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──荘厳な鐘の音がクラウト王国に響き渡る。
「レオナード・クラウトは、アイリーンをドラゴンの翼ですべての憂いから覆い避け、爪と牙ですべてから守り、一生慈しみ愛することをドラゴンの血にかけて誓う」
繊細なウェディングベールをレオナード様が上げると、私とレオナード様を遮るものはなにもない。甘やかな青い瞳に見つめられ、まぶたを閉じる。誓いの言葉を封じ込め、永遠のものにするという誓いのキスが優しく唇に落とされた。
大司祭が私たちの結婚成立を宣言して、夫婦になった。
今宵は、夜通し結婚のお祝いが続く。クラウト王国には、結婚した二人が新たな人生をともに歩んでいく象徴としてファーストダンスをお披露目する習慣がある。星が瞬きはじめた頃、二人で王宮のバルコニーに姿を現すと歓声が上がった。
「アイリーン、ファーストダンスを踊ってほしい」
「はい……っ、もちろんです」
レオナード様が跪き、手の甲にキスを落としたのを合図に、優美な演奏がはじまる。美しいレースが印象的な銀色のドレスは、動いて風をはらむと羽衣のように魅力的な流れをつくっていく。レオナード様と見つめあって微笑み、くるりと回されて踊る。ダンスがこんなに楽しかったなんて知らなくて頬が緩めば、腰に回された腕にぐいっと引き寄せられた。
「アイリーン、俺たちのファーストダンスをクラウト王国中に届けに行こう」
甘く耳元で囁かれてうなずく。黒のタキシードを着たレオナード様が光り輝き、銀色のドラゴンに変わると私を背中に乗せて飛び立つ。
繊細な刺繍を刺したドレスの裾が風でふわりと揺れて、星空を進む。銀色の鱗が月明かりを反射して、光の粒をクラウト王国中に降り注ぐと大きな歓声で出迎えられた。レオナード様と一緒にクラウト王国を巡ったあとに、下されたのは若草色が煌めく薬草原。
「わあ……っ!」
満点の星が瞬き、月明かりが薬草鳥の薬草を照らす。風に合わせて光が揺れ、宝石のような葉が擦れると澄んだ音色が広がる。息を呑むほど美しい光景に、ただただ目を奪われてしまう。
「アイリーン、受け取ってほしい」
人間の姿に戻ったレオナード様が手に持っていた小箱を開くと、淡く光るシルバーの指輪が入っていた。
「……とても綺麗ですね」
「この指輪は、ドラゴンの逆鱗で作ったものなんだ」
「っ……!」
ドラゴンの逆鱗は一枚しかなく、とても大切なものだと聞いていた。レオナード様の気持ちが嬉しくて、愛おしくて、頬を涙が伝う。
「レオナード様、愛しています……」
「俺も、アイリーンを愛してる。結婚できて嬉しい」
レオナード様の親指が私の涙を拭い、左手の薬指に逆鱗の指輪がはめられる。あまりに嬉しくて、レオナード様にキスを贈ると、顔を赤く染めたレオナード様に強く抱きしめられた。
「アイリーン」
レオナード様の青い瞳を見上げる。深く唇を塞がれて、至近距離で目の奥を覗き込まれた。
「今宵は覚悟してね、俺の愛しい番」
瞳を細めて、甘やかな声でささやかれる。私は、大好きなレオナード様の言葉に、とびきりの笑顔でうなずいた。
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