聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ

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朝、目覚まし時計の音で目が覚める。昨日の疲れがまだ完全には抜けていないのか、体が重く目覚めも悪い。
千紘は眠い目をこすりながら、部屋から出てリビングへと向かった。

今日から早速授業が始まる。勉強についてはカナダにいる間もリモートで日本の家庭教師を雇ってもらっていたため、そこまで心配はしていない。名門私立で偏差値も高い鷹耀の入試に突破できたのだから自信を持っていいだろう。

螺旋階段を下りてリビングに入ると、大和兄さんと母が朝食をとっていた。

「あら、千紘。おはよう」
「…!千紘…、寝起きなのになんでそんなにキュートなの?寝癖直してあげるからこっちにおいで」
「おはよう…」

抵抗するのも面倒で、大和兄さんに手を引っ張られ隣の席につく。母は恐らく俺の朝食を準備するためにキッチンの方へ消えていった。

「父さんと弘斗兄さんはもう仕事に行ったのか?」
「うん…こんなに可愛い千紘を見られないなんて二人は前世で世界でも亡ぼしたんだろうな。…千紘、君はなんて罪な天使なの?」

今日も絶好調な大和兄さんは俺の寝癖を直すと言いながらただ頭を撫でてくる。
父さんと弘斗兄さんには結局昨日の夜も会えなかったし、話をしたかったのだが残念だ。

「はいはい、朝からイチャつかないの。今日の朝ごはんはクリームシチューとロールパン、サラダよ。パンは朝から頑張って焼いたから自信あるの!」

母がテーブルに並べてくれる料理たちはどれもおいしそうだった。母は名家の生まれで、小さい頃から料理とは無縁の生活をしていたらしい。我が家でもお手伝いさんを何人も雇っているのだが、結婚して料理を始めてからすっかりハマったようで、今でも毎日手料理を食べさせてくれる。
パンは口に入れるとほんのり温かく、バターの風味が感じられておいしい。クリームシチューもごろごろと入った具材ひとつひとつが柔らかく素材の味を感じられる。

「ん、うまい」
「んふふ。おいしいでしょ~!」
「こら千紘!その汚い口調弘斗兄さんの真似でしょ!母さんからも言ってやってよ!千紘ってば弘斗兄さんの影響受けすぎなんだよ!?羨ましい…!僕のことも何か真似してほしい!僕だって千紘の一部になりたいのに!!」
「あらあら、相変わらず千紘のことになると大和は気持ち悪いわね」

確かに、こういう口調は弘斗兄さんに影響を受けた面が強い。カナダに行ってから、日本で生活していた兄さんと年に数回しか会うことはなかったが、10も歳が離れているというのにいつも俺に合わせて遊んでくれた。
反対に大和兄さんは今でこそべったりくっついてくるのだが、昔は少し離れたところでこちらの様子を窺ってくるだけだった。年頃だったのだろうし気持ちも理解はできるが、弘斗兄さんに影響を受けるのは仕方がないだろう。

「弘斗兄さん口調が汚いって大和兄さんが言ってたこと伝えとくよ」
「えっ…嘘!!全部嘘だよ!!千紘と日常のちょっとした共通点が欲しかっただけ!!口調汚いは言い過ぎたね!?もはや僕の方が汚いよね!?」

よっぽど後が怖いのか、大和兄さんは怯えるように家の中を見渡しながら言い訳してきた。

「うふふ、大和。あなたは汚いというより気色悪いのよ」
「…ぐっ」

母さんの毒舌が刺さったのか、大和兄さんはテーブルに伏せたまま動かなくなった。南無阿弥陀仏…。
そのまま朝食を終えて、身支度を整えにまた部屋に戻った。結局兄さんが直したと言っていた寝癖は元気に立ちあがっていた。

髪も直し、制服に着替えるともう家を出なければならない時間になる。鞄を持って玄関で靴を履いていると、突然後ろから抱きしめられた。嗅ぎなれた匂いが鼻を通っていく。

「ごめんね、少しの間母さんの毒舌にやられて死んでたんだけど、千紘が今日家の中で見る最後の人間になりたくて生き返って来たんだ」
「最後の人間は多分じいやだけど」
「じいやなんてほぼ躯じゃん?」
「その言葉本人が聞いたら泣くんじゃないか…?」

てへっと舌を出して悪びれた様子もないので、さっさとキスを要求される前に家を出た。行ってきますのチューは!?という声がドア越しから聞こえてきた。危ない危ない。
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