」

シェデムも笑った。

「でも、なんで直接その場に行って保護しないの? 」

新田が不思議そうに聞いた。

水光姫ミヒカの時には毘沙門天が行っただろ? 」

ディッセも首を傾げる。

その話に向井とトリアが顔を見合わせ、

「今日その説明をされたんですけど」

「あの場所は悪霊が強すぎて、

結界を張ったとしても入ることもきつすぎるのよ」

と言った。

「はぁ~それだけ負の塊が増えてるってことか」

アートンもため息まじりに上を向く。

「それで俺が代わりに、

四天王の印が入った霊玉を預かったので、

それで上にあげるということになりました」

「ただね。地主神なので下界にこだわるなら、

捨て地の神が去った祠をお願いしようかと思って。

河伯じいさんもそうでしょ」

トリアの話に、

「そうよね。せっかく祠を綺麗にしてるのに、

中身がない場所も多いから、

神様が移動してきてくれるならこっちも助かるわね」

シェデムが納得の表情をした。

「黒地は国会議員にも官僚にも私物化されて、

国の財産は国民の命も含めて売り買いされてるのに、

メディアは知っていても国の言いなりでしょ。

捨て地はその強欲に多くのものを奪われてる。

それなのに悪に加担しないで闘っているんだから、

神様の加護が大きくなれば、

結界も含めてもう少し住みやすくなると思う」

トリアも笑顔になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...