緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜

天宮叶

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癒しの王太子

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次の日、これでもかというくらい見た目を整えられた僕は無駄に豪華な公爵家の馬車に乗せられて王宮へと向かった。

久しぶり過ぎる外の景色は僕には眩しすぎて、馬車の窓を締め切って自身の肩を抱きしめて俯く。

揺れている身体が馬車のせいなのかはたまた別の理由なのかは自分では判断できない。

外に出ることをこんなにも怖いと思うなんて考えもしていなかった。今すぐ引き返してあの狭く汚い部屋に篭って誰にも自分の姿を見られないようにしてしまいたいと思う。

美しかった頃は皆に自分を見ろと主張していたはずなのに、今は見ないでくれと小さく背中を曲げている。

少しずつ王宮が近づいてくると、恐怖は段々と増していく。

怖くて怖くて、なんだか胃がムカムカとしてきた。

水魔法で水を出して飲むと、少しだけ気持ち悪さもマシになった気がする。

王宮には既に多くの貴族子女達が集まっていて、僕の乗った馬車も他の馬車と同じ位置に止まった。

「つきましたよ」

御者のおじさんが声をかけてくれたけれど、なかなか動くことが出来ずに、小さく分かったと答えて数分その場に蹲っていた。

それに業を煮やした御者が扉を開けて降りるように促してくる。

「……ご迷惑をかけてしまってごめんなさい」

「早く降りてくださいな。馬車を移動させないと怒られちまう」

「……うん」

ゆっくりと馬車から降りると、案内の人に従って会場へと向かう。

その途中、沢山の美しい女子達とすれ違って、僕はそれに強い劣等感を覚えた。

自分にはこの場所は場違いだと分かっている。そもそも性別を偽っている時点で王家を欺いたと罰せられてもおかしくないのだ。

会場に着くと、皆思い思いに輪を作って話に花を咲かせているようだった。

その輪の横を通り過ぎながら、隅っこを目指す。

壁に寄りかかって、出来るだけ息を殺して誰にも話しかけられないように顔を伏せる。自分の足元だけが目の前に広がっていて、フリルのシワの数を数えながら早く終われって何度も心の中で唱えた。

しばらくそうして居ると、会場がざわつきだして気になって顔を上げた。

そうしたら、今回の催しの主役であるフェリクス王太子様が階段を降りてきているのが目に入ってその優しげな顔に目を奪われた。

確かに美しいだとか男らしいだとかそんなお顔では無い。言ってしまうならとても柔らかい顔だと思った。タレ目がちのブラウの瞳に少しオレンジ味のあるベージュの短い髪。見る人が見ればそこら辺に歩いている平民と変わらないと言うのかもしれない。
けれど、僕にはその容姿が逆に安心感を人に与えているように感じたんだ。

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