緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜

天宮叶

文字の大きさ
58 / 83
婚約と養子

2

しおりを挟む
フェリクス様のことが大好きだから、彼とちゃんと向き合いたいと思った。

それに、ラルとやっと話をすることが出来て、色んな人の気持ちも知って、僕はもっと前を見ないとって自覚したんだ。

「私の部屋に行こうか」

フェリクス様はそういって僕の手を握り返してくれた。

手を引かれながら、これから伝えることを頭の中で考えて何度も繰り返し練習する。たくさん伝えたいことはあるけれど、ありすぎて上手くまとめられない。

空いている片手で火傷を覆い隠している仮面に触れてみると、無機質なひんやりとした感触に少しだけ怖くなった。

本当はまだ僕がフェリクス様の隣に居ていいのかなんて分からないんだ。

彼の隣に居たいと思う反面、いつか醜い僕は彼の隣には相応しくないと誰かが指をさして罵ってくるかもしれないって想像してはやっと絞り出した勇気が縮んでいきそうになる。

だけどね、そんな時はいつもフェリクス様が僕の手をこうやって引いてくれるからしぼんでしまった勇気にまた息が吹き込まれるんだ。

フェリクス様の部屋につくと、そのまま2人中へと入った。

パタリと扉の閉まる音が響いて、すこしだけ緊張が増す。

「……フェリクス様……僕……」

ああ、やっぱりダメだ。

沢山練習したはずなのに、いざとなったら頭が真っ白になって言葉が出てこない。

そんな僕のことをフェリクス様が抱きしめてきて、驚いて息を飲んだ。

「フェ、フェリクス様?」

「ルダ、愛してるよ」

柔らかな声音でそう囁いたフェリクス様の背中に僕も戸惑いながらそっと腕を回す。

多分、今は難しいことも沢山の言葉も要らないんだって思った。

「……僕っ、フェリクス様のことが大好きです……」

「私もルダのことが大好きだよ。だから、私の婚約者になってくれるかい?」

恐る恐る尋ねてくれたフェリクス様の言葉に、僕は今度こそ迷うことなく頷いた。

僕は男だから彼の後継を産むことも出来ないし、彼を支えて行けるのかも、この傷のことも、なにもかも先は見えないけれど、それでもただフェリクス様の隣に居たいんだ。

「僕をフェリクス様の婚約者にして下さいっ」

彼の背に回した腕に力を込めたら、フェリクス様も強く強く抱き締め返してくれて、どちらともなく顔を見合せてそっと触れるだけのキスをした。

フェリクス様は唇まで柔らかいんだなって知った。

もっと彼のことを知りたい。

フェリクス様が何を考えているのか、何をしたいのか、何が好きなのか、全部全部知りたいって欲張ってしまいそうになる。

「フェリクス様、これからよろしくお願いします」

でも、一気に全部知るんじゃなくて1個ずつゆっくりと知って行けたらいいなって思うんだ。

そうすれば、僕達は同じ歩幅でずっと一緒に歩いていける気がするから。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...