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夫の帰京2
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ジュリエッタは鏡の前に立っていた。傍らには二カ月早く生まれた乳姉のハンナがいる。
「私、町娘に見えるかしら」
「いいえ、姫さまの気品が漏れ出ておりますので、令嬢の変装だとすぐにばれてしまいますわ」
「じゃあ、こうすればどうかしら」
ジュリエッタはハンナに向けて、眉をしかめて口をポカンと開けて見せた。ハンナは、はちみつ色の髪を揺らし、軽快な笑い声をあげた。
「姫さま、それなら町娘ではなく、見世物小屋の芸人ですわ」
(見世物小屋はちょっとひどくない?)
ジュリエッタは、凱旋帰京した軍列をこっそりと見に行くことにした。
凱旋後、侯爵も王都の侯爵邸に戻ってくるはずで、それはこの半年女主人として侯爵邸を取り仕切ってきたジュリエッタにとっては、「戻る」というよりも「やってくる」感覚に近かったが、それよりも先にどんなタイプの『黒い猛獣』なのか知っておきたかった。
(ネコ科かイヌ科かくらいは知っておきたいわね。ライオンかオオカミか。ああ、どっちもいやだけど)
ハンナはジュリエッタの内心を思って、声をかけてきた。
「大丈夫ですわ、姫さま。本物の猛獣なら、このハンナが捕まえて檻に入れてしまいますから」
「駄目よ、ハンナに適う相手ではないわ。それより一緒に逃げましょうよ。ついてきてくれるわよね」
「ええ、このハンナ、姫さまになら、地獄の底までもついて行きます」
「地獄の底には行かないわ。それより、楽園でも探すのよ」
「そうですわね。果物のいっぱいなる土地でも求めていきますか! このハンナ、姫さまのためならお菓子のなる木だって探してみせます!」
「頼もしいわね!」
町人姿の護衛騎士に警護を任せて、ハンナとともに町に出れば、通りは人であふれかえっていた。
北方を制圧したバルベリ将軍の軍列ををひと目見ようと集まってきたのだ。
ジュリエッタは、王宮前広場を見下ろせる食事処に席を借りて、バルコニーから通りを見下ろした。軍列の先頭は広場に届こうとしているのに、最後尾はまだ見えてこない。
赤い国王旗をたなびかせた銀色の甲冑の軍列に、黒い侯爵旗を掲げた黒い甲冑の軍列が並走している。軍列は一糸乱れず整然としていた。
「まあ、勇壮ですこと」
侯爵旗は国王旗よりも一回り小さく、そして一段低く掲げられている。それは知性の表れであるようにも感じ、ジュリエッタは、意外に思った。
(猛獣にしては遠慮深い人のようね)
やっと軍列の最後尾が見えてきたが、侯爵軍の数は、国王軍よりもやや少ないようだ。
(侯爵軍は数万とも数十万とも聞くけど)
侯爵はやはり遠慮して、兵士らを領地か駐屯地にでも置いてきたのかもしれなかった。
やがて、軍列の最後尾が広場に入り終えた。兵士らは整然と並んでいる。
ジュリエッタは、黒い軍団を見て、ぞっとするものを感じた。
(何だか気味が悪いわね)
それはジュリエッタだけではなかったようで、広場に入ってくるときには熱狂的に迎え入れていた人々も、整列してじっと直立したままの軍団に、次第に押し黙り、広場は静かになった。
国王が軍服姿で広場に現れ、兵士らを出迎えた。
兵士らは一斉に兜を取り、ひざまずく。
「我が兵士らよ、ご苦労だった」
国王が甲冑姿のバルベリ侯爵の腕を取って、立たせた。
国王は侯爵を民衆に向かせると、侯爵の腕を取って、高く掲げる。
「我らが英雄、バルベリ将軍ぞ!」
民衆は固唾を飲んで見守っている。小石が転がる音でさえ聞こえてきそうなほど静かだ。
バルベリ将軍は、ゆっくりと甲冑を頭から外した。真っ黒い髪にひげ面の人物が現れ出た。黒い猛獣の呼び名が似合う猛々しさがある。
(いやああっ、ヒゲ、ヒゲだわああっ!)
ジュリエッタが内心で悲鳴を上げるも、地上はどっと沸いた。
バルベリ将軍が片手を上げて笑ったからだ。笑えば好人物に見えるようだ。
民衆は、熱狂的に叫び始めた。
「国王陛下、万歳! バルベリ将軍、万歳!」
(ヒゲ、いやああっ)
わなわなと震えながらオペラグラスを持つジュリエッタは、ふと、侯爵と目が合ったように感じた。深い漆黒の目にジュリエッタは捕らえられる。
(いやああっ、ヒゲに見つかったわぁっ)
もちろん、侯爵がジュリエッタを見分けられるはずもなく、ジュリエッタの気のせいだ。
しかし、目が合ったように感じたジュリエッタの全身に震えが走った。足先から頭のてっぺんまで、震えが走る。
ハンナがうずうずしながら、「姫さま、私にも見せてくださいませ」と、オペラグラスを貸すようにせがんできてもなお、ジュリエッタは震えて固まっていた。
ハンナはジュリエッタの手からオペラグラスを取り、中を覗いて、声を上げた。
「まあ、バルベリ侯爵って逞しいヒゲですわ! ヒゲの美男子ですわよ!」
(び、美男子? ど、どこが?)
ハンナが興奮した声を聴きながら、ジュリエッタの体が傾いでいく。ジュリエッタは眩暈に襲われていた。
ジュリエッタはほんの数秒、意識を失ったようで、目を開ければ、ハンナに抱きかかえられていた。
「姫さま! 大丈夫ですか?!」
ハンナの声が聞こえてきた。
ハンナに支えられるようにしてジュリエッタは立っていた。そのハンナの体をさらに護衛騎士が支えている。ハンナは常に、自分と家族以外の者に、ジュリエッタの体をほんのわずかでも触らせないようにしている。
「まあ、大変、姫さま、高熱です。流感だわ! 姫さまを直ちに侯爵邸に」
ハンナがどこからともなく取り出した布でくるまれて、護衛騎士に抱かれて馬車に乗り、そこから再び意識の途絶えたジュリエッタは目を覚ませば侯爵邸の寝室にいた。
***
(ここは侯爵邸の私の部屋……?)
豪華なベッドの上で目を開けたジュリエッタは、見慣れた部屋にありながら、久しぶりにその部屋に戻ったような気がしていた。
ジュリエッタは長い夢を見ていた。しかし、夢というにはあまりにも鮮明だった。
敵兵に囲まれ逃げ惑い、そして、嬲り殺される悪夢。
それはあまりに生々しく、全身に痛みを感じるほどだ。
それは予知夢に違いなかった。これから起きることをジュリエッタは夢で経験したのだ。
(大変だわ……!)
この先、王都は外敵の襲撃を受ける。
青い旗をはためかせた船が王都の海を埋め尽くし、赤銅色の甲冑の兵士が、石畳の王都に轟音を響かせる。王都は燃え、人々は逃げまどい、ジュリエッタは民衆の前で嬲り殺される。
(民衆は私を憎んでいたわ。外敵に殺されるのを良い気味だと笑って見ていた)
ジュリエッタは途方もない贅沢をし、使用人には傲慢な態度を取り、実家の公爵家ともマリーとも疎遠となり、孤立していた。
(それも、すべてあのヒゲのせい! おのれ、バルベリ! バルベリ侯ダニエル・シルベス!)
予知夢でジュリエッタはないがしろにされていた。侯爵は愛人を作り、ジュリエッタを邪魔に扱った。それでジュリエッタは孤独に陥った果てに、散財を尽くし、傲慢さを増す。そして、最後には、外敵に襲われて、民衆にも白い目で見られながら、無残に殺されるのだ。
そもそも散財癖がありそうなジュリエッタだったが、侯爵に冷たく扱われなければ、ひどい贅沢をすることもなかっただろうに。
何よりジュリエッタの腹が煮えくり返ることに、その愛人は、シャルロット!
(どうしてよりによってシャルロットなの?!)
侯爵は、外敵の奇襲の中、王宮に向かい、シャルロットを守り抜いた上で死ぬ。
(妻を放置して、よその女のために死ぬなんて、何ていうクズなの。絶対に許さない。一刻も早く離婚よ、離婚! 大金持ってバックレてやる!)
ベッドから出ると、ジュリエッタはファイティングポーズを取った。
(その前に、一発殴らなきゃ気が済まないわね)
今の侯爵はまだシャルロットと出会う前のはずだが、いずれ、不貞を働くのだ。
(そんな男、成敗してやる!)
ジュリエッタは宙に向けて拳をくり出す。飛び上がって宙を足で蹴って「やあっ!」と声を上げた。
そんなジュリエッタを、戸口の陰から見つめる人物がいた。
(随分と威勢が良い令嬢だな)
バルベリ侯爵だった。侯爵は、侯爵邸に戻るなり、流感にかかったという妻の様子を見に来たが、妻らしき女性は、病気どころか元気いっぱいにしか見えない。
(ひょっとして令嬢の影武者か何かか?)
首をひねるも見てはならないものを見てしまったことだけはわかったために、見なかったふりでそこを立ち去ることにした。
「私、町娘に見えるかしら」
「いいえ、姫さまの気品が漏れ出ておりますので、令嬢の変装だとすぐにばれてしまいますわ」
「じゃあ、こうすればどうかしら」
ジュリエッタはハンナに向けて、眉をしかめて口をポカンと開けて見せた。ハンナは、はちみつ色の髪を揺らし、軽快な笑い声をあげた。
「姫さま、それなら町娘ではなく、見世物小屋の芸人ですわ」
(見世物小屋はちょっとひどくない?)
ジュリエッタは、凱旋帰京した軍列をこっそりと見に行くことにした。
凱旋後、侯爵も王都の侯爵邸に戻ってくるはずで、それはこの半年女主人として侯爵邸を取り仕切ってきたジュリエッタにとっては、「戻る」というよりも「やってくる」感覚に近かったが、それよりも先にどんなタイプの『黒い猛獣』なのか知っておきたかった。
(ネコ科かイヌ科かくらいは知っておきたいわね。ライオンかオオカミか。ああ、どっちもいやだけど)
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「大丈夫ですわ、姫さま。本物の猛獣なら、このハンナが捕まえて檻に入れてしまいますから」
「駄目よ、ハンナに適う相手ではないわ。それより一緒に逃げましょうよ。ついてきてくれるわよね」
「ええ、このハンナ、姫さまになら、地獄の底までもついて行きます」
「地獄の底には行かないわ。それより、楽園でも探すのよ」
「そうですわね。果物のいっぱいなる土地でも求めていきますか! このハンナ、姫さまのためならお菓子のなる木だって探してみせます!」
「頼もしいわね!」
町人姿の護衛騎士に警護を任せて、ハンナとともに町に出れば、通りは人であふれかえっていた。
北方を制圧したバルベリ将軍の軍列ををひと目見ようと集まってきたのだ。
ジュリエッタは、王宮前広場を見下ろせる食事処に席を借りて、バルコニーから通りを見下ろした。軍列の先頭は広場に届こうとしているのに、最後尾はまだ見えてこない。
赤い国王旗をたなびかせた銀色の甲冑の軍列に、黒い侯爵旗を掲げた黒い甲冑の軍列が並走している。軍列は一糸乱れず整然としていた。
「まあ、勇壮ですこと」
侯爵旗は国王旗よりも一回り小さく、そして一段低く掲げられている。それは知性の表れであるようにも感じ、ジュリエッタは、意外に思った。
(猛獣にしては遠慮深い人のようね)
やっと軍列の最後尾が見えてきたが、侯爵軍の数は、国王軍よりもやや少ないようだ。
(侯爵軍は数万とも数十万とも聞くけど)
侯爵はやはり遠慮して、兵士らを領地か駐屯地にでも置いてきたのかもしれなかった。
やがて、軍列の最後尾が広場に入り終えた。兵士らは整然と並んでいる。
ジュリエッタは、黒い軍団を見て、ぞっとするものを感じた。
(何だか気味が悪いわね)
それはジュリエッタだけではなかったようで、広場に入ってくるときには熱狂的に迎え入れていた人々も、整列してじっと直立したままの軍団に、次第に押し黙り、広場は静かになった。
国王が軍服姿で広場に現れ、兵士らを出迎えた。
兵士らは一斉に兜を取り、ひざまずく。
「我が兵士らよ、ご苦労だった」
国王が甲冑姿のバルベリ侯爵の腕を取って、立たせた。
国王は侯爵を民衆に向かせると、侯爵の腕を取って、高く掲げる。
「我らが英雄、バルベリ将軍ぞ!」
民衆は固唾を飲んで見守っている。小石が転がる音でさえ聞こえてきそうなほど静かだ。
バルベリ将軍は、ゆっくりと甲冑を頭から外した。真っ黒い髪にひげ面の人物が現れ出た。黒い猛獣の呼び名が似合う猛々しさがある。
(いやああっ、ヒゲ、ヒゲだわああっ!)
ジュリエッタが内心で悲鳴を上げるも、地上はどっと沸いた。
バルベリ将軍が片手を上げて笑ったからだ。笑えば好人物に見えるようだ。
民衆は、熱狂的に叫び始めた。
「国王陛下、万歳! バルベリ将軍、万歳!」
(ヒゲ、いやああっ)
わなわなと震えながらオペラグラスを持つジュリエッタは、ふと、侯爵と目が合ったように感じた。深い漆黒の目にジュリエッタは捕らえられる。
(いやああっ、ヒゲに見つかったわぁっ)
もちろん、侯爵がジュリエッタを見分けられるはずもなく、ジュリエッタの気のせいだ。
しかし、目が合ったように感じたジュリエッタの全身に震えが走った。足先から頭のてっぺんまで、震えが走る。
ハンナがうずうずしながら、「姫さま、私にも見せてくださいませ」と、オペラグラスを貸すようにせがんできてもなお、ジュリエッタは震えて固まっていた。
ハンナはジュリエッタの手からオペラグラスを取り、中を覗いて、声を上げた。
「まあ、バルベリ侯爵って逞しいヒゲですわ! ヒゲの美男子ですわよ!」
(び、美男子? ど、どこが?)
ハンナが興奮した声を聴きながら、ジュリエッタの体が傾いでいく。ジュリエッタは眩暈に襲われていた。
ジュリエッタはほんの数秒、意識を失ったようで、目を開ければ、ハンナに抱きかかえられていた。
「姫さま! 大丈夫ですか?!」
ハンナの声が聞こえてきた。
ハンナに支えられるようにしてジュリエッタは立っていた。そのハンナの体をさらに護衛騎士が支えている。ハンナは常に、自分と家族以外の者に、ジュリエッタの体をほんのわずかでも触らせないようにしている。
「まあ、大変、姫さま、高熱です。流感だわ! 姫さまを直ちに侯爵邸に」
ハンナがどこからともなく取り出した布でくるまれて、護衛騎士に抱かれて馬車に乗り、そこから再び意識の途絶えたジュリエッタは目を覚ませば侯爵邸の寝室にいた。
***
(ここは侯爵邸の私の部屋……?)
豪華なベッドの上で目を開けたジュリエッタは、見慣れた部屋にありながら、久しぶりにその部屋に戻ったような気がしていた。
ジュリエッタは長い夢を見ていた。しかし、夢というにはあまりにも鮮明だった。
敵兵に囲まれ逃げ惑い、そして、嬲り殺される悪夢。
それはあまりに生々しく、全身に痛みを感じるほどだ。
それは予知夢に違いなかった。これから起きることをジュリエッタは夢で経験したのだ。
(大変だわ……!)
この先、王都は外敵の襲撃を受ける。
青い旗をはためかせた船が王都の海を埋め尽くし、赤銅色の甲冑の兵士が、石畳の王都に轟音を響かせる。王都は燃え、人々は逃げまどい、ジュリエッタは民衆の前で嬲り殺される。
(民衆は私を憎んでいたわ。外敵に殺されるのを良い気味だと笑って見ていた)
ジュリエッタは途方もない贅沢をし、使用人には傲慢な態度を取り、実家の公爵家ともマリーとも疎遠となり、孤立していた。
(それも、すべてあのヒゲのせい! おのれ、バルベリ! バルベリ侯ダニエル・シルベス!)
予知夢でジュリエッタはないがしろにされていた。侯爵は愛人を作り、ジュリエッタを邪魔に扱った。それでジュリエッタは孤独に陥った果てに、散財を尽くし、傲慢さを増す。そして、最後には、外敵に襲われて、民衆にも白い目で見られながら、無残に殺されるのだ。
そもそも散財癖がありそうなジュリエッタだったが、侯爵に冷たく扱われなければ、ひどい贅沢をすることもなかっただろうに。
何よりジュリエッタの腹が煮えくり返ることに、その愛人は、シャルロット!
(どうしてよりによってシャルロットなの?!)
侯爵は、外敵の奇襲の中、王宮に向かい、シャルロットを守り抜いた上で死ぬ。
(妻を放置して、よその女のために死ぬなんて、何ていうクズなの。絶対に許さない。一刻も早く離婚よ、離婚! 大金持ってバックレてやる!)
ベッドから出ると、ジュリエッタはファイティングポーズを取った。
(その前に、一発殴らなきゃ気が済まないわね)
今の侯爵はまだシャルロットと出会う前のはずだが、いずれ、不貞を働くのだ。
(そんな男、成敗してやる!)
ジュリエッタは宙に向けて拳をくり出す。飛び上がって宙を足で蹴って「やあっ!」と声を上げた。
そんなジュリエッタを、戸口の陰から見つめる人物がいた。
(随分と威勢が良い令嬢だな)
バルベリ侯爵だった。侯爵は、侯爵邸に戻るなり、流感にかかったという妻の様子を見に来たが、妻らしき女性は、病気どころか元気いっぱいにしか見えない。
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読む前にご確認いただけると助かります。
1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです
2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています
→ただ今『皇太子』を『王太子』へ、さらに文頭一文字下げなど、表記を改訂中です。
そのため一時的に『皇太子』と『王太子』が混在しております。
よろしくお願いいたします。
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誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。
読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。
アルファポリス第18回恋愛小説大賞 奨励賞受賞
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