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お買い物
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人で賑わう大通りには、沢山の店が建ち並んでいる。見たことのない橙色の丸い果物に目を引かれて、立ち止まった。
「それはヴォルフ領の名産品です。オランジュというんですよ」
「美味しいんですか?」
「瑞々しくて、甘みと酸味のバランスが丁度いいですね。子供にも人気が高いんですよ」
説明を聞いて少しだけ興味が湧く。でもお金を持っていないから、今度デューク様に食べてみたいとお願いしてみようと決めた。
誰かになにかをお願いしようと思えるだなんて、いままでは想像もしていなかった。少しだけ不安はある。けれど、デューク様なら受け止めてくれる気がするんだ。
「行きましょう。僕、あれも気になります」
「買わなくてよかったんですか?」
「手持ちがないので……」
「団長がアルビー様のものは好きに買うようにとこっそりお金を持たせてくれました」
「えっ。あ……ありがとうございます。でも、いいんです。練習しないといけないので」
お願いをする練習。
いつまでも、ラミレス男爵家にいた頃の僕のままではだめなんだ。小さなことから始めていこう。自分の意志を伝えられるようになりたい。
デューク様が僕に沢山の心を分け与えてくれるから。僕もいつかデューク様の傍にしっかりと立てるような、強い人間になりたいんだ。
「練習ですか?よくわかりませんが、それならオランジュはまた今度にしましょう」
「はい。ありがとうございます」
笑顔を返すと、行きたいと思っていたパン屋さんへと向かう。珍しい形のパンが多くて目を引く。真ん中に花のような十字の切れ込みのあるものや、手に取りやすい小さなサイズのパイなど、どれも美味しそうだ。
「いい匂いがしますね。値段もすごく安いです」
「団長はああ見えて有能なんです。隣国であるライヒトゥムとの貿易経路をいち早く編み出したのもあの方なんですよ。そのおかげでヴォルフ領は優先的に恩恵が得られるんです」
「デューク様は本当にすごい人なんですね」
僕はそんな人の元に嫁いてきたんだ。デューク様は与えられるものを受け取るだけでいいと言ってくれる。けれど与えられるだけでは駄目だ。強くそう思った。
劣等感も自身のなさも、今はまだ捨てられない。けれど、少しずつ変えていこう。
「僕、デューク様のことをもっと沢山知りたいです」
「それは本人に伝えてあげてください」
「はい」
デューク様のことを考えながら、パンを選んでいく。大切な人のことを想像しながら買い物をすることが、こんなにも幸せなことだなんて知らなかった。
買い終えると、腕の中にパンの入った袋を抱える。嬉しくて自然と笑顔がこぼれた。
今まではオリビエの世話のために買い物すらろくに行ったことがなかった。両親が買い物に出かけても、僕のためになにかを買ってきてくれたことなどない。
寂しさと、不公平さに何度も泣きたくなった。けれど、泣いたところで誰も僕のことを見てはくれない。
「嬉しそうですね」
「僕、こんなふうに自由に外を歩いて、好きなものを見たり買ったりすることに憧れていたんです」
「……それなら、今日は好きなだけ見て回りましょう」
アルベルトさんの言葉に頷きを返す。
世間知らずの坊っちゃんだと思われただろうか?
ふと疑問に思ったけれど、いまはそう思われてもかまわない。
目の前に広がる賑わいの中に、身を浸していたかったから。
「それはヴォルフ領の名産品です。オランジュというんですよ」
「美味しいんですか?」
「瑞々しくて、甘みと酸味のバランスが丁度いいですね。子供にも人気が高いんですよ」
説明を聞いて少しだけ興味が湧く。でもお金を持っていないから、今度デューク様に食べてみたいとお願いしてみようと決めた。
誰かになにかをお願いしようと思えるだなんて、いままでは想像もしていなかった。少しだけ不安はある。けれど、デューク様なら受け止めてくれる気がするんだ。
「行きましょう。僕、あれも気になります」
「買わなくてよかったんですか?」
「手持ちがないので……」
「団長がアルビー様のものは好きに買うようにとこっそりお金を持たせてくれました」
「えっ。あ……ありがとうございます。でも、いいんです。練習しないといけないので」
お願いをする練習。
いつまでも、ラミレス男爵家にいた頃の僕のままではだめなんだ。小さなことから始めていこう。自分の意志を伝えられるようになりたい。
デューク様が僕に沢山の心を分け与えてくれるから。僕もいつかデューク様の傍にしっかりと立てるような、強い人間になりたいんだ。
「練習ですか?よくわかりませんが、それならオランジュはまた今度にしましょう」
「はい。ありがとうございます」
笑顔を返すと、行きたいと思っていたパン屋さんへと向かう。珍しい形のパンが多くて目を引く。真ん中に花のような十字の切れ込みのあるものや、手に取りやすい小さなサイズのパイなど、どれも美味しそうだ。
「いい匂いがしますね。値段もすごく安いです」
「団長はああ見えて有能なんです。隣国であるライヒトゥムとの貿易経路をいち早く編み出したのもあの方なんですよ。そのおかげでヴォルフ領は優先的に恩恵が得られるんです」
「デューク様は本当にすごい人なんですね」
僕はそんな人の元に嫁いてきたんだ。デューク様は与えられるものを受け取るだけでいいと言ってくれる。けれど与えられるだけでは駄目だ。強くそう思った。
劣等感も自身のなさも、今はまだ捨てられない。けれど、少しずつ変えていこう。
「僕、デューク様のことをもっと沢山知りたいです」
「それは本人に伝えてあげてください」
「はい」
デューク様のことを考えながら、パンを選んでいく。大切な人のことを想像しながら買い物をすることが、こんなにも幸せなことだなんて知らなかった。
買い終えると、腕の中にパンの入った袋を抱える。嬉しくて自然と笑顔がこぼれた。
今まではオリビエの世話のために買い物すらろくに行ったことがなかった。両親が買い物に出かけても、僕のためになにかを買ってきてくれたことなどない。
寂しさと、不公平さに何度も泣きたくなった。けれど、泣いたところで誰も僕のことを見てはくれない。
「嬉しそうですね」
「僕、こんなふうに自由に外を歩いて、好きなものを見たり買ったりすることに憧れていたんです」
「……それなら、今日は好きなだけ見て回りましょう」
アルベルトさんの言葉に頷きを返す。
世間知らずの坊っちゃんだと思われただろうか?
ふと疑問に思ったけれど、いまはそう思われてもかまわない。
目の前に広がる賑わいの中に、身を浸していたかったから。
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