弟を溺愛していたら、破滅ルートを引き連れてくる攻めに溺愛されちゃった話

天宮叶

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仕方ないな

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商人街の中心に位置す時計台広場で、ゼンはルーカスが来るのを待っていた。
 二人とも忙しい身のため、予定調整を行い、ようやく出かける日取りを合わせることができた。

「お待たせ。今日もゼンは素敵だね」

「キザなやつだな」

 今日はシンプルなホワイトシャツに黒のセットアップスーツを合わせている。胸元には瞳の色と同じ青のヴィンテージブローチが輝いていた。
 今日のために自ら選んだ服だということは口が避けても言えないため、いつも通り冷たくあしらってしまう。

(歩み寄ろうと決めたのにこれではだめだ!)

 内心葛藤しつつ、ルーカスと並んで街の散策を始めた。
 といっても、いつも街の警備を行っているルーカスにとっては見慣れた場所かもしれない。
 ゼンはあまり外に出ないため久しぶりに街へ来ると目新しいものが視界に入ってくる。

「なにを買う予定なんだ」

クローククラスプマントの留め具が古くなってきたから新調したいんだ。デザインを君に選んでもらえたら嬉しいと思ってね」

クローククラスプはマントやカーディガンの胸元を止めるための装飾品で、騎士団でも正装の際に身につけることが多い。
 遠征時には、防寒用の外套の胸元を止めるときにも使うため消耗品のような扱いとなっている。

「わかった。だが好みに合うかはわからないぞ」

「かまわないよ。ゼンが選んでくれたものは全部好みだから」

暴論だが、そう言ってくれるとあまり悩まずにすむから助かる。
装飾専門店に入店すると、店員がルーカスに気づいて声をかけてきた。常連なのだろう。

「エイリーク様とお連れ様。奥の部屋へご案内いたします」

すぐに奥の部屋へ通される。お得意様専用の個室だ。

「デザインカタログをお持ち致します」

「ありがとう」

 ふわふわのソファーに並んで腰掛けると出された紅茶へ口をつけた。
 爽やかな香りがほのかな緊張を癒やしてくれる。
 ルーカスに密着するといつも緊張してしまう。彼から漂う雰囲気や香りは、常に冷静さを保とうと努めているゼンにとっては毒のようなものだ。

「一昔前はクローククラスプを婚約者や想いを寄せる相手に贈るのが流行っていたみたいだよ」

「それは何十年も前の流行りだろう。今は洒落た見た目の魔具を贈るのが主流だ」

「何十年も前でもいいじゃない。そうだ!ゼンは俺のクローククラスプを選んでよ。俺はゼンのを選ぶから」

「俺は必要ない」

 魔術師もマントは羽織るが、騎士とは違い戦闘も多くないため相当なことがない限りクローククラスプを変えることはない。そのため魔術師の中には気に入った装飾に自身で魔術を込めて魔具を作り、肌身放さず身につけておく者もいる。
 そういえばゼンも装飾品を買ったのは何年も前で、ずっと同じものを身に着けている。あまり持ち物にこだわりもなく、使えればなんでもかまわない。

「せっかくなんだからいいじゃない。ねっ、お願い!」

 顔の前で手を合わせながら必死に頼み込んでくるルーカス。それに負けて、ゼンはため息を吐き出してから了承の返事をした。

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