弟を溺愛していたら、破滅ルートを引き連れてくる攻めに溺愛されちゃった話

天宮叶

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言うんじゃなかった……

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「なぜそんなことを聞くんだ?」

 思わず質問で返してしまった。
 たしかにルーカスのことは敵対視していた時期もある。それは記憶が戻っていなかったからで、戻った今はうざったいと思うことはあっても憎むほどに強い気持ちを感じたことなどない。

「ルーカス、俺はもうお前を憎まない」

 気がつくとそう答えていた。
頭の中に、ゼンがルーカスに向かって叫んでいる映像が浮かんできた。

『俺はお前が憎い!どれだけ名声を手にしたとて、お前のようにはなれなかった。だから殺してやりたいほどに憎かった!俺の憎悪は愛さなければならなかった弟までも呑み込んだ。……俺はお前のせいで怪物になってしまったんだ』

 こんな台詞は小説には出てこなかったはずだ。
 自分の中に小説とは異なる記憶があることに疑問を感じた。

「ゼンの言葉を信じるよ」

 ルーカスが発した言葉にはやけに重みがある気がした。それがゼンの心に深く落ちてくる。
(ルーカス、お前はなにか知っているのか?)

 そう尋ねたかった。けれど実際に言葉は出てこず、結局はうなずくことしかできなかった。
 再び歩みを再開すると、二人並んでゆっくりと店を見て回る。
 通行人からの視線が痛いのは、隣を歩く無駄に顔のいい男のせいだろう。

「お前は顔が良すぎる」

「惚れ直した?」

「寝言は寝て言え」

見れば見るほどルーカスは完璧すぎる。
なぜだか照れてしまい顔を背けると、クスクスと笑う声が聞こえてきてますますルーカスの顔を見られなくなってしまう。

「照れるとよそ見しちゃう癖があるのは知ってるよ」

 耳元で囁かれて強い羞恥心に襲われ奥歯を噛み締めた。

(からかいやがって!このクソ野郎!)

 内心で盛大に悪口を叫ぶと、勢い良く振り返った。
 驚いて目を丸くしているルーカスに

「お前に惹かれているのは確かだ。嫌われたくないならその軽率な口を閉じておけ」

 と荒々しい早口で伝えた。

「へっ、えぇ!?」

「うるさいぞ」

 耳元で叫ばれて鼓膜が破れるかと思った。ルーカスを睨むと、驚いた表情が徐々にとろりと甘く変化していった。

「今日は記念日だね」

「なんのだ」

「ゼンが俺のことを好きって言ってくれた記念日」

「好きとは言っていない。やめろ、近づいてくるな」

 体をくっつけてくるルーカスを無理やり引き離しながら道を進んでいく。
 ふわふわと漂ってくるフェロモンの香りを感じながら、気持ちを伝えたことを少しだけ後悔した。

 
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