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続編 国の誤算
保護される神
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「そういや、黒地から逃げてきた人が、
まともな神経じゃ黒地に住めないって言ってたよ。
区役所も移住希望者で忙しいみたい」
黒谷がハマグリの酒蒸しを食べながら言った。
「貧民街や下区から飛ばされた人で、
一時中区もパニックで暴動が起こってたけど、
それも落ち着いてきたから、
捨て地に移れる人が慌てて移住したんだと思うよ。
国の監視が怖くて我慢してた人も多かったみたいだから、
今が逃げるチャンスだったんだろうね」
ディッセが店の冷蔵庫からビールを持ってくると、
「皆も飲むでしょ」
「飲む~」
それぞれに缶を渡した。
「今は上区と特別区の方が大騒ぎしてるよ。
危ない連中で溢れてるからね。
特別区だけ財前に無理やり結界を通させたんで、
悪人は上区と中区で足止めされて、
特に中区は一気に犯罪都市になってる。
大企業の所得隠しも冥界が取り上げちゃったし、
裏金も消えて、大企業と議員の関係も、
ぎくしゃくしてんだよ」
「それって中央だけ? 」
新田がビールを飲んで寿司をつまんだ。
「いや。西も北も同じ状況。
おかげで捨て地は人口がちょびっと増えてるけど、
捨て地スパイも未だにいるから、
黒地に飛ばされてるんだよね」
「真紀子さんじゃないけど、
人間の欲にはキリがないから、
捨て地で幸せなはずなんだけど、
もっともっとと欲深い人間は弾かれちゃうんだよ」
アートンがオリオンリングを皿に取った。
「だから人口が増えないのか………」
「そういう事」
黒谷のため息にシェデムが言った。
「今日毘沙門天様から言われたんですけど、
この前一緒に黒地を見ながら帰って来たじゃないですか。
その時に消えかかる神のオーラを見て、
助けるために黄金の繭で包み込んだんだそうです」
「えっ? あんな中で神様が生き残ってるの? 」
ディッセが驚きの声をあげた。
「土地に縛られて動けない神でも、
運よく人の負から己を守っているものがいるそうなんです。
毘沙門天様がそれを知って天上界で調べられたんですが、
悪霊が層になって見えないという事で、
冥界で確認したんです」
向井が説明した。
「明日、俺がその場所を見て回るつもりなんですけど、
牧野君がいるので坂下さんは無理だし、
新田君お願いできますか? 」
「いいよ」
ビールを飲みながら返事をした。
「一応、私とアートンも行くから」
トリアが言う。
「そうそう。牧野君はさ。
向井さんと坂下さんと弥生ちゃんは、
自分と一緒じゃなきゃダメだって言うんだよね」
「なんでさ」
ディッセの話にアートンが不思議そうに聞いた。
「今も悪霊が層になってるって言ってただろ。
毒が増してるから、優秀なガードがそばにいないと、
力が発揮できないみたいでさ」
ディッセが苦笑いした。
「うちの勇者は情けないわね」
シェデムも笑った。
「でも、なんで直接その場に行って保護しないの? 」
新田が不思議そうに聞いた。
「水光姫の時には毘沙門天が行っただろ? 」
ディッセも首を傾げる。
その話に向井とトリアが顔を見合わせ、
「今日その説明をされたんですけど」
「あの場所は悪霊が強すぎて、
結界を張ったとしても入ることもきつすぎるのよ」
と言った。
「はぁ~それだけ負の塊が増えてるってことか」
アートンもため息まじりに上を向く。
「それで俺が代わりに、
四天王の印が入った霊玉を預かったので、
それで上にあげるということになりました」
「ただね。地主神なので下界にこだわるなら、
捨て地の神が去った祠をお願いしようかと思って。
河伯じいさんもそうでしょ」
トリアの話に、
「そうよね。せっかく祠を綺麗にしてるのに、
中身がない場所も多いから、
神様が移動してきてくれるならこっちも助かるわね」
シェデムが納得の表情をした。
「黒地は国会議員にも官僚にも私物化されて、
国の財産は国民の命も含めて売り買いされてるのに、
メディアは知っていても国の言いなりでしょ。
捨て地はその強欲に多くのものを奪われてる。
それなのに悪に加担しないで闘っているんだから、
神様の加護が大きくなれば、
結界も含めてもう少し住みやすくなると思う」
トリアも笑顔になった。
まともな神経じゃ黒地に住めないって言ってたよ。
区役所も移住希望者で忙しいみたい」
黒谷がハマグリの酒蒸しを食べながら言った。
「貧民街や下区から飛ばされた人で、
一時中区もパニックで暴動が起こってたけど、
それも落ち着いてきたから、
捨て地に移れる人が慌てて移住したんだと思うよ。
国の監視が怖くて我慢してた人も多かったみたいだから、
今が逃げるチャンスだったんだろうね」
ディッセが店の冷蔵庫からビールを持ってくると、
「皆も飲むでしょ」
「飲む~」
それぞれに缶を渡した。
「今は上区と特別区の方が大騒ぎしてるよ。
危ない連中で溢れてるからね。
特別区だけ財前に無理やり結界を通させたんで、
悪人は上区と中区で足止めされて、
特に中区は一気に犯罪都市になってる。
大企業の所得隠しも冥界が取り上げちゃったし、
裏金も消えて、大企業と議員の関係も、
ぎくしゃくしてんだよ」
「それって中央だけ? 」
新田がビールを飲んで寿司をつまんだ。
「いや。西も北も同じ状況。
おかげで捨て地は人口がちょびっと増えてるけど、
捨て地スパイも未だにいるから、
黒地に飛ばされてるんだよね」
「真紀子さんじゃないけど、
人間の欲にはキリがないから、
捨て地で幸せなはずなんだけど、
もっともっとと欲深い人間は弾かれちゃうんだよ」
アートンがオリオンリングを皿に取った。
「だから人口が増えないのか………」
「そういう事」
黒谷のため息にシェデムが言った。
「今日毘沙門天様から言われたんですけど、
この前一緒に黒地を見ながら帰って来たじゃないですか。
その時に消えかかる神のオーラを見て、
助けるために黄金の繭で包み込んだんだそうです」
「えっ? あんな中で神様が生き残ってるの? 」
ディッセが驚きの声をあげた。
「土地に縛られて動けない神でも、
運よく人の負から己を守っているものがいるそうなんです。
毘沙門天様がそれを知って天上界で調べられたんですが、
悪霊が層になって見えないという事で、
冥界で確認したんです」
向井が説明した。
「明日、俺がその場所を見て回るつもりなんですけど、
牧野君がいるので坂下さんは無理だし、
新田君お願いできますか? 」
「いいよ」
ビールを飲みながら返事をした。
「一応、私とアートンも行くから」
トリアが言う。
「そうそう。牧野君はさ。
向井さんと坂下さんと弥生ちゃんは、
自分と一緒じゃなきゃダメだって言うんだよね」
「なんでさ」
ディッセの話にアートンが不思議そうに聞いた。
「今も悪霊が層になってるって言ってただろ。
毒が増してるから、優秀なガードがそばにいないと、
力が発揮できないみたいでさ」
ディッセが苦笑いした。
「うちの勇者は情けないわね」
シェデムも笑った。
「でも、なんで直接その場に行って保護しないの? 」
新田が不思議そうに聞いた。
「水光姫の時には毘沙門天が行っただろ? 」
ディッセも首を傾げる。
その話に向井とトリアが顔を見合わせ、
「今日その説明をされたんですけど」
「あの場所は悪霊が強すぎて、
結界を張ったとしても入ることもきつすぎるのよ」
と言った。
「はぁ~それだけ負の塊が増えてるってことか」
アートンもため息まじりに上を向く。
「それで俺が代わりに、
四天王の印が入った霊玉を預かったので、
それで上にあげるということになりました」
「ただね。地主神なので下界にこだわるなら、
捨て地の神が去った祠をお願いしようかと思って。
河伯じいさんもそうでしょ」
トリアの話に、
「そうよね。せっかく祠を綺麗にしてるのに、
中身がない場所も多いから、
神様が移動してきてくれるならこっちも助かるわね」
シェデムが納得の表情をした。
「黒地は国会議員にも官僚にも私物化されて、
国の財産は国民の命も含めて売り買いされてるのに、
メディアは知っていても国の言いなりでしょ。
捨て地はその強欲に多くのものを奪われてる。
それなのに悪に加担しないで闘っているんだから、
神様の加護が大きくなれば、
結界も含めてもう少し住みやすくなると思う」
トリアも笑顔になった。
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