緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜

天宮叶

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後悔と選択

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真っ直ぐにお父様の顔を見て言い切ると、彼は僕のことを見て驚愕に目を見開いた。

「……エスメラルダなのか?」

突然僕の火傷が無くなったことに驚きを隠せないのか、ぽかんとした間の抜けた顔を浮かべるお父様に、僕はもう一度言葉をぶつける。

「僕はフェリクス様と婚約しています。いずれ彼と婚姻する予定です。これは僕たちが2人で決めたことです。ですから誰にもとやかく言われる筋合いはありません!」

誰かにこんなにも強く物を言ったのは子供の頃以来だった。

お父様は僕の言葉を聞き終えると、フラフラとこちらへと近づいてこようとする。

「わ、私の宝石が戻ってきた……」

「お下がりに」

それをダリウスさんが止めて、お父様はあっさりと拘束されてしまう。

僕から視線を逸らさないお父様の顔には歓喜が浮かんでいて、その顔を見て僕の中の微かなお父様への期待が一気に冷めたのを感じた。

「……お父様、僕はもう貴方とは縁を切ります」

「!、何を言うんだ!!!美しさの戻ったお前を私が手放すとでも??」

「……やっぱりお父様は美しさでしか人を判断できないんですね」

「それの何が悪いというんだ!美しいことは素晴らしい!!エスメラルダ、今まですまないことをした!だから縁を切るなんて言わないでおくれ」

急に態度を変えたお父様に周りの皆も何処か唖然とした面持ちを向けている。

そのことに気がついていないのはお父様だけだ。

「……僕は愛されたかった。美しい僕ではなく僕自身を愛して欲しかった。怪我をした時、ただ傍に居て抱きしめてくれるだけで良かったんです」

それを僕は何よりも求めていた。

けれど、それはもう叶わぬ夢だ。

「コーラル!エスメラルダを説得しなさい!!ようやく美しさを取り戻したというのに何故そのようなことを言うんだ!!!そうだっ!私が婚約を許さなかったからかい?婚約のことならもう反対したりしないよ!それにお前の好きな物をいくらでも与えてあげよう。だから、ほらこちらへ来なさい。……私のエメラルド」

まくし立ててくるお父様に僕は小さく、さようなら、と呟いた。

実際には離縁するのはとても難しいことかもしれない。

それでも、もう僕の中にお父様への期待も愛もなくなってしまっているから、彼と関わることはしたくないと思ったんだ。

「ルダがそうしたいのなら私は背中を押すだけだよ」

そんな僕にフェリクス様もそう言って言葉をかけてくれた。

「……ありがとうございます」

もう涙は出なかった。

その代わりに顔に笑みを浮かべる。

その笑みにいつもの不格好さは無かった。
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