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頑張ってくるんだぞ
しおりを挟む貴族学校へ出発するために用意された馬車の前で、ゼンとシャノンはフィーロと少しの間の別れの挨拶を交わしていた。
「ちゃんと温かくして寝るんだぞ。体を清めたら髪は乾かすんだ。三食しっかりと食べて、夜ふかしはあまりするんじゃない。それから──」
「ゼン様、落ち着いてください」
出発するというときになってから、ゼンの心配症が発動してしまった。シャノンが苦笑いしながら制止する。
それでも心配でたまらない。
「お兄様ってば心配しすぎですよ。僕は大丈夫です」
「っ、大きくなったな……」
感動しすぎて泣いてしまいそうだ。
伯爵家に来た頃は目を離したら倒れてしまいそうなほどに華奢で心配だった。
でも今は髪も肌も艶々で、瞳はやる気に満ちて輝いている。
「貴族学校からはそう遠くないから、帰ってきたくなったらいつでも顔を出しに来るんだぞ」
「はい!」
元気に満ちた返事を聞いて口元を緩めた。
初めは悪役令息になるはずだったフィーロのことを助けようと思っていた。でも今は、ゼンのほうが心を支えてもらっている。
大切で可愛い弟が、こうして立派に旅立っていく姿を見送るのも兄の勤めなのだろう。
「貴族学校では魔術の授業も行う。年に一度全学年が月ごとのローテーションで魔術協会と騎士団へ見学に来る。そのときには俺がフィーロ達を案内するだろう」
「それじゃあ、お兄様にも会えるしお仕事をしている姿も見ることができるんですね!すっごく楽しみです!」
「あぁ、俺も楽しみだ。そのときのためにも勉強に励むんだぞ」
「はい!頑張ります!」
一年遅れて入学するのは緊張するだろう。周囲についていくのも大変だ。それでも今のフィーロならきっと乗り越えられると信じている。
「そろそろ行きますね」
「あぁ、気をつけて」
背を押すように一度だけ肩に手を置く。
よく見ればフィーロも微かに涙目になっていた。
鱗貴族学校では寮生活が基本だ。家族から離れるのは寂しいはず。
「シャノン待っていてね」
「はい」
それだけ言って、フィーロは馬車に乗り込んだ。
そのすぐ後、ゆっくりと馬車が動き出した。小窓から顔を出したフィーロが手を振ってくれる。
ゼンとシャノンは馬車が見えなくなるまでフィーロに向かって手を振り続けた。
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