緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜

天宮叶

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失った愛

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次の日、いつも通り使用人の女性が食事を部屋へと運んできた。粗末ながらも毎日きちんと出される食事は僕の唯一の生きる源だ。

使用人はテーブルの上の消えている蝋燭に魔法で火を灯すとそこに食事を置いた。そして、汚い部屋から早く出たいのか会話をすることも無く部屋から出ていった。

この世界には魔法があって大抵の人は火を灯したり飲水程度の水を出したりすることができる。その中でも時々ものすごく強い魔法を使える人もいると聞いたことがあるけれど本当の話なのかは知らない。

僕自身も魔法は使えるけれど、生活に使うにも不便なくらいの微かな物しか出せないため基本的に魔法に頼ることはほとんどない。

どうせ残り物を適当に乗せただけの食事だろうと思いながらノロノロとテーブルの方に近づくと、並べられたそれ等を見て驚いた。肉や野菜が綺麗に並べられた栄養価の高い美味しそうな料理が皿へと乗っていたからだ。

「……なにこれ……」

訝しみながらも空腹には勝てずにフォークを手に取って小さめにカットされた肉を掬って口元へと運ぶ。

ジュワリと口の中で肉汁が弾けて、その美味しさに舌鼓を打ったけれど、弱りきった胃には耐えられなかったのか数口で気分が悪くなり野菜だけ無理矢理お腹に詰め込んで食事を終えた。

「………急になんなんだろ」

幼い頃以来久しぶりに食べるまともな食事に疑問は絶えない。

悶々としていると部屋の扉が開いてラルが中へと入ってきた。

「なによ、全然食べてないじゃない」

「……この食事はラルが用意させたの?」

「そうよ」

当然じゃない!と言うようにラルが返事を返しきたから、僕は眉を寄せて、何故?と尋ねた。

「王太子様の婚約者選びには貴方が行くのよ」

「……何言ってるんだよ」

訳が分からなくて思わずそう呟くと、ラルが僕の綺麗な方の顔を指さして、同じ顔なんだから大丈夫だと笑った。

「少し痩せすぎだから残りの2ヶ月の間に太ってもらうわ。その小汚い格好も綺麗にして、最低限のマナーも覚えさせないと」

「ラル本気で言ってる?僕は男だし、この見た目じゃ無理だよ……」

「大丈夫よ!少し痣があるからって右半分に仮面でも付けていけばバレないわ。それにこんなに可愛い双子の妹が頼んでいるのだからお願いを聞いてくれるでしょう?」

ラルの無茶ぶりに慌てて考えを変えさせようと試みたもののそれは叶わず、結局彼女は、そういうことだから~と言い捨てて部屋から出て行ってしまった。

昔から自由奔放だったけれど、ここまでだとは思っていなくて唖然とする。

食べ残されて冷えきった料理を見つめながら、本気で僕が婚約者選びに参加するのか?と未だ半信半疑のまま口を引き結んだ。
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