身代わりの花は包愛に満たされる

天宮叶

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お仕事頑張って♡

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使用人を選ぶため募集をかけてから数日後には、数人の応募者が屋敷へと訪れてきた。そのほとんどが、ラミレス男爵家から嫁いできた花人と聞いてオリビアを想像したようだ。僕たと知ると、あからさまにガッカリとした表情を浮かべる人もいて、ほんの少しだけ辛かった。

でもそのたびにディーク様が

「お前ら全員屋敷から出ていけ」

と面接に来た人達を追い出してしまうから、その辛さもすぐに吹き飛んでしまう。

一周間が経ってもなかなか使用人が決まらず、ディーク様は頭を抱えているようだ。

「妥協できないのが団長の良いところであり、悪いところですよね」

いつの間にか部屋に入ってきていたアルベルトさんが、ディーク様を見ながら呆れた表情を浮かべてくれる。彼は僕が嫁いできたときに護衛をしてくれた人だ。副騎士団長をしているらしい。

「勝手に入ってくるな」

「仕事が溜まっていたので呼びに来ました」

「チッ、仕方ないな。今日はお開きにする」

解散を言い渡された人たちが部屋から出ていく。

結局決めることができず、手を煩わせてしまったと落ち込んでしまう。肩を落とす僕にデューク様が「気にするな」と声をかけてくれた。

「俺は仕事に戻るが、アルビーは好きにしてていい。護衛を付けるから街にでも行ってきたらどうだ。ヴォルフ領に来てからまだ一度も街を見ていないだろう」

「いいんですか?」

「ああ、行ってこい。アルベルト頼んだぞ」

デューク様がアルベルトさんの肩を軽く叩く。そうしたら、一瞬だけ苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたアルベルトさんが、僕よろしくと言ってくれた。

「よろしく願いします」

「ええ。そうだ、護衛をする対価が欲しいですね」

「対価ですか?」

首を傾げる。デューク様は不機嫌そうな表情を浮かべている。

「図々しいぞ」

「俺は今アルビー様と話しているので、団長は黙っていてください」

簡単にデューク様をあしらったアルベルトさんが、僕の耳元に顔を近づけてくる。驚いて腰が引けそうになった。

「団長に『お仕事頑張ってください♡』と言ってもらえませんか。語尾のハートが大事です。『お仕事してるデューク様格好いい』も追加でお願いします。あの人最近仕事サボってばかりなので、力を貸してください」

「へっ、えぇ!?」

アルベルトさんから言われた言葉に慌ててしまう。それに僕がそんなことを言ったところで、力になれるとは思えない。

「近いぞ!」

睨みつけながら、デューク様がアルベルト様を僕から引き離す。その一瞬あと、デューク様の胸の中に閉じ込められてしまった。

アルベルトさんがすごく呆れた表情を浮かべている。

「アルベルトお前!俺の前でアルビーにそんなことをっ!」

「どんなことですか。内緒話くらいするでしょう」

反論しながらアルベルトさんが僕に目配せをしてくる。あれは、言えと言うことだろうか?

よくわからないまま、デューク様の名前を呼ぶ。そうすると、すぐに赤い瞳が僕の姿を映し出してくれた。

「あ、あのっ。お仕事頑張ってくださいねっ。お仕事してるデューク様はすごく、その……格好いいです!……えーと……♡」

ハートがよくわからなくて、とりあえず笑顔を向けてみる。

そうすると一瞬固まったデューク様が、すぐに僕の髪をワシャワシャと犬にするみたいに撫でてきた。

「はーー、仕方ねえ……アルビーにそう言われたらやる気出すしかないよな。アルベルト、お前はアルビーから三メートルは距離を取っておけ!いいな!!」

アルベルトさんに文句を言いながら、デューク様は部屋を出ていってしまった。残された僕とアルベルトさんは、顔を見合わせるとお互いに苦笑いを浮かべ合う。

 

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