1 / 24
1
しおりを挟む
春、桜が新たな門出を祝うように空を舞い散り、多くの新入生を出迎える。
私立鷹耀学院は幼稚園から高等学校まである一貫教育校で、威厳のありそうな名前のイメージ通り日本有数の名家のご子息が集っている。多くの生徒が小学校から鷹耀に通うため、中学からの外部入学は全体の二割、高校は三割ほどしかいない。そのため今日行われる鷹耀学院高等学校の入学式では、新入生のほとんどが既に仲の良い生徒と固まり、リラックスした状態で談笑していた。反対に硬い表情でひとりで歩いている生徒は外部生だとすぐにわかる。
そんな中千紘は余裕の表情で、レンガ造りの重厚感ある校門に足を踏み入れた。今日から新たな生活が始まる。つい一週間前までカナダに住んでいた千紘にとって、日本は十年ぶりだ。家では日本語で会話をしていたため、特に言語の壁にぶつかる心配はないし、長期休暇には祖父母に会いに何度か帰って来たことはあった。そのため日本の文化や礼儀作法も問題ないはずだ。
新たな出会いに胸を躍らせながら、クラス分けの名簿を確認する。一応十年前に鷹耀の幼稚園に通っていたのだが、当時のことは何一つ覚えていないため知った名前はひとつもない。
少し落胆する気持ちもなくはないが、切り替えて教室へ歩き出そうとしたとき、突然女声の甲高い声が聞こえてきた。ここは男子校のはずだから女性教師の声だろうか。騒ぎの起きた方に視線を向けると既に人だかりができている。こっそり輪に入り、野次馬に溶け込もうとしたその瞬間、突然モーセの海割りのように人々が廊下の両端に別れた。
何が現れるのかと見守っていると、少しずつ甲高い歓声が再び沸き始め、徐々に伝染していく。声が次第に大きくなるにつれて人の影が見えてきた。前の人間の後頭部の隙間から覗いていると、そこに五人の学生が現れた。
一目見て、他の群がる有象無象とは違うオーラに千紘は驚いた。整った顔立ちにスタイルの良さ、歩き方ひとつに魅了される。なるほど、騒ぎの正体はこの人たちか。周囲を見渡すとオーラに充てられてか眩暈を起こす生徒もおり、場は騒然としている。だがそんなこと日常茶飯事なのか、五人は気にすることもなく真っ直ぐ歩いていく。三角形に綺麗に並んで歩く彼らをぼんやり眺めていると、その内のひとりにどこかで見覚えがあった。
はっきりとは思い出せないが、幼稚園のときの同級生だろうか。祖父母の家に滞在していたとき、遊んだことがある分家の子供の可能性もある。
後で声を掛けてみるかと考えていたとき、突然鈍い痛みが頭を襲った。まるで鈍器に後ろからかち割られたような衝撃だった。思わず倒れそうになるのを、足に力を込めて踏ん張るが、鈍痛は何度も何度も千紘に降り注ぐ。意識が遠のくのを感じ、目をつぶりかけた刹那、また急に痛みが引き、変わって大量の記憶が降りてきた。
なんだこれは、何の記憶だ。幼少期よりも、もっとずっと前の。自分じゃない知らない人間の記憶。だがその情景は子どもの頃の思い出よりも鮮明に浮き出てくる。口うるさい姉ちゃんがソファを独占しながら、どうでもいいゲームについて語ってくる。姉ちゃんはオタクの友達がいなかったから、俺によく壁打ちのように話してきてたんだ。
タイトルは確か―――俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコ書記、そして庶務の双子とドキドキな毎日を送る―――当時界隈の一世を風靡した伝説のゲーム『どうしようもなく君を』。
俺はどうやら前世で姉が好きだったBLゲームの世界に転生したみたいだ。
私立鷹耀学院は幼稚園から高等学校まである一貫教育校で、威厳のありそうな名前のイメージ通り日本有数の名家のご子息が集っている。多くの生徒が小学校から鷹耀に通うため、中学からの外部入学は全体の二割、高校は三割ほどしかいない。そのため今日行われる鷹耀学院高等学校の入学式では、新入生のほとんどが既に仲の良い生徒と固まり、リラックスした状態で談笑していた。反対に硬い表情でひとりで歩いている生徒は外部生だとすぐにわかる。
そんな中千紘は余裕の表情で、レンガ造りの重厚感ある校門に足を踏み入れた。今日から新たな生活が始まる。つい一週間前までカナダに住んでいた千紘にとって、日本は十年ぶりだ。家では日本語で会話をしていたため、特に言語の壁にぶつかる心配はないし、長期休暇には祖父母に会いに何度か帰って来たことはあった。そのため日本の文化や礼儀作法も問題ないはずだ。
新たな出会いに胸を躍らせながら、クラス分けの名簿を確認する。一応十年前に鷹耀の幼稚園に通っていたのだが、当時のことは何一つ覚えていないため知った名前はひとつもない。
少し落胆する気持ちもなくはないが、切り替えて教室へ歩き出そうとしたとき、突然女声の甲高い声が聞こえてきた。ここは男子校のはずだから女性教師の声だろうか。騒ぎの起きた方に視線を向けると既に人だかりができている。こっそり輪に入り、野次馬に溶け込もうとしたその瞬間、突然モーセの海割りのように人々が廊下の両端に別れた。
何が現れるのかと見守っていると、少しずつ甲高い歓声が再び沸き始め、徐々に伝染していく。声が次第に大きくなるにつれて人の影が見えてきた。前の人間の後頭部の隙間から覗いていると、そこに五人の学生が現れた。
一目見て、他の群がる有象無象とは違うオーラに千紘は驚いた。整った顔立ちにスタイルの良さ、歩き方ひとつに魅了される。なるほど、騒ぎの正体はこの人たちか。周囲を見渡すとオーラに充てられてか眩暈を起こす生徒もおり、場は騒然としている。だがそんなこと日常茶飯事なのか、五人は気にすることもなく真っ直ぐ歩いていく。三角形に綺麗に並んで歩く彼らをぼんやり眺めていると、その内のひとりにどこかで見覚えがあった。
はっきりとは思い出せないが、幼稚園のときの同級生だろうか。祖父母の家に滞在していたとき、遊んだことがある分家の子供の可能性もある。
後で声を掛けてみるかと考えていたとき、突然鈍い痛みが頭を襲った。まるで鈍器に後ろからかち割られたような衝撃だった。思わず倒れそうになるのを、足に力を込めて踏ん張るが、鈍痛は何度も何度も千紘に降り注ぐ。意識が遠のくのを感じ、目をつぶりかけた刹那、また急に痛みが引き、変わって大量の記憶が降りてきた。
なんだこれは、何の記憶だ。幼少期よりも、もっとずっと前の。自分じゃない知らない人間の記憶。だがその情景は子どもの頃の思い出よりも鮮明に浮き出てくる。口うるさい姉ちゃんがソファを独占しながら、どうでもいいゲームについて語ってくる。姉ちゃんはオタクの友達がいなかったから、俺によく壁打ちのように話してきてたんだ。
タイトルは確か―――俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコ書記、そして庶務の双子とドキドキな毎日を送る―――当時界隈の一世を風靡した伝説のゲーム『どうしようもなく君を』。
俺はどうやら前世で姉が好きだったBLゲームの世界に転生したみたいだ。
91
あなたにおすすめの小説
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。です!
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる