28 / 83
夜の宝石
11
しおりを挟む
叩かれると思って身構えたけれど、何故かアニーシャ様の手は僕に触れる寸前でふわりと僕を避けて空を切る。
「な、なによこれっ!?」
「……これって、風?」
僕を囲うように風が吹いていて、その風がアニーシャ様から僕を守るように波打っていた。
直ぐにダリウスさんの魔法だと気がつく。
ここまで強い魔法を目にするのはフェリクス様の回復魔法以来で驚いてしまう。
ダリウスさんは僕を自分の方に引き寄せるとアニーシャ様をじっと見つめながら冷たい声で、お引取りを、と彼女に向かって言った。
「貴方、たかが護衛騎士の分際で何様のつもりなの!!」
「確かに私はただの護衛騎士ですが、フェリクス様直々にこの方をお守りするように仰せつかって居ますので」
「なっ!ふ、ふんっ!!お父様に言いつけてお前の家なんて取り壊しにしてもらうんだから!!」
「生憎、私には取り壊せる程の家はありませんので告げ口しても意味は無いかと」
「……っ!!」
ダリウスさんの言葉を受けて、顔を真っ赤にさせたアニーシャ様はそのまま僕達に背を向けて立ち去ってしまった。
そのことにほっと安堵の息を吐き出す。
「あの、ありがとうございました」
「貴方をお守りできたのなら本望です」
「……あの、ダリウスさんは僕のことを知っているんですよね?」
「ええ、よく知っているつもりです」
よくとはどういうことなんだろう。
「ダリウスさんと僕は何処で知り合ったんですか?」
「……ずっと昔に、とあるパーティ会場で出会いました」
「……パーティ会場?」
一瞬、黒髪の幼い少年の顔が頭の中を過ぎって消えた。
けれど、その少年のはずがないって無意識に否定すると眉を垂れさせて、覚えてないですごめんなさいって返事を返した。
「覚えていなくてもいいです」
「……どうして?」
「貴方が幸せで居てくれるならそれだけで充分だからです」
「……ごめんなさい……僕、よく分からなくて。貴方にとって僕はそこまで言って貰えるほどの存在とは思えないんです」
だって、僕は彼のこと覚えていない。
それくらい微かな接点しかなかった関係のはずなのに、ダリウスさんが僕にここまで良くしてくれる理由が分からないんだ。
「貴方は私の宝石だったから」
「……宝石?」
「どんなに暗い夜でも、明るく照らしてくれる一欠片の宝石が私にとって貴方でした。だから、貴方が幸せになることが私の願いです」
ダリウスさんの言葉は分かるようで何も分からない。
僕達は一体何処で出会ったんだろう?
彼は誰なのだろう。
その青い瞳に僕を写して、彼が微かに微笑みを浮かべた。その微笑みが、あの日の少年と重なった気がしたんだ。
あの日……あの誕生日パーティの日。
僕にクッキーをくれたあの子の微笑みと同じ気がした。
「な、なによこれっ!?」
「……これって、風?」
僕を囲うように風が吹いていて、その風がアニーシャ様から僕を守るように波打っていた。
直ぐにダリウスさんの魔法だと気がつく。
ここまで強い魔法を目にするのはフェリクス様の回復魔法以来で驚いてしまう。
ダリウスさんは僕を自分の方に引き寄せるとアニーシャ様をじっと見つめながら冷たい声で、お引取りを、と彼女に向かって言った。
「貴方、たかが護衛騎士の分際で何様のつもりなの!!」
「確かに私はただの護衛騎士ですが、フェリクス様直々にこの方をお守りするように仰せつかって居ますので」
「なっ!ふ、ふんっ!!お父様に言いつけてお前の家なんて取り壊しにしてもらうんだから!!」
「生憎、私には取り壊せる程の家はありませんので告げ口しても意味は無いかと」
「……っ!!」
ダリウスさんの言葉を受けて、顔を真っ赤にさせたアニーシャ様はそのまま僕達に背を向けて立ち去ってしまった。
そのことにほっと安堵の息を吐き出す。
「あの、ありがとうございました」
「貴方をお守りできたのなら本望です」
「……あの、ダリウスさんは僕のことを知っているんですよね?」
「ええ、よく知っているつもりです」
よくとはどういうことなんだろう。
「ダリウスさんと僕は何処で知り合ったんですか?」
「……ずっと昔に、とあるパーティ会場で出会いました」
「……パーティ会場?」
一瞬、黒髪の幼い少年の顔が頭の中を過ぎって消えた。
けれど、その少年のはずがないって無意識に否定すると眉を垂れさせて、覚えてないですごめんなさいって返事を返した。
「覚えていなくてもいいです」
「……どうして?」
「貴方が幸せで居てくれるならそれだけで充分だからです」
「……ごめんなさい……僕、よく分からなくて。貴方にとって僕はそこまで言って貰えるほどの存在とは思えないんです」
だって、僕は彼のこと覚えていない。
それくらい微かな接点しかなかった関係のはずなのに、ダリウスさんが僕にここまで良くしてくれる理由が分からないんだ。
「貴方は私の宝石だったから」
「……宝石?」
「どんなに暗い夜でも、明るく照らしてくれる一欠片の宝石が私にとって貴方でした。だから、貴方が幸せになることが私の願いです」
ダリウスさんの言葉は分かるようで何も分からない。
僕達は一体何処で出会ったんだろう?
彼は誰なのだろう。
その青い瞳に僕を写して、彼が微かに微笑みを浮かべた。その微笑みが、あの日の少年と重なった気がしたんだ。
あの日……あの誕生日パーティの日。
僕にクッキーをくれたあの子の微笑みと同じ気がした。
33
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる