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西日が教室を照らす放課後、千紘と飛鳥は一枚の紙を睨めっこしていた。クラスメイトは既に体験入部に向かっているのか、もう室内には二人しか残っていない。
「…うーん、悩ましい…」
「だから一度体験入部に行って決めればいいだろ?」
「そうなんだけどさ!それこそ生徒会にはないじゃん!」
飛鳥は目尻に薄い涙を浮かべて騒ぎ始める。
「大体生徒会が部活動扱いで、兼部できないって何事!?」
飛鳥が取り乱す気持ちもわからなくはない。
先刻のホームルームで、担任から今日から始まる体験入部についての詳細を聞かされた。期間は2週間で、その間は気になる部活動どこにでも顔を出すことができる。鷹耀の部活はカナダの部活よりも種類が多く、千紘は昨日からかなり楽しみだった。
そして飛鳥もいつも以上ににこやかな顔をして話を聞いていたのだが、最後に一言、生徒会は兼任できないという爆弾が落とされてからはすっかり落ち込んでいた。
「はーー…どうしよう。正直生徒会は憧れが強すぎて、もうファン寄りなんだよね。だから親衛隊に入って、追っかけしつつ他の部活入ろうかなって思ってたんだけど。でも生徒会に入れば遠目からしか見られない生徒会を間近で拝めて尚且つ、会話ができる特典付きだし…。でもでも!もし落選したらと思うと踏み込めなくてさ…!!選挙は夏だから、落選して途中入部なんてできるほど面の皮は厚くないし、負け犬のレッテルを貼られると思うと…!悩ましい!!」
「夏まで部活入って、当選したら退部するのは?」
「それも考えたけど、内部組から後ろ指刺されそうじゃん!」
「確かに」
内部組はもう外部生が何をしようと冷笑してくるため、気にしないに越したことはないが、生徒会ともなると少しやりにくそうだ。
「そういえば千紘くんはどこ行くか決めたの?」
「気になるのはテニス部と陸上部だな」
「おーー!どっちも合いそう!じゃあ今日はどっちか参加するの?」
「いや、今日はもう帰らないといけないんだ」
昨日話を聞いてから参加するつもりでいたのだが、急遽家から連絡が入り、帰らなくてはいけなくなった。おそらくじいやはもう校門の外で待機しているだろう。
「そうなんだ!じゃあ俺ももう帰ろうかな~」
「体験入部はいいのか?」
「今日は帰ってからゆっくり考えようかなって」
「そうか」
困ったように眉を下げて笑う飛鳥に後ろ髪をひかれるが、千紘は席を立ち別れを告げた。
昇降口へ向かう途中スマホを取り出すと、やはりじいやから既に着いているとの連絡が入っている。少し足を速めると、次第に人が増えてきた。ただ、昨日に比べると明らかに生徒の数が多い。周囲の生徒は口々に騒ぎ立て、興奮している様子を見ていると、入学初日に見た生徒会のパレードを彷彿とさせる。
時計を見ると、既に体験入部は始まっており、何か異常があったとしか思えない。昇降口に近づくにつれ、人はさらに増え、誰も彼もが頬に赤みを帯びながらアイドルに遭遇したかのように昂っている。
千紘は人の間をすり抜けながら、真っ直ぐに自分の靴箱に進んでいると、「千紘様!」と突然どこからか声を掛けられた。この呼び方をするのはあいつしかいない。声のする方へ顔を向けると、やはりそこには荒木が立っていたのだが、瞳孔が開き鼻を膨らませている。顔は赤みなんてものではなく、もはや深紅で人間のできる色とは思えない。明らかに周囲の生徒とは比べ物にならないほど気持ちが高ぶっているのが見て取れる。
「荒木か。尋常じゃなく興奮してるが、何かあったのか?」
「な、なな何かあったどころではないです…!というか、ご存じないのですか!?」
「何が?この人だかりと何か関係があるのか?」
「大ありですよ…!千紘様のお兄様、藤崎大和様がいらっしゃってます…!!」
「え?」
そのとき、聞き馴染みのある声が騒々しい中でもはっきりと聞こえてきた。
「あっいたいた!千紘!!僕だよ!!愛しの大和兄さんだよ…!!」
「…うーん、悩ましい…」
「だから一度体験入部に行って決めればいいだろ?」
「そうなんだけどさ!それこそ生徒会にはないじゃん!」
飛鳥は目尻に薄い涙を浮かべて騒ぎ始める。
「大体生徒会が部活動扱いで、兼部できないって何事!?」
飛鳥が取り乱す気持ちもわからなくはない。
先刻のホームルームで、担任から今日から始まる体験入部についての詳細を聞かされた。期間は2週間で、その間は気になる部活動どこにでも顔を出すことができる。鷹耀の部活はカナダの部活よりも種類が多く、千紘は昨日からかなり楽しみだった。
そして飛鳥もいつも以上ににこやかな顔をして話を聞いていたのだが、最後に一言、生徒会は兼任できないという爆弾が落とされてからはすっかり落ち込んでいた。
「はーー…どうしよう。正直生徒会は憧れが強すぎて、もうファン寄りなんだよね。だから親衛隊に入って、追っかけしつつ他の部活入ろうかなって思ってたんだけど。でも生徒会に入れば遠目からしか見られない生徒会を間近で拝めて尚且つ、会話ができる特典付きだし…。でもでも!もし落選したらと思うと踏み込めなくてさ…!!選挙は夏だから、落選して途中入部なんてできるほど面の皮は厚くないし、負け犬のレッテルを貼られると思うと…!悩ましい!!」
「夏まで部活入って、当選したら退部するのは?」
「それも考えたけど、内部組から後ろ指刺されそうじゃん!」
「確かに」
内部組はもう外部生が何をしようと冷笑してくるため、気にしないに越したことはないが、生徒会ともなると少しやりにくそうだ。
「そういえば千紘くんはどこ行くか決めたの?」
「気になるのはテニス部と陸上部だな」
「おーー!どっちも合いそう!じゃあ今日はどっちか参加するの?」
「いや、今日はもう帰らないといけないんだ」
昨日話を聞いてから参加するつもりでいたのだが、急遽家から連絡が入り、帰らなくてはいけなくなった。おそらくじいやはもう校門の外で待機しているだろう。
「そうなんだ!じゃあ俺ももう帰ろうかな~」
「体験入部はいいのか?」
「今日は帰ってからゆっくり考えようかなって」
「そうか」
困ったように眉を下げて笑う飛鳥に後ろ髪をひかれるが、千紘は席を立ち別れを告げた。
昇降口へ向かう途中スマホを取り出すと、やはりじいやから既に着いているとの連絡が入っている。少し足を速めると、次第に人が増えてきた。ただ、昨日に比べると明らかに生徒の数が多い。周囲の生徒は口々に騒ぎ立て、興奮している様子を見ていると、入学初日に見た生徒会のパレードを彷彿とさせる。
時計を見ると、既に体験入部は始まっており、何か異常があったとしか思えない。昇降口に近づくにつれ、人はさらに増え、誰も彼もが頬に赤みを帯びながらアイドルに遭遇したかのように昂っている。
千紘は人の間をすり抜けながら、真っ直ぐに自分の靴箱に進んでいると、「千紘様!」と突然どこからか声を掛けられた。この呼び方をするのはあいつしかいない。声のする方へ顔を向けると、やはりそこには荒木が立っていたのだが、瞳孔が開き鼻を膨らませている。顔は赤みなんてものではなく、もはや深紅で人間のできる色とは思えない。明らかに周囲の生徒とは比べ物にならないほど気持ちが高ぶっているのが見て取れる。
「荒木か。尋常じゃなく興奮してるが、何かあったのか?」
「な、なな何かあったどころではないです…!というか、ご存じないのですか!?」
「何が?この人だかりと何か関係があるのか?」
「大ありですよ…!千紘様のお兄様、藤崎大和様がいらっしゃってます…!!」
「え?」
そのとき、聞き馴染みのある声が騒々しい中でもはっきりと聞こえてきた。
「あっいたいた!千紘!!僕だよ!!愛しの大和兄さんだよ…!!」
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