聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ

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ホームルームが始まるまで後30分。道が思った以上に空いていたため予定よりも早く学校に到着した。教室に行ってもまだ誰も来ておらず、せっかくなので校内を散策することにする。
校舎から講堂までの道のりで、遠くからでしか見えなかったがひっそりとした隠れ家のような中庭に目をつけていたのだ。少し冒険者になってような気分で、中庭へと足を向けた。

千紘は校舎と講堂を結ぶ、アーチ形の屋根が特徴の渡り廊下を歩く。廊下の周りは芝生で覆われており、上履きのまま道を外れることはできない。だがもうしばらく歩くと、芝生の海にひっそりと緑のタイルが浮き出た箇所があった。色も緑色で芝生と馴染んでおり、一見タイルだとは気づけない。
そのタイルは少し距離を空けて一定間隔で真っ直ぐに伸びている。そしてタイルを追っていくと木々で隠れてはいるものの、その向こう側で咲く花が風に揺られて時々顔を出していた。

千紘はタイルからタイルへ飛び跳ねながら、木々の中へ入っていく。枝葉という障害物を時々避けながらも、ぐんぐん進んでいくと、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。
もう一歩タイルに飛び移る。すると緑は視界から消え、そこにはあたり一面色とりどりの花が咲き誇っていた。花の種類は様々で自然のもののように見えるが、雑草一つ生えておらず、丁寧に整備されていることがわかる。

千紘が飛び渡って来たタイルは幅は変わらないものの、今度はぴったりと敷き詰められており、歩きやすいようになっている。

自分だけが見つけた秘密基地に心躍らせながら、花たちを鑑賞していると、突然どさっと何かが地面に落ちる音が聞こえてきた。ここには俺以外誰もいないはずなのに。
音のした方へ振り向くと、鷹耀の制服を着たサングラスをかけた男が立っていた。呆然と自分の方を見て固まる相手に、千紘も同じように動くことができずにいる。

双方口を開くこともなく、ただ見つめ合っていると、突然相手の方からゾンビのようにゆっくりとした歩調と距離を詰めてきた。逃げようにも逃げ場はなく、サングラスのレンズが黒いため感情を読み取ることも一切できない。そのためただ棒立ちで近寄って来る相手を眺めていると、ついに目の前で立ち止まった。

先程と同じようにただ見つめ合うだけで、お互い何も発さない。

しかしサングラスは突然ハッとしたように一歩下がると、次いで二歩三歩とどんどん後退していく。そのままどこかに行くのだろうかと見守っていると今度は自分の胸元の方をごそごそとまさぐり始めた。

何事かと手のある方に目をやると、そこには見覚えのある橙色のブローチが輝いている。昨日、瀬川がつけていたブローチと全く同じものだ。

二人は仲が良いのだろうか。それともやはりBLゲームの世界だし付き合っているのかもしれない。そんなことをぼんやりと考えていると、サングラスは手を胸元から離し、今度は俺にまたまた近づいてきた。先程よりも勢いよくぐいぐい来るため、今度は俺が思わず一歩下がるが、それでも足を止めようとしない。

相手の真意が読めず、一歩また一歩と下がっていると、タイルの溝に躓いて尻から思い切り転んでしまった。
恥ずかしすぎて穴が合ったら入りたい。もう思い切り笑い飛ばしてくれや方が楽だとサングラスの方を見ると、相手は屈んでおり、いつの間にか目の前に顔があった。そうしてスラックスについていた泥を手で丁寧に払ってくれている。
そこでようやくその口を開いた。

「ダ、ダイジョウブ?」
「……え?」

声が高い。某夢の国のネズミ並みに声が高い。その風貌でその声なんだ。

「ケガ、ナイ?イタイ?」
「怪我、ない。痛く、ない」

相手の片言につられて返事をすると、サングラスは口角を柔らかく持ち上げた。こうして近くで見ると、サングラスで目を覆っていても、鼻筋が真っ直ぐ通っていて、薄い唇には一切歪みがなく整っていることがわかる。
俺に見つめられたことが気まずかったのか、目を逸らされる。だが目的を思い出したのか再び顔を上げた。

「コレ、アゲル」

そう言って差し出されたのは、先程まで胸元で輝いていたブローチだった。
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