弟を溺愛していたら、破滅ルートを引き連れてくる攻めに溺愛されちゃった話

天宮叶

文字の大きさ
11 / 45

不法侵入者め!

しおりを挟む
自室の扉を開けると勢い良く閉めた。

 ──入らせてなるものか!

 自分史上最速の扉閉めを記録したはずだ。そのはずだったのに、ルーカスのほうが一瞬早かったのか、扉の隙間に足を差し込まれて閉めるのを阻止されてしまった。

「お邪魔します」

「入っていいとは言っていない」

「もうお邪魔しちゃったもん」

 もん、なんて可愛く言っても気持ちが悪いだけだ。無駄に顔がいいせいでなにをしても許されると思っているのだろうか。

「不法侵入だ。消えろ」

 シッシッと犬にするように手を振る。
 その手を握られて、手の甲に唇を寄せられた。ゾワッと背筋に鳥肌が走る。
 慌てて手を引っ込めると、ルーカスが「あれ?こうして欲しかったんじゃないの?」とわけのわからないことを口走り出した。

「話がないなら帰ってくれないか……」

 前世の記憶が蘇る前のゼンなら、魔術の一つや二つ食らわせていたことだろう。
 そうしないのは一応婚約者であり、小説にハマっていたときにルーカスが割と好きなキャラだったからだ。
 期待とは正反対に、ルーカスは備え付けのカウチソファーに腰掛けてしまった。対面に椅子はないため、座るためには隣に腰掛ける必要がある。
 ゼンは迷わず立っていることを選択した。

「もうすぐ大規模な角狼ホーンウルフの討伐が行われるんだ。今回の繁殖期で異常繁殖が起こったみたいでね。近隣被害が多発しているのは知っているでしょう」

「あぁ、話だけはな」

 魔獣討伐は基本的に騎士団が担当している。魔術師は魔術の研究や呪いの類、そして治癒魔術による救護などが専門だ。たまに魔術しか効果のない魔獣も出現するため、そういう場合のみ討伐に参加する。

「心配してくれないの?」

「お前が角狼ごときにやられるとは思えないな」

「ふふ、ゼンならそう言ってくれると思ってた」

 普段の態度からは感じられないが、ルーカスは騎士団長の称号を持つにふさわしい実力者だ。それをゼンも認めている。認めているから嫌いだ。
 ルーカスが討伐にあたるときには魔術師の救護要請はほとんど来ない。怪我をする前にルーカスがすべて討伐してしまうから。その点だけでいえばありがたくもある。

 魔術師の中にはシャノンのように攻撃系魔術を使えない者も多い。救護では魔獣と鉢合わせることもあるため、要請された魔術師も命がけだ。

「ゼンはどうして俺を婚約者に選んだんだって思っているんでしょう?」

 言い当てられて喉奥が詰まる感覚がした。
 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。

白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる
BL
フレア王国の第3王子シルティ(18歳.Ω)は、王宮騎士団の団長を務める、キーファ侯爵家現当主のアリウス(29歳.α)に、ずっと片想いをしている。 そんなシルティは、Ωの成人王族の務めとして、自分は隣国のαの王族に輿入れするのだろうと、人生を半ば諦めていた。 だが、ある日突然、父である国王から、アリウスとの婚姻を勧められる。 二つ返事でアリウスとの婚姻を受けたシルティだったが、何もできない自分の事を、アリウスは迷惑に思っていないだろうかと心配になる。 ─が、そんなシルティの心配をよそに、アリウスは天にも登る気持ち(無表情)で、いそいそと婚姻の準備を進めていた。 受けを好きすぎて、発情期にしか触れる事ができない攻めと、発情期の記憶が一切ない受けのお話です。 拗らせ両片想いの大人の恋(?) オメガバースの設定をお借りしています。ぼんやり設定です。 Rシーンは※つけます。 1話1,000~2,000字程度です。

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~

水凪しおん
BL
「君は、俺の宝だ」 無実の罪を着せられ、婚約破棄の末に極寒の辺境へ追放された公爵令息ジュリアン。 彼を待ち受けていたのは、「北の食人狼」と恐れられる将軍グリーグとの政略結婚だった。 死を覚悟したジュリアンだったが、出会った将軍は、噂とは真逆の不器用で心優しいアルファで……? 前世の記憶を持つジュリアンは、現代知識と魔法でボロボロの要塞を快適リフォーム! 手作りスープで将軍の胃袋を掴み、特産品開発で街を救い、気づけば冷徹将軍から規格外の溺愛を受けることに。 一方、ジュリアンを捨てた王都では、破滅の足音が近づいていて――。 冤罪追放から始まる、銀狼将軍との幸せいっぱいな溺愛スローライフ、ここに開幕! 【オメガバース/ハッピーエンド/ざまぁあり/子育て/スパダリ】

処理中です...